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生きるか死ぬか。そんな物騒な表現がこれほどピタリとくるシチュエーションもないだろう。4か月にわたるレギュラーシーズンの激闘を戦い抜いた末に臨む、昇降格をかけた大一番。ホストアンドビジターの2回戦トータルの結果で来シーズンの戦うステージを決する入替戦は、文字通りの決戦である。
ディビジョン1の10~12位とディビジョン2の1~3位がたすき掛けで対戦する3カードのうち、5月6日土曜日の14時30分にキックオフを迎えるのは、豊田自動織機シャトルズ愛知対三菱重工相模原ダイナボアーズの第1戦だ。会場は愛知県のパロマ瑞穂ラグビー場。まず下位ディビジョン所属のシャトルズがホストゲームを行い、翌週14日に今度はダイナボアーズの地元、神奈川県海老名運動公園陸上競技場での第2戦(14時30分キックオフ)で決着をつけるという流れになる。
両者の今シーズンの戦いを今回ホストのシャトルズから振り返ると、ディビジョン2のリーグ戦は浦安D-Rocks、三重ホンダヒートに1、2巡目とも敗れ、6勝4敗の3位で通過。上位3チームによる順位決定戦もD-Rocksに12-31、ヒートには13-14と健闘するも勝利に届かず、3位でレギュラーシーズンを終えた。もっとも、順位決定戦ではいずれもリーグ戦から大幅にスコアを縮めており、ここにきてコンディションは研ぎ澄まされつつあるという印象だ。
特に4月15日のヒート戦は、出足鋭いディフェンスとブレイクダウンでの気迫みなぎるファイトで再三ターンオーバーを勝ち取り、世界的名手が並ぶ強敵をあと一歩まで追い詰めた。「試合を重ねるごとに我々のパフォーマンスが高くなってきていることは、見ている方々にもわかっていただけていると思います」と、徳野洋一ヘッドコーチのコメントにも手応えがにじむ。心身とも充実したコンディションで、入替戦に挑んでくるだろう。
一方のダイナボアーズはディビジョン1昇格初年度にして開幕からの5試合で3勝1敗1分けと好スタートを切り、序盤戦の台風の目となった。その後は善戦するも後半に突き放されるゲームが続き、結果的に4勝11敗1分けの10位で入替戦に回ることとなったが、チームとしては大きく躍進を遂げたシーズンといえる。そしてだからこそ、ディビジョン1残留を決めいい形で今季を締めくくりたいという思いは強いはずだ。
並みいる強豪との厳しいゲームを16試合戦い抜いた経験は、伸び盛りのクラブにとってかけがえのない財産だ。戦略家にして優れたモチベーターでもあるグレン・ディレーニーヘッドコーチは、「シーズンを経ての決勝というメンタリティで臨みます。相手チームをリスペクトしながら準備し、これまで学んだことをすべて出すようなすばらしい試合をしたい」と入替戦への意気込みを語る。こちらも万全の姿勢で臨んでくるのは間違いない。
そんな両者の激突で最大の焦点となるのは、ラグビーの原点であるコンタクト局面の攻防だ。入替戦では必ずポイントになる要素だが、上位カテゴリーのチームは一発一発のヒットの強度が高く、かつその激しさが試合終盤まで持続する。あらゆるプレーの土台となる部分だけに、ダイナボアーズがどこまで圧力をかけられるか、シャトルズがどこまで対抗できるかという点が、ゲームの鍵になるだろう。
もうひとつのキーワードはセットピースだ。攻守の起点となるプレーであり、スクラム、ラインアウトの優劣によって、ゲームプランの遂行力も大きく左右される。特にシャトルズは今季、戦略の軸としてスクラムの強化に注力してきており、ここから突破口を開きたいと考えているはず。見応えある駆け引きが繰り広げられそうだ。
ちなみに両チームは2018-19シーズンのトップリーグ入替戦でも対戦しており、この時はトップチャレンジリーグ所属のダイナボアーズが、トップリーグ所属のシャトルズをパロマ瑞穂ラグビー場で31-7と下して、12年ぶりのトップリーグ昇格を果たしている。ともに当時から大幅にメンバーと体制が入れ替わっているとはいえ、特別な意識を抱く相手であるのは確かだろう。4年ぶりの再戦で笑うのはどちらか、必見の激突だ。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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