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【ハイライト動画あり】「誇るべき歴史を持つ2つのチームによる特別な試合」。埼玉パナソニックワイルドナイツ、東京サントリーサンゴリアスに逆転勝利で全勝をキープ。ジャパンラグビー リーグワン第11節
ラグビーレポート by 斉藤 健仁合前には両チームで黙祷が捧げられた
クロスカンファレンスマッチの最終戦で、昨季のファイナリスト同士が激突した。3月11日(土)、東京都・秩父宮ラグビー場では、3位につけるホストの東京サントリーサンゴリアスが、今季10連勝で首位に立つ埼玉パナソニックワイルドナイツを迎えた。
昨季のリーグ戦、プレーオフの決勝でワイルドナイツがそれぞれ34-17、18-12で勝利。サンゴリアスは2017年度の順位決定トーナメント決勝以来の勝利を目指した。
前節、トヨタヴェルブリッツに20-27で敗れ、今季2つ目の黒星を喫したサンゴリアスの田中澄憲監督は、前節からFW(フォワード)、BK(バックス)2名ずつを変更した。第1列は、PR(プロップ)垣永真之介、NO8(ナンバーエイト)テビタ・タタフの日本代表の2人が前節のリザーブから先発に回った。
BKは開幕から先発を務めてきた共同キャプテンのSH(スクラムハーフ)齋藤直人がベンチに下がり、流大が9番をつけた。CTB(センター)も日本代表の中村亮土が先発に復帰した。
一方、前節、2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイを後半に逆転し、ノートライに抑えて、30-15で勝利。首位をキープしたワイルドナイツ。ロビー・ディーンズ監督はスタートのFW1名、BK1名を入れ替えた。
FL(フランカー)は福井翔大からラクラン・ボーシェーが先発に名を連ね、日本代表のSO(スタンドオフ)松田力也が10番に戻ってきた。前節、4種類の得点(T・G・PG・DG)をすべて決める「フルハウス」の活躍を見せた山沢拓也は10番からFB(フルバック)にシフトし、15番に入っていた野口竜司がWTB(ウィング)11番に移動。マリカ・コロインベテはメンバー外となった。
クロスカンファレンスマッチ一番の注目カードとあって、スタジアムには1万9079人もの観客が集った。また、東日本大震災から12年目の「3.11」に開催された試合ということで、両チームによっても黙祷が捧げられてからワイルドナイツのボールで試合はキックオフされた
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【ハイライト動画】東京サンゴリアス vs. 埼玉ワイルドナイツ
序盤、主導権を握ったのは「アタッキングマインドが良かった」と田中監督が振り返ったサンゴリアスだった。自陣からボールを積極的に継続し、前半5分、右大外でWTB尾崎晟也が抜けだし、裏へキック。そのボールをCTB中野将伍がキャッチしトライ。ゴールも決まって7点を先制する。
前半18分、サンゴリアスはWTB尾崎が再びキックで裏に抜け出したが、その尾崎にワイルドナイツWTB野口竜司がノーボールタックルしてしまい、サンゴリアスにペナルティトライが与えられ、14-0とリードを広げる。同時に野口はシンビン(10分間の一時的退場)となる。
数的有利となったサンゴリアスはさらに畳みかけたかったが、逆にワイルドナイツの反撃に遭ってしまう。サンゴリアスはゴール前で粘りを見せていたが、25分、反則の繰り返しにより、NO8テビタ・タタフがシンビンとなってしまった。
30分、ワイルドナイツはトライにこだわらず中央左からのPG(ペナルティゴール)を選択し、SO松田が決めて3点を返した。サンゴリアスも34分、SOアーロン・クルーデンのHIAのチェックの間、一時的に出場していたSO田村煕が落ち着いてPGを沈めて17-3として前半を折り返した。
FLボーシェーがトライ
後半、先に得点を挙げたのは「逆転の埼玉」こと、ワイルドナイツだった。後半5分、自陣からのハイパントキックを起点に、そのボールを獲得して攻撃を継続。CTBダミアン・デアリエンデがゲインした後、右大外で新人WTB長田智希(早稲田大学出身)、FLボーシェー、WTB長田、FLボーシェーとつないでそのままトライ、ゴールも決まって7点差に追い上げる。
サンゴリアスもすぐに反撃、8分、連続攻撃からNO8タタフが抜け出し、ラックを形成。すぐにCTB中村から右大外にいたWTB尾崎にわたりトライ。ゴールも決まって再び24-10と14点差とした。
ライリーのインターセプトからのトライ
