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中村駿太(東京サンゴリアス)
リーグ屈指の結束力を誇るホストのリコーブラックラムズ東京は、「リーグ最強の矛」東京サントリーサンゴリアスの攻撃をしぶとく止めていた。
しかしセットプレー(主にスクラム、ラインアウト)の精度が、決定的な差になった。
やがて食い込まれ、それが点差になった。
2月18日(土)に東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で開催されたジャパンラグビーリーグワン、ディビジョン1(D1)第8節交流戦。
ホストの10位(2勝5敗)ブラックラムズは、3位(6勝1敗)のサンゴリアスをホストエリアの世田谷で迎え撃った。
「ディフェンスから流れを取り戻しても、セットピースが上手くいかず、流れを作れませんでした」(ブラックラムズ、ピーター・ヒューワットHC)
ブラックラムズはこの日、黒い壁となってサンゴリアスの「アグレッシブ・アタッキングラグビー」に対抗した。
しかし誤算はセットピース。序盤、2度目の自軍投入ラインアウトで反則(ノット・ストレート)。直後、プレー再開のファースト・スクラムでコラプシング。
ラインアウトの獲得失敗、直後の再開スクラムでペナルティ――この日のブラックラムズは、この悪循環で何度も自陣方向に後退した。
「勝負どころ、ここは絶対に押さえておきたい部分でノット・ストレートがありました。自分たちで勢いを失ってしまいました」(ブラックラムズ、山本昌太ゲームキャプテン)
「スクラムはプレッシャーを掛けたかったところで掛けられました」(サンゴリアス、田中澄憲監督)
一方で、ブラックラムズはスクラムで2連続のペナルティ。
マット・マッガーン(ブラックラムズ東京)
しかしLO柳川大樹、FLブロディ・マクカランらFW陣、そしてCTB池田悠希、FBマット・マッガーンらBK陣も攻守交代に貢献する“全員守備”で、立て続けの失点を許さない。
ただセットピースの精度で後手となり、かたやセットプレー安定のサンゴリアスは前半28分、ラインアウトモールからHO中村が連続トライ。リードを12点に広げられる。
セットプレーさえ安定すれば――。
その思いが結集、爆発したようなトライが前半32分のチーム1本目のトライだ。
最後はゴールポストも利用しながらNO8ヒューズが突進し、ポスト脇に初トライをマーク。コンバージョン成功で5点差(7-12)とし、後半へ向かった。
ハーフタイムをまたいでセットプレーを安定させたかったブラックラムズだが、状況は変わらなかった。
「ブラックラムズさんはラインアウトからのスコアが非常に多いチーム」と、試合後にサンゴリアの田中監督は明かした。
「前半からラインアウトでもプレッシャーを掛けたかったのですが、(前半40分間出場の相手先発ロックの)ストーバーグが出ていた前半は難しかったですね」
「ただ相手のサインに対してしっかりと飛んでいたので、それがジャブとなって後半もフッカーへのプレッシャーを与えられたと思います」
ブラックラムズはこの日、(試合直後の速報スタッツで)自軍投入のラインアウトを8回ロスト(サンゴリアスは2回)。後半も見える圧、見えぬ圧を受けてしまい、ミスが続いた。
サンゴリアスは後半8分にPG(ペナルティゴール)で3点追加。リードを8点(15-7)に広げる。
守備は堅調なブラックラムズだが、アタックでは焦りからかハンドリングエラーが続出。取り急ぐ場面が散見され、スコアに繋がらない。
後半25分頃にはスクラムの連続ペナルティでまたも自陣に後退。
しかしここでは、前半トライを獲られたモールをきっちり止めた上に、11フェーズに及ぶサンゴリアスの高速アタックを止める。
「セットピースからの最初の3フェーズをしっかり抑えれば、自分たちにチャンスがある、とゲーム前から分かっていました」(ブラックラムズ、SH山本ゲームキャプテン)
ここでサンゴリアスにPGで3点を追加され、ビハインドは11点(7―18)になったが守備ラインは最後まで崩壊しなかった。ハードワークする姿は指揮官の心も揺さぶっていた。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【第8節ハイライト動画】ブラックラムズ東京 vs. 東京サンゴリアス
7-18で6敗目を喫した試合後。
ブラックラムズのヒューワットHCは「フラストレーションの溜まるゲームでした」と振り返りつつ、私は選手たちの味方をしたい、と話した。
「チームには、今日のエフォート(努力)、ファイト、トライラインを守るディフェンスは素晴らしかったと伝えました」
「ポゼッションがない中でしたがスコアは『18対7』でした。僕は選手たちの味方をしたいと思います」(ブラックラムズ、ヒューワットHC)
次戦は2月25日(土)、開幕8連敗の花園近鉄ライナーズを、ホストエリアの世田谷に迎える。共に連敗脱出の懸かる重要な一戦となる。
最後は慶應義塾大学卒、FL山本凱のジャッカルで試合を終わらせたサンゴリアス。
セットピースは、ラインアウトのロストは2回のみ、終始圧倒したスクラムの成功率は100%だった。
「今日はブラックラムズさんのフォワードに対して、スクラムでもラインアウトでもプレッシャーを掛けられたことが勝因かなと思います」
「こうしたゲームを勝っていきながら学んでいくこと――これは今後チームにとって大きな財産になります。良いゲームができたと思います」
サンゴリアスの「今後」はもちろんプレーオフ進出、そして何度も弾き返されている最終決戦、プレーオフファイナルの制圧だ。
そのための着実な一歩を刻みたい次戦は、2月25日、8位の静岡ブルーレヴズの本拠地、ヤマハスタジアムに乗り込む。
ブルーレヴズは5敗しているが、5敗の得点差はすべて13点差以内。熱戦は必至だ。
そして強力スクラムという大看板があり、この日力を発揮したサンゴリアスとのスクラム対決は見ものだ。ラインアウトの攻防も見逃せない。白熱の強力セットピース対決に期待は高まる。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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