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新チームの発足からここまで積み上げてきたものをシンプルにぶつけ合う。ゆえにトレーニングの充実度や目指すスタイルが如実にパフォーマンスに反映される。そんな成長途上の魅力と可能性を随所に感じさせる、春シーズンらしい戦いだった。
前年度関東大学リーグ戦1位の東海大と、同2位の流通経済大が激突した関東大学春季交流大会Aグループの第2週。ともに15人制での今季初戦となったこの一戦は、両者のカラーを表すように立ち上がりからアグレッシブにボールをつないで仕掛け合う動きの多い展開で進んだ。
最初に得点を刻んだのはビジターの東海大だ。開始2分、ゴールラインドロップアウトのレシーブを起点にテンポよくラックを連取して揺さぶると、PRシアレ・オトゥホウマのリターンパスを受けたHO安藤良太がきれいにラインブレイク。そのままスピードに乗って約25メートルを走り切り、ポスト左に滑り込む。
12分には敵陣でのラインアウトスチールからFWの縦への連続攻撃でプレッシャーをかけ、CTB近藤翔耶が鋭くギャップを突破。内をサポートしたSH辻時羽へとつなぎ、悠々とインゴールを陥れる。SO武藤ゆらぎのコンバージョンも決まって、リードは14-0に広がった。
チャンスを作りながらも仕留めきれないシーンが続いていた流通経済大が反撃に転じたのは、19分過ぎだ。相手ボールのスクラムをドミネートして勢いに乗ると、一連の流れで敵陣ゴール前へ攻め込み、平均体重108キロの重量FWがスクラムを猛プッシュ。サイドに持ち出したNO8ティシレリ・ロケティが力強く相手防御をこじ開け、7点を返す。
流れが変わるかに思われたシーンだったが、東海大は続くキックオフからディフェンスで厳しく圧力をかけ、すかさずペナルティを獲得。ゴール前のラインアウトを起点にFW陣が意地を見せ、FLアフ・オフィナがねじ込んでトライを返す。しかし流通経済大もすぐに反撃に転じ、29分にまたもスクラムでペナルティを誘発。こちらもラインアウトからモールを押し切ってHO作田駿介が右中間に押さえる。その後のピンチを懸命のカバーディフェンスでしのぎ、7点差でハーフタイムを迎えた。
関東大学春季交流大会2023 Aグループ
【ハイライト動画】流通経済大学 vs. 東海大学
サイドが入れ替わった後半も、先にスコアを重ねたのは東海大だった。まずは45分、ラインアウトを起点に粘り強く攻撃を継続し、9フェーズ目でCTB近藤がフィニッシュすると、直後の46分にはキックオフリターンからBKで左サイドを崩し、SH辻がノーホイッスルでゴールラインを越える。勝負どころの時間帯に見事な集中力を発揮し、33-14と一気に引き離した。
その後も敵陣で優勢にゲームを進める東海大は、57分にクイックスローからのカウンターで好機を作り、FLオフィナが大きくゲイン。ラックサイドに走り込んだFL佐々木浩祐がタックラーを振り切り、チーム6本目のトライをマークする。
以降の時間はお互いに大きくメンバーを入れ替えたこともあってスコアは膠着したが、ともに最後まで攻める意欲を押し出して見応えあるプレーを展開。80分を過ぎても気迫に満ちた攻防は続き、83分にラインアウトモールから流通経済大のHO山本陽生がトライを挙げたところで、40-21でのノーサイドとなった。
勝った東海大はキャプテンのFB谷口宜顕やSO武藤、CTB近藤ら昨季からのレギュラー4人を擁するBK陣が要所で存在感を示し、前後半の導入の時間帯にトライを重ねて白星スタートを切った。スクラム、ラインアウトモールを起点に3トライを許したのは反省材料だが、速さとスキル、多彩な仕掛けで相手防御を崩し切るアタックは、例年以上にダイナミックなチームなる可能性を感じさせた。FL薄田周希、SH川久保瑛斗らインパクトあるU20日本代表勢が合流すれば、総合力はもう一段スケールアップするだろう。
黒星発進となった流通経済大も、劣勢の流れに沈むことなく立て直してトライを返し、粘り強くひたむきに戦う姿勢を示した。PR玉永仁一郎、HO作田、PR吉村一将のフロントローを軸にしたスクラムと、124キロの巨漢NO8ロケティの強烈な推進力は、今シーズンの看板になりそう。あと一歩を押し切れば、というシーンが少なくなかっただけに、決定機を仕留め切る勝負強さが高まれば、楽しみなチームになりそうだ。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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