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POMのSH藤原(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
「えどりく」でのクロスカンファレンスゲーム初戦は手に汗握る展開となった。
昨年12月に開幕した2シーズン目の「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23」。1月28日(土)29日(日)は、ディビジョン1の交流戦の初戦となる第6節が行われた。29日は、2位につけていたクボタスピアーズ船橋・東京ベイが、8位のリコーブラックラムズ東京を迎えた
ここまで4勝1分と負けなしできたスピアーズ。FW(フォワード)は、南アフリカ代表HO(フッカー)マルコム・マークスらは、先週に引き続き出場したが、ケガ人の影響もあり、両LO(ロック)をヘル ウヴェ、デーヴィッド・ブルブリングから、今季初出場の3年目の堀部直壮と青木祐樹のコンビに替えるなど、4名を入れ替えた。
BK(バックス)は前節と同じくSH(スクラムハーフ)藤原忍と、SO(スタンドオフ)バーナード・フォーリーのハーフ団、キャプテンのCTB(センター)立川理道らが先発。リザーブにはリーグワン初キャップをうかがうLO/FL玉置将也、新加入のCTBリカス・プレトリアスらが名を連ねた。
一方、徐々に調子を上げてきたブラックラムズだが、先週は首位の埼玉パナソニックワイルドナイツに後半突き放され17-38と敗戦。ピーター・ヒューワットHC(ヘッドコーチ)は、ハーフ団をSH山本昌太、SO堀米航平の2人から、SH高橋敏也、SOアイザック・ルーカスに変更するなど、前節からFW3名、BK3名と先発を大きく入れ替えた。
白の「SDGsスペシャルジャージー」を着たホストのスピアーズが「えどりく」(江戸川陸上競技場)での不敗神話を12に伸ばせるか。ビジターで2勝しているブラックラムズがスピアーズに土をつけるか。試合は午後2:30から、2563人の観客を集めた東京・江戸川陸上競技場でキックオフされた。
WTBファンデンヒーファーのラン
序盤はスピアーズの時間だった。前半5分、SOフォーリーのPG(ペナルティゴール)で先制すると、11分に自陣でのマイボールラインアウトを起点にボールを継続、WTB(ウイング)ゲラード・ファンデンヒーファーのランで敵陣まで迫ると、ピックアンドゴーで繋ぎ、最後はLO青木がトライ(10-0)。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【ハイライト動画】第6節 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs. ブラックラムズ東京
直後の13分にはブラックラムズのラインアウトをHOマークスがスチールし、ボールを左に展開。SOフォーリーが抜け出し、フォローしたSH藤原がトライ。さらに18分にもラインアウトからモールで押し込んだ後、CTB立川が右サイドにキックパスし、そのボールをWTB根塚洸雅がキャッチしてそのままトライ。前半20分までにホストのスピアーズが24-0と大きくリードを広げる。
FL松橋のトライ
このまま一方的な試合になるかと思われたが、ブラックラムズもあきらめることはなかった。31分、スピアーズのSOフォーリーが不当なプレー(デリバレート・ノックオン)でシンビン(10分間の退場)。数的有利となったブラックラムズは33分、ラインアウトからモールで押し込み、ゲームキャプテンのFL松橋周平が左隅にトライ。
さらに36分には自陣からパスでボールを展開し、SOルーカスのパスを受けたFL柳川大樹が走りきってトライを挙げて24-14と10点差に追い上げてハーフタイムを迎えた。
後半に入っても勢いはブラックラムズが優勢だった。後半8分、自陣に攻め込んだスピアーズのボールをターンオーバーからWTBネタニ・ヴァカヤリア、CTB池田悠希、WTBメイン平とつないで、メインが裏にキックしたボールをSOルーカスが拾ってトライ。FB(フルバック)マット・マッガーンのゴールも決まり、24-21と3点差まで詰め寄る。
CTBテアウパ シオネのトライ
スピアーズも11分にスクラムから、後半から入ったCTBテアウパ シオネが走り切ってトライを挙げ31-21。さらにSOフォーリーのPGで34-21と再び突き放す。だが、ブラックラムズもすぐに反撃。21分、ラインアウトからのアタックで、SOルーカスが抜けだし中央にトライを挙げて6点差に迫った。
その後、スピアーズもPGを加え、37-28とするも、27分にブラックラムズは相手のキャッチミスのこぼれ球を拾ったWTBヴァカヤリアがゲインし、最後はCTBパークスにつないでトライ。30分にはキックチェイスしたボールをFBマッガーンが押さえて、ついにブラックラムズが37-38とスコアをひっくり返した。
それでも、スピアーズは相手陣でボールを展開し、34分のPGこそ外したが、37分にはSOフォーリーがPGを決めて、40-38と再逆転。ブラックラムズは試合終了間際に中央40mのPGのチャンスを得たが、FBマッガーンが左にわずかに外してしまい、そのままノーサイド。スピアーズが40-38と薄氷を踏むような試合となったが辛くも逃げ切って、「えどりく」での連勝を12に伸ばした。
24-0から一時は逆転し、あと一歩のところで白星を逃したブラックラムズのヒューワットHCは、「なんという試合だ。今週フォーカスしてきたディフェンスが、最初の20分間は非常に消極的だった」と悔やみながらも、「(チーム作りで)一番大変なのはカルチャーとかアティテュードだと思うが、そういう点では最後まで諦めず戦った選手たちのファイトを誇りに思う」と選手たちを称えた。
ゲームキャプテンのFL松橋も「前半の20分は自分たちのやりたいことから離れてしまった。どういう状況でも自分たちがコントロールできるところはしっかりとしていかなければいけない。またコネクトして、チームとしてこの悔しさを必ず来週に向けて、前半の入りから終わるまで、ブラックラムズのラグビーをしっかり見せる。」と前を向いた。
かろうじて勝利し、勝ち点24に伸ばした2位をキープしたスピアーズのフラン・ルディケHCは「見ているお客さんにとっては面白いゲームだっただろう。前半と後半で別の試合だった。スタートは完璧にコントロールしていたが、ペナルティとイエローカードがブラックラムズの巻き返しを許してしまった。それでも、けが人が多い中で選手たちが踏ん張ってくれた」と安堵した。
この試合のPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)に選ばれたSH藤原は、「(POM選出は)自分の役割をしっかり果たせたからだと思う」と語り、「(前節の)コベルコ神戸スティーラーズ戦よりペナルティも少なくなったし、こう言った接戦で勝ち切れたことは大きい」と語った。
いまだ黒星なしで5勝1分と2位のスピアーズは、2月4日(土)の第7節、愛知県・パロマ瑞穂ラグビー場で7位のトヨタヴェルブリッツと対戦する。
勝ち点1を獲得したが接戦を落とし、9位に順位を落としたブラックラムズ東京は、同じく4日(土)に神奈川県・ニッパツ三ツ沢球技場で、5位の横浜キヤノンイーグルスに挑む。
文:斉藤健仁/Photo by S.IDA
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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