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ラグビー コラム 2022年12月22日

立命館慶祥、自主的に取り組む生徒たちがつかんだ初出場。札幌山の手を倒して花園へ。全国高校ラグビー大会

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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花園初出場を勝ち取った 写真提供:立命館慶祥

いよいよ12月27日(火)から大阪・東花園市花園ラグビー場で、「花園」こと、「第102回全国高等学校ラグビーフットボール大会」が始まる。全国の都道府県代表51校(東京、北海道が2校、大阪が開催地枠を入れて3校)が出場するが、唯一の初出場となったのが創部26年目の立命館慶祥(南北海道)だ。

南北海道代表と言えば、日本代表FL(フランカー)リーチ マイケルの母校・札幌山の手が昨季まで4年連続20回の出場を誇っていた。同地区の立命館慶祥にとって、「山の手に勝ちたい」は「花園に出場する」と同義だった。

立命館慶祥の松田祐一監督

「山の手に勝ちたい気持ちの方が強かったですね。ほとんどは山の手にどう勝つか、から練習をスタートさせてきました。山の手さんのおかげで強くなった」と胸を張ったのは、松田祐一監督(43歳)だ。

同校でコーチを8年、そして監督に就任して7年目を迎える。札幌市出身で、札幌南高校ラグビー部OBで日本大学に進学。ラグビーは他大学の学生も入れる「早大ドンキホーテ」で続けた。ポジションはSO(スタンドオフ)だった。

部員は32名(3年14人、2年生13人、1年生5人)、マネージャーが7人の計39人。半数が系列中学校出身だが、高校から入部した生徒も含めて、ほとんどがラグビー経験者だという。

久保田主将(左)と高校代表候補の三浦副将

系列中学校出身のSO久保田慧主将(3年)と、唯一の高校日本代表候補であるCTB(センター)三浦遼太郎副将(3年)は、小学校時代は同じスクール(北海道バーバリアンズジュニア)に所属していた。全国大会(ヒーローズカップ)で、花園でも一緒にプレーした経験もあり、「一緒に山の手を倒して花園に行こう」と他の仲間にも声をかけて進学したという。

松田監督は「今の3年生はラグビーが好きな生徒が多くて、ただ好きではなく、勝ちたいという気持ちが強かった。そう思って真剣にやっている数が違った。だから一部ではなく、チームの声になって1つになっていった」といえば、主将のSO久保田も「3年生はやる気あって、ラグビーを楽しくプレーする選手が揃った」と話す。

南北海道大会決勝 写真提供:立命館慶祥

「好きこそものの上手なれ」だ。自ら居残り練習にも熱心に取り組み、自分たちで相手の分析をするなど、ラグビーに対して積極的な生徒が例年より多かったため、松田監督は「押しつけることなく、生徒とコミュニケーションを取りながら進めてきた」と振り返る。

新チームとなり、昨年10月の新人戦の札幌地区大会では10-7でライバル、札幌山の手に見事に勝利したが、春の選抜大会予選を兼ねる新人大会12-14と惜敗した。それでも今春の選抜大会には新人大会の成績が考慮されて、実行委委員推薦枠で初めて出場した(2011年度大会も出場権を得ていたが大会が中止)。

選抜大会では國學院栃木(栃木)に10-45と敗戦。さらに7月末の北海道選抜大会では常翔学園(大阪)に12-53で負けたものの、全国的強豪からトライを挙げるなどFW(フォワード)、BK(バックス)一体となってのボールの展開力には自信を深めていた。

札幌山の手と決勝は大雨の中 写真提供:立命館慶祥

だが、全国高校大会の札幌支部決勝では札幌山の手に0-49と大敗し、第2代表で南北海道予選に進出。しかし、再戦となった決勝の札幌山の手戦では見事なゲーム運びを見せる。大雨の中での試合だったが、立命館慶祥は「キックを上手く使って、敵陣に入ることを優先した」(久保田主将)という戦略が見事にはまり、攻撃の中心であるSO久保田主将、日本代表候補CTB三浦らがトライを挙げた。