しかし、後半10分以降は徐々にワイルドナイツの時間となる。前半こそ乱れていたディフェンス、ラインアウトを修正すると徐々に好機を作り出していく。13分、ゴール前のラインアウトモールを押し込んで、再びFLボーシェーが押さえてトライ。15分には日本代表CTBディラン・ライリーが相手のパスをインターセプト。60m走り切って中央にトライを挙げて24-24と同点に追いつく。
さらに20分、ワイルドナイツはスクラムを起点に、SO松田が裏にキック。インゴールに転がるボールをFB山沢が押さえてトライ。31-24と遂に逆転に成功。26分、再び、スクラムからテンポ良くボールを動かし、最後は途中出場のHO堀江翔太からWTB長田とつないで長田が左中間にトライを挙げて38-24とした。
ノーサイド。プレーオフでの再戦はあるか
32分、相手反則からワイルドナイツはPGを選択し、松田が決めて17点差にリードを広げる。サンゴリアスも意地を見せて最後まで攻め続け、ワイルドナイツは反則の繰り返しでシンビンとなる。ロスタイム、数的有利だったサンゴリアスはモールを押し込み、最後は途中出場のCTB尾崎泰雅がトライを挙げて一矢を報いたが、試合はそのまま41-29でノーサイド。
開幕から11連勝を飾ったワイルドナイツが勝ち点4を獲得。総勝ち点を49に伸ばし、首位をキープした。連敗となったサンゴリアスは勝ち点を挙げることができず37のまま。
POMのSO松田
POM(プレイ・オブ・ザ・マッチ)には司令塔としてチームを勝利に導いたワイルドナイツのSO松田が選出された。「もらえたことはうれしい。(POMは)僕の中ではダミアン・デアレンデですが、今日は本当に誰が取ってもおかしくなかった。『3.11』という日に試合ができることにすごく特別な思いを持っていましたし、微力かもしれないですが僕たちの頑張りや試合が、元気や笑顔や希望というのを与えられたらいいなと思っていました」。
前半いい形でリードしながらも、ワイルドナイツに逆転を許し、今季初の連敗を喫したサンゴリアスの田中監督は「悔しいという一言に尽きる。でも、本当に前節と違ったパフォーマンスを選手たちはしてくれた」。
「本当に前半ほとんど完璧に近いようなゲーム運びができた。ただ、やっぱり後半20分、ワイルドナイツのプレッシャーのかけ方、ゲームの運び方が上手だったと感じている。もう一度、パナソニックに対してチャレンジしたいと思っているので、まず一戦一戦、そこにたどり着くために詰めていきたい」と語った。
試合を見つめるジョセフHCら日本代表コーチ陣
後半から出場した共同キャプテンのHO(フッカー)堀越康介も「前半、僕たちがワイルドナイツに対してやっていたことを逆に後半やられた。小さなミスから一気にそこを突かれて、立て直すことが出来なかったことが敗因。ただ、本当に前回の試合から成長した部分も多い。まだリーグが続くので、最後の最後にしっかりやり返せるように、また来週から一戦一戦チームとして踏ん張りどころだと思うので、頑張っていきたい」と前を向いた。
開幕から11戦無敗で首位をキープしたワイルドナイツのディーンズ監督は、「誇るべき歴史を持つ2つのチームによる特別な試合、そしておそらく他に類を見ない対戦となりました。私たちは非常にハードワークをしなければなりませんでしたが、選手たちはそのための努力を惜しまず、試合が進むにつれて、その成果を発揮してくれ。信頼とレジリエンス。そして、自分たちの時間が来ることを信じて、厳しい状況でも戦い続ける姿勢があった」と選手たちを称えた。
1万9000人を超える観客
キャプテンのHO坂手淳史は「1万9000人を超えた観客の皆さんの前で、ワイルドナイツの良さも出たし、サンゴリアスの良さも出た、本当に素晴らしいゲームでした。ゲームの中で流れというのはいろいろあったが、ワイルドナイツの1人1人が役割をしっかりと果たした結果と思いますし、本当にうれしい。ここからさらに成長したいと思うので、またがんばっていきたい」と破顔した。
両者の対戦は再びプレーオフで実現するのか。その前にリーグ戦は3月17~19日の次節からカンファレンス内同士の対戦に戻る。勝ち点を49に伸ばして、プレーオフ進出に大きく前進した埼玉パナソニックワイルドナイツは、19日(日)に再び秩父宮ラグビー場で、昇格組の三菱重工相模原ダイナボアーズと対戦する。
連敗となった東京サントリーサンゴリアスは、次節は17日(金)、再びホストとして秩父宮ラグビー場で最下位の花園近鉄ライナーズを迎える。
文/写真:斉藤健仁さん
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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