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【ハイライト動画あり】熱闘!プレーオフ前哨戦「スピアーズ×サンゴリアス」。ジャパンラグビーリーグワンD1最終第16節レビュー
ラグビーレポート by 多羅 正崇クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs. 東京サンゴリアス
“プレーオフ前哨戦”は緊迫した好勝負になった。
ジャパンラグビーリーグワンD1(ディビジョン1)最終第16節。
4月22日(土)、東京・スピアーズえどりくフィールドで行われたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2位)×東京サンゴリアス(3位)。
試合前にはプレーオフ準決勝((5月14日@秩父宮)での対決が決定。今季2度目のこの対決は、プレーオフの前哨戦となった。
しかし両軍は“一戦必勝モード”。観客5651人を熱くするバトルが展開された。
今季開幕戦で敗戦(18-31)を喫しているサンゴリアス。雪辱戦へ向けたフォーカスポイントは2つあったという。
「大きいFWパックのスピアーズに対して、効果的なキックをする、スペースを見つけてアタックする、という2つにフォーカスしていました」(サンゴリアス、SH齋藤直人共同キャプテン)
その言葉通り、前半風下のサンゴリアスはキックを多用。しかし前半13分までに3回のキックチャージを受け、1回は相手WTB木田晴斗がインターセプト。
キックで前進できないサンゴリアスに対し、スピアーズは前半15分にスクラムでペナルティ奪取。PG(ペナルティゴール)で3点を先取した。
スピアーズはブレイクダウンなど接点での攻防で強かった。
この日守備でのターンオーバー数はスピアーズが6回(サンゴリアス2回)。前半18分にはNO8ファウルア・マキシがジャッカル成功。相手の7次攻撃を防いだ。
サンゴリアスが連続攻撃で取り切れなかった一方で、スピアーズは前半26分にLOヘルウヴェが突破からトライ。
自慢の決定力(D1トライ数1位、得点1位)を活かし、優勢ムードで10点リードを奪った。
しかしサンゴリアスも「スペースを見つけてアタックする」(SH齋藤)マインドで反撃。
尾崎泰雅(東京サンゴリアス)
そして最後は前半35分、左隅にできた3対2からWTB尾崎泰雅がフィニッシュ。5点差(5-10)に詰め寄り、勝負の後半戦へ向かった。
しかし後半最初のトライはスピアーズだった。
SOバーナード・フォーリーの突破からチャンスとなり、WTB木田晴斗が日本代表FB松島幸太朗に身体を当てながら豪快にチーム2本目。
「トライを獲る強い意識がありました」とWTB木田。「最後は1対1になって、ルーキーらしく、強気でまっすぐ走り込みました」
また今季16トライを挙げたことについて、WTB木田は「僕がこれだけトライを取れているのはスピアーズのスキルの高さのおかげ」と仲間に感謝した。
リードを10点(15-5)に広げたスピアーズだが、ここから流れはサンゴリアスへ。
後半13分には日本代表NO8テビタ・タタフが足を痛めた様子で途中交代するアクシデント。しかし直後、CTB中村亮土の献身的なキックチェイスから好機。
CTB中村のチェイスによりランを選択したスピアーズのFBゲラード・ファンデンヒーファー。ここにこの日公式戦通算100試合出場のPR石原慎太郎、CTB中野将伍らがファイト。
サンゴリアスはSH齋藤がパスダミーからトライをねじ込んだ上、直前プレーで寝たままプレーしたFBファンデンヒーファーがシンビンとなった。
ゴール成功で3点差(12-15)としたサンゴリアスに、さらに追い風が吹く。
トライのピンチにスピアーズのSH谷口和洋がノーボール・タックル。これがトライの妨害と判定され、サンゴリアスにペナルティトライ。
7点が入り、サンゴリアスがついに逆転(19-15)。13人の相手に対して後半21分、途中出場のHO中村駿太のトライも決まり、さらにリードを9点(24-15)に広げた。
しかしスピアーズが奮起。13人でサンゴリアスからトライを奪うという衝撃プレーを披露する。
「一人ひとりが抜けた選手の分までハードワークする、ということは言い続けていました」(スピアーズ、CTB立川理道キャプテン)
フォワードを中心に直線的なランを繰り返したのち、CTBテアウパシオネが強烈キャリー。仲間とラック周辺をこじ開け、後半25分、ワンハンドでトライを奪取したのだ。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【第16節ハイライト動画】クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs. 東京サンゴリアス
「スピアーズさんは割り切ってラック周辺を攻めてきました。そこに対して少し受け身になってしまった部分がありました」(サンゴリアス、田中澄憲監督)
振り返れば2021年度の準々決勝、スピアーズは14人で約50分間を戦ってチーム初の4強入り。数的不利を感じさせない結束、攻撃力は今季も健在だった。
「13人になった局面でリーダー達が落ち着き、ブルーヘッド(冷静な状況判断ができる状態)を保ってくれました。13人でトライを取れたことは大きかったと思います」(スピアーズ、フラン・ルディケHC)
これで2点差(22-24)に迫ったスピアーズに、天秤が傾く。
サンゴリアスはSO田村熙がプレーできない状態で相手9番にプレッシャーをかけてしまい、後半32分にシンビンに。
ルアン・ボタ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
勝負所で数的不利となった14人のサンゴリアスに対して、スピアーズはラインアウトからLOルアン・ボタがサポートを受け、逆転トライ。3点リードを奪った。
さらに直後の後半38分に決定打。
サンゴリアスが敵陣で猛攻。しかし鋭い守備でCTB中村亮土にプレッシャーをかけると、ロングパスをFBファンデンヒーファーがインターセプト。決定的な独走トライを決めた。
サンゴリアスの田中監督は、試合を分けたポイントの一つにこのインターセプトを挙げた。
そして「選手たちはアドバンテージがあると思って大きく動かしたプレーだったと思います」と振り返った。
「アドバンテージが出ていたのか、解消されたのか分からないのですが、結果的には試合を決定付けるプレーになりました」(サンゴリアス、田中監督)
映像を再確認してみると、CTB中村がパスを投げるタイミングと、レフリーのアドバンテージ解消のコールはほぼ重なっていた。
この独走トライで8点リードを奪ったスピアーズは、さらに直後のキックオフ。
CTB立川主将が絶妙なポジショニングから攻守交代を起こし、最後は献身的なFL末永健雄がフィニッシュ。最終的に15点差(39-24)で締めくくった。
スピアーズはサンゴリアス戦2連勝。実力を再証明した。
「後半に13人でスコアができたことはすごく大きかった」と、スピアーズのCTB立川理道キャプテンは振り返った。
「バーナード・フォーリーがスクラムハーフをやってくれたり、フォワードがハードワークをしてくれたり――。みんなが何をすべきかを分かっていました」
「あそこで上手くリードできた点は、プレーオフに向けても良い収穫になったと思います」
両軍は3週間後のプレーオフ準決勝で、今季3度目の対決となる。サンゴリアスの田中監督は、こう決意を語った。
「スピアーズさんとの試合は3週間後にあります。今日負けたことには必ず理由があると思うので、その理由をしっかりと突き詰め、この3週間いい準備をして、次は必ず勝ちにいきたいと思います」
サンゴリアスのSH齋藤共同キャプテンは、淡々と、しかし決然と前を見ていた。
「3度目はありません。残り3週間、隙の無い準備をして、必ずリベンジをしたいです」
東京・秩父宮ラグビー場で、今季両者は三度激突する。
手負いの獅子はサンゴリアスだ。激戦は必至。5月14日の準決勝は、リーグ史に刻まれる歴史的一戦になるだろう。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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