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試合終了間際まで身体を張ったプレーを見せた肥田
相手のタックルを受けながらのパス回し、トライを許さない身体を張ったディフェンス、残り時間5分からの逆転PG(ペナルティゴール)…。「選手の成長をすごく感じた試合だった」と嶋崎達也監督は振り返る。
関東大学対抗戦(10月2日)では前半こそ17-12とリードするも、後半に逆転を許し20-45で敗れた相手だ。強敵を前に筑波大はどう戦うのか。東海大との一戦の中で、嶋崎監督が手応えを感じた2つのシーンを通して、次戦のみどころを探りたい。
1つ目は前半19分のプレーだ。SH(スクラムハーフ)白栄拓也(3年・高鍋)のトライで7-0とリードしていた筑波大は、敵陣でフェイズを重ねていた。左サイドから展開した6フェイズ目、NO8(ナンバーエイト)谷山隼大(3年・福岡)は相手のタックルを受ける直前、右後ろにいたSO(スタンドオフ)楢本幹志朗(1年・東福岡)にうまくパスを放る。
楢本は前進しながらPR(プロップ)木原優作主将(4年・東福岡)につなぎ、木原は相手のタックルを受けながら身をひるがえしてPR倉崎大丞(4年・筑紫丘)にボールを渡した。順目に走っていた楢本は右サイドで再びパスを受け、ライン際で待つWTB(ウィング)濱島遼(1年・福岡)へとつなぐ。結果的にトライまではつながらなかったが、その間約6秒、筑波大の素早いパス回しに目が離せなかった。
「対抗戦ではボールを大事にする意識が強く、すぐに仲間にパスを放れなかった。やっと自分たちの形ができてきた」と木原主将は振り返る。対抗戦終盤の立教大学戦では、「フィジカルで勝っているのに、うまく得点できていないと感じた」という。試合後には「ミスしてもチャンスでは必ずチャレンジしよう」と仲間に呼びかけ、ラックを作らずにボールを運ぶ意識をもって練習を重ねていた。
グビー 全国大学選手権 22/23
【ハイライト動画】準々決勝 筑波大学 vs. 東海大学
嶋崎監督は「(楢本)幹志朗が右サイドまで来ていたことには驚いた。こういうつなぎ方ができるのだと感心した」と1年生の働きを称えていた。東海大戦では楢本の的確な選択や濱島の思い切りの良い走りが、何度もチームに勢いをもたらした。ルーキーの躍動は準決勝でも注目したい。
2つ目は嶋崎監督が「狙っていたプレーだった」と話す後半30分ごろの攻撃だ。筑波大は右から左に展開する中でLO(ロック)八木澤龍翔(4年・流経大柏)が木原にオフロード。木原も相手選手を引きずりながら濱島にパス。濱島はステップで相手をかわしてゴール前まで迫った(最後は東海大FB/フルバック谷口宜顕の好タックルに阻まれた)。
この場面で圧倒されたのは、筑波の選手たちが相手の強烈なタックルを受けながらも、前進してボールをつないでいく姿だ。実は昨季の対抗戦で6位に終わり選手権を逃したあと、嶋崎監督は「できることは何でもやる」と、新しいメニューを考案していた。そのひとつが授業後(夕方)のグラウンド練習とは別に行う、道場での練習だった。
40分ほどの朝練を設け、様々な局面を想定したコンタクトプレーの練習に励む。強豪校とぶつかっても引かない身体づくりと、コンタクトエリアでの動作を見直すためだ。一度に練習する人数を20人ほどに制限したことで、嶋崎監督は選手1人ひとりに課題点などをフィードバックすることができた。この練習を新チームが始動して間もない2月から9月末まで週に1回、長期休みは週に2回続けたという。
嶋崎監督は「これまでやってきたことが、やっと芽を出してきた」と安堵の表情。「リスクを負ってでも攻撃的に行く。対抗戦の序盤はエラーも多かったが、最近はうまくいくことの方が多くなってきた」と続けた。絶対的なコンタクト力で連覇を狙う帝京大に対しても、臆することなく鍛錬の成果を見せてほしい。
攻守ともに前に出てチームを率いた松島
そして最後に筆者からもうひとつ。最後の選手権となる4年生のプレーに注目したい。東海大戦では後半35分に木原主将が意地のトライを見せた。試合終了間際に木原主将やHO(フッカー)肥田晃季(4年・中部大春日丘)が見せたカウンターラックには、嶋崎監督も「よくあの時間にやったと思う。すごい」とうなった。八木澤やFL(フランカー)楢本鼓太朗(修猷館)、CTB(センター)松島聡(大分舞鶴)の身体を張ったボール奪取の場面も多く見られた。
木原主将は「目標は日本一。次も真っ向勝負していきたい」と意気込む。「チームを勝利に導く」4年生の気迫あるプレーで、2014年以来の決勝進出を叶えてほしい。
文:車谷郁実(筑波大学新聞)/写真:筑波大学ラグビー部提供
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