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高川学園、初の全国大会出場
3月25日(土)から31日(木)にかけて、今年も埼玉・熊谷ラグビー場を中心に行われる全国高校選抜ラグビー大会。出場32校の中で、実行員推薦枠で初の全国大会出場を果たしたのが高川学園(山口)だ。
高川学園は1月29日に花園に32回出場している伝統校・大津緑洋に74-3と大勝し、初めて山口王者に輝いた。続く2月の中国大会では、準決勝で優勝した尾道(広島)に0-17と接戦を演じたことが評価されて、推薦枠を得て創部38年目にして初の全国大会の切符を手にした。
「若い時からやっていることは同じですが、今年のチームは選手個々の理解力、そして実践力があることが実を結んだ。選抜大会は展開力で勝負したい」と野村賢二監督。
中学2年から競技を始めた45歳の野村監督は、高川学園(当時は多々良学園)OBで、SH(スクラムハーフ)として活躍した。当時のラグビー部顧問は他の部を兼任していたことなどもあり、高校卒業する頃から「ラグビー部の監督のポストを空けておくから」と言われていたという。
体育教諭の枠は空いていなかったため、福岡第一経済大学(現・日本経済大学)で商業の教諭の資格を取り、新卒で22歳から高川学園ラグビー部を指導するようになった。
サッカー、野球、バレーボールなどスポーツの強豪校として知られる高川学園。ラグビー部は強豪とは言いがたく、以前は県予選で100失点するようなチームだった。だが、2017年に人工芝のグラウンドが完成し、2018年から高川学園中学にラグビー部が再建されたことで、徐々に高校の強化も進んだ。
2007年に中学校が開校したときもラグビー部があったものの、野村監督が1人では指導しきれないとして、一度は廃部になったという。ただ、指導者が2人体制になったことで復活し、中高一貫体制で指導を続けてきたことが功を奏したというわけだ。
野村監督は「中学から育てた選手は高校でも軸になって活躍するので、いつか復活できればと思っていました。中学校から部活動でラグビーができるということで入ってきて、高校からも部員が来てくれるようになって少しずつ強くなっていった」と振り返る。
チャージをかわしてキックする大嶋柚楽主将
現在部員は2年生が15人、1年生が14人の計29人。キャプテンFB(フルバック)大嶋柚楽、副キャプテンの1人WTB(ウィング)福永俊太、SH(スクラムハーフ)豊廣匠成(いずれも2年)ら10人が高川学園中出身だ。
高校でラグビーを始める選手も1学年に3~4人おり、全体で18人が山口県内出身だが、柔道部、バレー部と兼用の寮もあるため、副キャプテンで大阪出身のPR(プロップ)/HO(フッカー)久米優利(2年)ら、各学年5人ほどが県外出身だ。
部として初の全国大会出場にあたり、FB大嶋主将は「率直にうれしいです!もしかしたら(推薦枠が)来るかも知れないと思っていました」。高川学園中学の2年に大嶋主将らに誘われて入部した副将のWTB福永は「規律面などチームの連携が取れたことが全国大会出場につながった」と破顔した。
大津のディフェンスを切り裂くSO林
初戦の相手は東北王者で、花園出場70回を誇る名門・秋田工業(秋田)となった。大嶋主将は「持ち味はSH豊廣、SO(スタンドオフ)林香凛(1年)を中心としたFW(フォワード)とBK(バックス)が連携した展開ラグビー。自分たちのできる限りの力を発揮したい」と言えば、花園出場に憧れて高川学園に進学した副将のPR/HO久米は「初の全国大会なのでワクワクしています。今までやってきたディフェンスで相手を圧倒して勝ちたい」と意気込んでいる。
タックラー2枚を突破するLO藤沢
伝統的に秋田工業はFWが強いと予想されるため、トンガ人留学生の身長187cmのLO(ロック)シオネ・マヘ、チーム最長の189cmLO藤沢大輝(ともに2年)2人の奮闘は欠かせない。「新チームになって、ずっとFWのディフェンスに力を入れてきた。尾道戦もそうでしたが、FW陣が頑張ってディフェンスするところが勝負の鍵となる」(野村監督)。
なお、トンガ出身のマヘは高川学園のある防府市ラグビー協会の会長が、高校時代に来日した日本代表FLリーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス)の活躍に感銘して、「自分たちも同じことができるのでは……」と留学生の支援を決めて、高川学園が受け入れを決めたことで入部したという。
「大人たちはいろいろ心配したが、マヘ選手は性格もいいですし、高校生なので、一瞬で溶け込みました。高川学園にはメリットしかありません」(野村監督)。
ラインアウトジャンパーのFL辻本
山口県勢としては高川学園が4度目の選抜大会出場となり、過去に出場した大津緑洋、山口高校は勝利することができず、もし、高川学園が勝てば県勢初の選抜での白星となるという。チームのスローガンは、野村監督が15年ほど前、J SPORTSの解説でもお馴染みの藤島大氏のコラムに着想を得て決めた「妥協に勝利なし」だ。
「秋田工業を知らないラグビーファンはいない。高川学園は初出場なので、どこで負けても悔いはない。怖いものなしでいきたい」と野村監督。もちろん花園初出場を見据えているが、まずは選抜でチャレンジし、山口県勢として初勝利を挙げることが秋につながっていく。
文:斉藤健仁/写真提供:高川学園
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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