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命運は2試合で決まる。
ジャパンラグビーリーグワン2022-23の入替戦。
第1戦の舞台は、浦安DRがホストを務める宮城・ユアテックスタジアム仙台だ。
NTTグループのチーム再編により今季誕生した浦安DRは、D2で無敵の強さを誇る。
今季は海外やD1チームとの練習試合を含め、公式戦12試合(中止1試合)においても無敗。チーム誕生以来一度も負けていない。
リーグ戦ではD2最多507得点。153失点はD2最小で守備力もある。
D2優勝を決める三重ホンダヒートとの順位決定戦は48-28で快勝。1位通過で12位チームとの入替戦出場を決めた。
リーグワン初の新チームを牽引してきた主将は、23歳のSH飯沼蓮だ。
リーグ戦全勝を決めた第10節の試合後、負けていないことに逆に不安はないかと問われると、強気なオーガナイザーはこう話した。
「練習でもディビジョン1で優勝できるレベルのスタンダードを求めています」
「全員がそのレベルのスタンダードを追求しているので、負けていないことに対する不安はありません」
浦安DRの今季目標はD1昇格だが、視線の先にはD1優勝がある。
高いスタンダードの仕掛け人は、南アフリカ出身のヨハン・アッカーマンHC(ヘッドコーチ)。
スーパーラグビーで長期低迷していたライオンズ(南ア)で指導者キャリアをスタート。逸材たちを磨き上げ、スーパーラグビーで3度の準優勝(2016、2017、2018)を達成。
その逸材たちとは、HOマルコム・マークス(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、LOフランコ・モスタート(三重ホンダヒート)、FLクワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ)、SHファフ・デクラーク(横浜キヤノンイーグルス)らだ。
その後も英グロスター、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪で結果を残した。そして1年目の浦安DRでは全勝優勝。
必ず結果を残す名将は、母国で次期南アフリカ代表HCに推す声が根強い。
アッカーマンHCの長所について、教え子のLOモスタート(三重H)は「マインドセットのコーチングが上手い人。何が機能し、何が機能しないかをよく理解している」と話した。
浦安DRには新チームとは思えぬ自信が漲っている。アッカーマンHCらスタッフの準備、厳しい練習、チームビルディングが奏功しているのだろう。
本稿執筆時点でメンバーは未発表だが、順当であれば、ハーフ団はSH飯沼主将とSOオテレ・ブラックのコンビになるだろう。
日本代表PR竹内柊平、LO金嶺志、FL繁松哲大はハイパフォーマンスを続けている。
HCとはライオンズ時代からの師弟関係であるLOローレンス・エラスマス、そしてジャッカル名手のFL/NO8リアム・ギル。
そして守備の大黒柱といってよい一人がFL/NO8ジミー・トゥポウ。必ず相手を押し返す体さばき、パワーは必見。オフロードパスも巧みだ。
そして第1戦はビジターとして宮城に移動するのが、チャレンジを受ける花園Lだ。
リーグ2年目、D1初挑戦となった今季は12位(1勝15敗)だった。
ディフェンスを武器とする三菱重工相模原ダイナボアーズが序盤躍進する一方で、アタックチームの花園Lは黒星を重ねた。
しかし、開幕14連敗で迎えた第15節のコベルコ神戸スティーラーズ戦だ。
逆転コンバージョンキックの成功で、劇的なサヨナラ勝利。14連敗しても会場に駆けつけたファンの期待に応えた。待望のD1初勝利だった。
リーグ最終戦、逆転11位の可能性もあった第16節は、グリーンロケッツ東葛に26-43で15敗目。
その試合後、今季何度もジャッカルで窮地を救ってきたFL野中翔平キャプテンは、D1残留を「喉から手が出るほど欲しい結果」と表現した。
「残りたい気持ちは人一倍あります。僕が大学4年生の時、入替戦で負けてトップチャレンジでプレーした経験があります」
「来シーズンに入ってくる選手、入りたいと言ってくれる子どもたちのためにも、必ず残りたいです」(花園L、FL野中主将)
指揮官は、地元大阪出身の水間良武HCだ。
大阪工大高(常翔学園)、同志社大学、鐘淵化学工業(現カネカ)で主将を務め、2003年から三洋電機(埼玉ワイルドナイツ)でもプレーした元フッカー。
年代別代表のジュニア・ジャパン、U20日本代表の監督も務めた人格者は、グリーンロケッツ東葛戦後、チームの課題に「キックオフレシーブ」と「タックルの高さ」を挙げていた。
「前半、後半もスコアしたあとのキックオフレシーブで、こちらに傾きかけた流れを相手に持っていかれていました」
「そしてタックルに関しては、日々取り組んで良くなっていましたが、やはり高くなってしまうクセが抜け切らない。そこが今日は出てしまいました」(花園L、水間HC)
メンバーの要注目は、やはりオーストラリア代表の司令塔、クエイド・クーパーだろう。
これまでの主戦司令塔は、サヨナラ・コバージョンでD1初勝利をもたらした新加入のジャクソン・ガーデンバショップ。水間HCの判断が注目される。
今季力を発揮していたのが、ライナーズの強力スクラム。フロントローはここまでPR田中健太、HO樫本敦、PR三竹康太が存在感を示してきた。
日本代表LOサナイラ・ワクァも怪我から復帰し、大一番へタレントは揃ってきた。仕事人のFLジェド・ブラウンの先発はあるか。
バックスでは、神戸S戦でも大活躍だったWTB/CTBシオサイア・フィフィタが攻撃の主軸。青山学院大学の大黒柱だった22歳、CTB金澤春樹も目を見張るプレーを連発している。
両者の課題は明確だ。
花園Lは1試合平均53失点のディフェンス。指揮官も公言している通り、まずは衝突局面でのタックルから上回りたい。
かたや浦安DRは1試合平均13.5回の反則が課題のひとつ。規律を保ち、もっている力を十全に発揮したいところだ。
それぞれの想いが交錯する最終局面。
D1残留か、D2降格か。
D2残留か、D1昇格か。
命運を決める2試合の火蓋が、ついに切られる。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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