さらにディフェンスでも前に出続けて、相手の武器であるモールに対してもPR(プロップ)中村友哉、FL(フランカー)竹内大空(ともに3年)らを中心としたFW陣が止めるなど奮闘、18-7で勝利し、初の花園への切符を手にした。松田監督は「大方は山の手が勝つと思っていたと思うが、気持ちの部分が大きかった。最後に3年生が意地を見せてくれた」と目を細めた。

札幌市の隣、江別市にある立命館慶祥は文武両道の進学校で、生徒の半数は立命館大学や立命館アジア太平洋大学に進学するという。ラグビー部は札幌経済高校が立命館系列となって現校名となった後、1996年に創部された。スポーツ推薦などの制度はない。グラウンドはもちろん土で、学校は森に囲まれた中にあり、夏も冬も風が強いという。

創部26年目の初出場 写真提供:立命館慶祥

学校は新札幌駅からバスで20分ほどかかるため、朝練習は行うことができず、放課後は月曜日がフリー、水曜日がオフで、週3日ウェイトトレーニングをしている。平日、ラグビーを指導できるコーチは松田監督のみで、休日にFW、BKとスポットコーチに指導してもらっているという。

また、12月から3月は土のグラウンドは雪で覆われてしまう北国特有のハンデキャップもあるが、松田監督は「もう今、雪は積もっています。本州のチームと比べると影響はありますが、でも山の手と比較したときはあまり変わらない。ハンデだとは考えていません」と話す。

手がかじかんでしまうため、ボールを使ったハンドリングなどの練習はできないが、雪の上ではタックルや1対1などの練習はできる。冬の時期はウェイトトレーニングやコンタクトの練習に重きを置いている。

南北海道大会決勝 写真提供:立命館慶祥

「大学のサポートがありがたい」と松田監督が言うように、近年、高大連携での強化も少しずつ進めている。立命館大学ラグビー部の中林正一チームコーディネーターに、オンラインや対面でミーティングを行ってもらっている。さらに春の選抜大会前には立命館大学で鬼束竜太HC(ヘッドコーチ)の指導を受け、12月上旬は関西遠征を敢行、花園に向けて立命館大学ラグビー部と合同練習をして研鑽を積んだ。

今年の3年生は4、5人が立命館大学ラグビー部でも続ける予定だという。なお、現在もOB2名が立命館大学ラグビー部でプレーしており、セコムラガッツで活躍するLO(ロック)岩田遼亮も同校、同大学出身である。

進学校のため、松田監督に中学生に「一緒に山の手を倒して花園に行こう」と声をかけても、今季まで出場したことがなく説得力もなく、受験で合格するかわからない。ただ今季、花園に出場したことで松田監督は「少し好転して部員が増えてくれれば」と話す。また同校には学生寮もあるため、「高校3年間だけ慶祥に来て、大学から(立命館大学の関西に)戻る子が出てきてくれてもいいのでは」と期待を寄せる。

花園でも初勝利をつかみたい 写真提供:立命館慶祥

初出場の立命館慶祥の初戦の相手は32大会連続32回目の出場となった石見智翠館(島根)となった。シードこそされなかったが、シード校と遜色ない実力校だ。松田監督は「すごくいい相手なので、やりがいがある」と語気を強めた。

キックのゲームコントロールに期待がかかるSO久保田主将は「緊張で終わるのはもったいないので楽しみたい。ディフェンスが強いチームですが、思い切ってボールを回して勝ちたい」と言えば、攻守の要CTB三浦は「上がるディフェンスで山の手を止められたのは大きな自信になった。相手に飲まれることなく、キックを使いつつ、自分たちらしいボールを展開するラグビーをしたい!」と意気込んだ。

目標は「2勝」を掲げる。初戦は12月28日、第1グラウンドで10時キックオフとなった。道内のライバルを倒した勢いのまま、初出場の立命館慶祥が中国地方の雄にチャレンジする。

文:斉藤健仁/写真提供:立命館慶祥高校

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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