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ステップを切る報徳学園SO伊藤
12月27日から大阪・東大阪市花園ラグビー場を中心に有観客で行われてきた「花園」こと、全国高校ラグビー大会は、1月5日に準決勝2試合が行われた。
東西対抗、夢の舞台に立った選手たち
準決勝に先立って11:00から、「第15回U18合同チーム東西対抗戦」が30分ハーフで行われた。この試合は部員不足により、単独校で花園予選に参加できない高校生が「花園」に立つ絶好の機会で、コロナ禍の影響で3年ぶりの開催となった。試合は接戦の末、東軍が14-13で西軍を下した。
12:45から行われた準決勝第1試合は、18大会ぶりにベスト4に入ったBシードの天理(奈良)が、史上4校目となる高校「3冠」を狙う、Aシード報徳学園(兵庫)にチャレンジした。
準々決勝でFW(フォワード)、BK(バックス)一体となったアタックの精度が増した報徳学園。この試合でもSH(スクラムハーフ)村田大和、SO(スタンドオフ)伊藤利江人(ともに3年)を中心にボールを動かしペースを掴む。
トライを挙げる報徳学園NO8石橋
天理の粘り強いディフェンスの前にトライを挙げることができなかったが、前半16分、右に大きく展開し、WTB(ウィング)長谷川諒(2年)がトライ。SO伊藤がゴールを決めて、7点を先制する。29分にもボールを動かして右の大外に張っていたNO8(ナンバーエイト)石橋チューカ(3年)がトライを挙げ、12-0で折り返した。
モールからトライを挙げた天理
後半、積極的にアタックした天理が11分、ゴール前のラインアウトモールからチャンスを得てHO(フッカー)松沢和輝(3年)が押さえて7-12と追い上げる。その後、天理もゴール前まで攻め込んだが、報徳学園の守りの前にゴールラインを超えることができなかった。
トライを挙げる報徳学園WTB長谷川
22分、報徳学園にチャンスが来ると、FW陣が縦に突いて、最後はPR(プロップ)木谷光(3年)がトライ。さらに30分にはWTB長谷川が2つ目のトライを挙げて26-7とした。天理もロスタイムに1本返したが、試合は26-12でノーサイドを迎え、報徳学園が初めて花園で決勝に駒を進めた。
第102回全国高等学校ラグビーフットボール大会
【ハイライト動画】準決勝 天理 vs. 報徳学園
オフロードパスを送る報徳WTB海老澤
西條裕朗監督は「FWがよく身体を張って、接点でボールが取れたことと、安定的にボールの供給ができたということは、BKが活きて相手のプレッシャーになっていた。初戦、2戦目とミスが多かったが、もう一歩、チームの完成度が上がってきたと思います」と手応えを口にした。
トライを挙げたPR木谷は「今日の試合はスタートを大事にしようと話していて、FWが最初から身体を張れた。後半のスタートは良くなかったので、決勝では修正していきたい。まだ(新しい歴史を作った)実感はないが、花園は優勝したことがないので、チャレンジャーの精神で、チャレンジャーからチャンピオンになっていこうと思います」と語気を強めた。
3位となった天理
天理の松隈孝照監督は「ディフェンスは激しくいけました。前半はちょっとアンラッキーなところがあったので、そのあたりが痛かったです。なかなか御所実業に勝てないところから1年やってきて、御所実業に勝って、準決勝まで来られたのは、うちの歴史の中でも一歩、踏み出したのではないかと思います。ここからですね」と前を向いた。
14:30からキックオフされた第2試合はBシードの京都成章(京都)が、10年連続準決勝進出のAシードの東福岡(福岡)に挑んだ。
ハットトリックの活躍を見せたNO8藤井
準々決勝は佐賀工業に逆転勝ちした東福岡は、その反省からしっかり相手にタックルに入る強さを見せて、一気に主導権を握った。前半7分、ゴール前のラックから NO8藤井達哉(3年)が持ち込んでトライを挙げて先制に成功する。
東福岡WTB上嶋のトライ
15分にはボールをつないで FB(フルバック)石原幹士(3年)がトライ、19分には再びNO8藤井が抜けだしてトライ。24分にはWTB上嶋友也(3年)、28分にはCTB(センター)西柊太郎(3年)と、前半だけで5トライを挙げて、33-0と大きくリードして、前半で試合をほぼ決めた。
後半も先に得点を挙げたのは東福岡だった。 FW、BK一体となってボールを展開し、NO8藤井がハットトリックとなる3本目のトライを決めて40-0と大きくリードした。
第102回全国高等学校ラグビーフットボール大会
【ハイライト動画】準決勝 京都成章 vs. 東福岡
京都成章SH江口のトライ
京都成章もメンバーを大きく変える中、10分に途中出場のSH江口誠(3年)がトライ。27分、29分にはWTB永瀬由太郎(3年)が連続トライを挙げるなど、3本のトライを返すことに成功したが、ロスタイムに東福岡が1トライを追加し、終わってみれば東福岡が45-17で快勝。準決勝の壁を破り、6シーズンぶりに決勝に進出した。
東福岡の藤田雄一郎監督は「(1月)5日の壁を越えるのは、大きな目標だったので、目標達成できてすごく良かった。ホッとした気分です。(試合の)最初の導入がうまくいった。ボールを持っていないときに、しっかり身体を当てた。後半は、メンバー変えてからちょっとルーズになったが、トータル的にはいいゲームができた」と満足げに話した。
東福岡FL大川キャプテン
キャプテンFL大川虎拓朗(3年)は「1つの山を越えた感じです。決勝もいい準備をしていい試合がしたい」と言えば、ハットとトリックを達成したNO8藤井は、「ボールキャリーの強みを芯に、 ベースの部分でも身体を張っていこうと思います。優勝できたらいいな」と腕を撫した。
3位に入った京都成章
京都成章の湯浅泰正監督は「アタックもディフェンスも、全部出し切ってこれたと思います。その上で東福岡さんは素晴らしいチームでした。いろんな準備を子どもたちがやり続けてくれたので、形として残せたと思います」と振り返った。
気合いを入れる京都成章
また、就任36年目を迎える58歳の湯浅監督は、「今年で監督を辞めようと決めていました。最後に負けたときに言おうかなと思っていて、それが今日になりました。総監督と言う形で、さらに強くなる成章を作るためにも、次の指導者を育てていきたい。そしてさらに強いチームを作っていきたいと思い、そういう選択をさせてもらいました」と話した。後任の監督には関崎大輔コーチが就くという。
決勝戦にはAシードの報徳学園と東福岡の両校が駒を進めた。なお、春の選抜大会(コロナ禍の影響で不戦勝)も、夏の7人制大会でも報徳学園が勝利している。報徳学園が春、夏の勢いのまま初の決勝で「3冠」を達成するか。それとも鬼門の準決勝を突破した東福岡が7度目の栄冠を手にするか。接戦が続いた102回目の花園の決勝は1月7日(土)、14:05にキックオフされる。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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