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【ハイライト動画あり】帝京大学、連覇へ好発進!乱調からスクラム土台に復調。同志社大学は魅せたファイティング・スピリット。第59回大学選手権準々決勝
ラグビーレポート by 多羅 正崇帝京大学 vs. 同志社大学
同志社大学のマインドは整っていた。
「去年は試合前から少し良くなかったと思いますが、今年は宮本さん(啓希監督)のおかげで、この試合(帝京戦)は部員全員が帝京さんに勝つ、という一つの方向を向いていました」(同志社・FL梁本主将)
12月25日(日)、東京・秩父宮ラグビー場で行われた大学選手権準々決勝。
関東大学対抗戦1位で2連覇を狙う帝京に、関西大学リーグ3位の同志社がチャレンジした。
立ち上がりはチャレンジャーの同志社、3週間ぶりの実戦となる帝京、お互いにミスや反則が続く展開となった。
同志社はWTB芦塚仁がラインブレイクするなど、敵陣での攻撃機会もあった。しかしハンドリングエラー、ラインアウトでミスがあり、磨いてきたオプション豊富なアタックを始められない。
一方で帝京にもミスが続き、武器のスクラム、ブレイクダウンでも精確なコンテストができず、エリアを後退。
序盤にミスや反則が続いたことについて、帝京のCTB松山千大は「取り急いでしまうところがあった。対抗戦でもあった、『早く楽になりたい』と思ってしまうプレー」と話した。
しかし先制点は帝京だった。
前半10分、同志社のミスから敵陣で連続攻撃を始め、次々にクリーンなボールが出てきてギャップが生まれた。
青木恵斗(帝京大学)
最後はFL青木恵斗が一対一で相手を吹き飛ばし、今大会のチーム初得点、初トライを記録した。
逆襲したい同志社だが、一次攻撃でのノックオンなど硬さが取れない。
一方の帝京は、序盤に反則を取られたスクラムを修正。前半22分にはこの日初のスクラムのペナルティ(コラプシング)を奪った上で、SO高本幹也が仕掛け、バックス並みのスピードを持つFL奥井章仁がフォローして2トライ目。
14点ビハインドとなった同志社もWTB芦塚の鋭いタックル、FL小島雅登のジャッカルで攻撃を止める場面も。
ラグビー 全国大学選手権 22/23 準々決勝
【ハイライト動画】帝京大学 vs. 同志社大学
さらに前半30分頃からは、ハイパントの再獲得をまじえて15フェーズの猛攻。しかしその後10フェーズの攻撃もノックオン。逆に前半40分に3本目のトライを許し、19点を追いかける展開で後半を迎えた。
ここからは帝京の5連続トライの猛攻だった。
HO江良颯がアタックライン、ラインアウトモール、それぞれのフィニッシャーとして後半3、9分に連続トライ。
同志社は後半10分にようやく敵陣に入り、10mラインアウトを迎えるが、ここでも競られて自軍投入ラインアウトで確保できず。
しかしファイティング・スピリットを魅せる同志社は後半12分。
WTB大森広太郎のクリーンなビッグタックルから、綺麗にターンオーバー。直後のモールは止められるが、連続攻撃では相手防御に食い込む力を見せた。
そして後半15分には壁をつくるスペシャルなサインプレー。帝京FB谷中樹平の好タックルもありラストパスは繋がらなかったが、会場を沸かせた。
「あれは準備してきたプレー」と同志社の宮本監督は明かした。
「10点以上の差があればチャレンジしよう、と準備してきました。今日はモールが止まっている傾向もあったので、選手があのサインプレーを選択しました」(同志社・宮本監督)
同志社がチャンスで取り切れなかった一方で、ここから帝京は3連続トライ。
後半23分には強烈なスクラムで大きく前進し、SO高本が切れ味鋭いステップからフィニッシュ。途中出場の五島源は後半40分に8トライ目をスコアし、結果的には50-0で大勝した。
しかし同志社の闘争心は魅せた。43点ビハインドだった後半37分、途中出場の23番岩本総司がジャッカルするなど、最後の瞬間まで身体を張り続けた。
「後半に点差が開いてからも、ファイティング・スピリットを見せてくれました」と同志社の宮本監督。「それが、バックスタンドに挨拶に行ったとき、50-0にも関わらずあれだけ多くの拍手を頂けたことに繋がったのかなと。戦った選手、学生にはお疲れ様といいたいです」
大逆転で関西リーグ3位となり、選手権に進んだ同志社はベスト8で敗退となった。就任1年目の宮本監督は「帝京大学さんに勝つ準備をしてきましたが、前半は要所でのミスがあった」と振り返った。
「相手にボールを持たせると厳しい、という話をしていましたが、それをさせてしまい、帝京さんの強い展開になってしまいました」
同志社・FL梁本主将は「春からアタックをフォーカスしていたが、スコアできなかったところは帝京さんのディフェンスの強さ。トライを獲りきるところを成長しなければいけないと思います」と、後輩に思いを託した。
1年前の同舞台では24-76。今年は0-50だった。この結果について、宮本監督は「差は確実に縮まっていると思います」と話した。
「昨シーズンは『ゲームをやる前から負けていた』というコメントもありました。その部分が一番縮まった『差』の部分です。ラグビーのスタイルでは、オプションを持った中でボールを動かしていくことによって、今日はスペースも、一対一も作れました」
「今後強化する部分はフィジカル。一回のミス、スペースを与えた時に一対一で止めたとしても食い込まれる。春からフィジカルはやってきましたが、今後一番強化していかなければならない部分」と話し、名門・同志社としての挽回を誓った。
そして準決勝へ駒を進める帝京の相馬朋和監督は、試合を振り返って「少し期間が空いたので反則が多かった。修正すべき点を反省して次の試合に臨みたいです」とコメント。
大学選手権までの3週間の過ごし方について問われると、相馬監督は「学生たちが自分たちに必要なことを彼らで作り上げて過ごした、素晴らしい3週間」と表現した。
その学生の代表であるCTB松山主将は、3週間について「特別何かをやったわけではなく一人ひとりのマインド」にフォーカスしていたという。
試合については「同志社さんの勢いのアタックで自分たちの規律が乱れました」と話す一方で、「ゴールラインを割らせなかったことは収穫。規律を修正して次に向かいたい」と意気込んだ。
帝京の次戦は、関東リーグ戦王者の東海大学を20-17で破った筑波大学。約2か月半前の対抗戦では、帝京が45-20で勝利している。
しかし王者・帝京にとっても、筑波は底知れぬ難敵に違いない。筑波は2015年度、現日本代表主将のHO坂手淳史が率いた無敵時代の帝京の公式戦連勝(対学生)を50で止めている。
果たして準決勝の結末やいかに――。新春1月2日の東京・国立競技場から、いよいよ目が離せない。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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