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ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
2年目のジャパンラグビーリーグワンで初優勝を狙う、昨季3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。
今季開幕戦の相手は、前身リーグ(トップリーグ)から18年勝利していない東京サンゴリアス。
12月18日(日)、東京・味の素スタジアムにビジターとして乗り込んだスピアーズは、そんな強敵に対して「仕掛け続ける」ことをテーマにしたという。
「(サンゴリアス相手に)受けてしまうと、受け続けて終わってしまいます。仕掛け続けることがテーマでした。今日はフィジカルにディフェンスで上回れたと思います」(スピアーズ、CTB立川理道キャプテン)
スピアーズは序盤から、守備で仕掛けた。
ラッシュして囲い込むように網を張り、そして激しいファーストタックル。2人目のレースで勝ち、ブレイクダウンでプレッシャーをかける――。
守備の好サイクルを起こし、昨季準優勝チームを苦しめた。
「かなりプレッシャーはありました」と、サンゴリアスのSH齋藤直人共同キャプテンは語った。「セカンドマン(2人目)のレースで、特に前半の前半、完全に劣勢で良いボールが出なかった印象です」
重圧を受けたサンゴリアスは序盤、ラックで4連続の反則を犯してしまう。ここでスピアーズは前半11分までに2本のPG(ペナルティゴール)で6点を追加した。
伝統的に「重量級FW」「セットプレー」のイメージが強いスピアーズだが、近年はバックスも充実。この日挙げた3トライは全てバックス――若い2人のウイングだった。
前半21分のトライゲッターは昨季新人賞、ベスト15を受賞し、日本代表まで駆け上がったWTB根塚洸雅。
ゴール前のスクラムからアタック開始。後方パスからの多層攻撃を仕掛け、ロングパスを右隅で受け、右隅に楕円球を沈めた。
なんとか反撃したいサンゴリアスだが、やはりアタックで効果的なゲインを続けられない。前半の得点は2つのPGによる6点(前半25、35分)のみだった。
スピアーズも前半31分には、今年日本代表キャップを獲得したPR海士広大のジャッカルから、PG成功で3点を追加。8点リード(14-6)で後半を迎えた。
地力は後半に出る。サンゴリアスの逆襲はあるのか――しかし後半における先制点もスピアーズだった。
日本代表のNO8ファウルア・マキシがピック&ゴーでロングゲイン。左に展開し、最後はオフロードパスを受けた1年目のWTB木田晴斗(立命館大学卒)が今季初トライ。
ここでパスを繋げてお膳立てをしたのは、2人の代表FW(南アフリカ代表HOマルコム・マークス/日本代表FLピーター・ラピース・ラブスカフニ)だった。
スピアーズがチャンスを得点に変える一方で、サンゴリアスはまさかのミスも。
後半7分にはフランスから帰ってきた日本代表FB松島幸太朗が、勝負所のタッチキックでミス。サンゴリアスは同30分にもノータッチの失敗があり、追撃の機会を失った。
松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)
しかしFB松島は直後、個人技から流石のビッグゲイン。そしてSH齋藤共同キャプテンが鋭いパスで、NO8テビタ・タタフの独走トライを演出。ジャパン3人がトライに絡み、ビハインドを8点(13-21)とした。
直後のサンゴリアスは迫力、テンポが確実に上がった。
しかしここで途中出場した190センチの巨大プロップ、オペティ・ヘルが渾身のジャッカル。オレンジの壁となって立ちはだかる。
スピアーズは持ち味のセットプレーでも力を発揮。後半19分にはスクラムでペナルティを奪い、貴重なPG加点(3点)を追加。
攻撃で「あと一歩」のパスが繋がらないサンゴリアスを尻目に、スピアーズさらに後半24分、WTB木田が自身2トライ目。
ここでは日本代表FBゲラード・ファンデンヒーファーの一人3役――ハイパントを上げ、チェイスしてタックル、オーバーして攻守交代に貢献する――が大きかった。
サンゴリアスも後半36分に尾崎晟也がスペースに走り込みトライを奪ったが、ゴール不成功でビハインドは13点。
そのまま差は埋まらず、スピアーズが31-18でサンゴリアスを振り切った。プレーヤー・オブ・ザ・マッチには、運動量豊富に攻防両面でファイトしたFL末永健雄が選ばれた。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【第1節ハイライト動画】東京サンゴリアス vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ホスト開催となった開幕戦で、敗戦を喫したサンゴリアス。田中監督は、完敗といってもいい、と潔かった。
「開幕戦を楽しみにしていましたが、思うような結果になりませんでした。スピアーズさんが良いプレッシャーをかけてきて、自分たちのラグビーができなかった。完敗といってもいいです」(サンゴリアス・田中監督)
この日の課題について、田中監督とSH齋藤共同キャプテンの認識は一致している。
「自分たちのスタイルについて、全員が同じ絵を見れていたのか(という点が課題)」(サンゴリアス・SH齋藤共同キャプテン)
「同じ絵を見ているのか、ということは課題。グラウンドで確認しながら合わせていきたい」(サンゴリアス・田中監督)
サンゴリアスは新体制になって攻撃シェイプに変化を加えたという。今秋の日本代表宮崎合宿に最多9人を輩出しており、メンバーの連携面は修正点だろう。後手に回ったブレイクダウンの攻防も要修正だ。
次戦は12月25日。開幕戦白星を飾ったグリーンロケッツ東葛を、東京・味の素スタジアムに迎える。新体制後のリーグ初勝利を掴み、2017年度以来の優勝へ、第一歩を刻めるか。
そして、開幕戦を18年ぶりの快挙で飾ったスピアーズ。
前回の勝利は2004年10月のトップリーグ第5節。FL山口貴豊を主将として24-10で勝利した。サンゴリアスの田中澄憲監督も後半に途中出場していた。
2012年入団のCTB立川キャプテンは、18年ぶりの勝利について「僕が入団してから初めて」と話したが、口調は淡々としていた。優勝候補チームの貫禄がそこにあった。
「嬉しいですが、長いシーズンの中での1試合です。(同じカンファレンスBの)サンゴリアスさんとはまた戦います。逆に気を引き締めて向かっていきたいです」(CTB立川キャプテン)
スピアーズを指揮するフラン・ルディケHCは、開幕戦勝利を受けて「簡単な試合ではかったのでとても嬉しいです」と振り返った。
「今日のチームはとても良かった。力強いディフェンスをして、ラインブレイクも許しませんでした。相手のモメンタム(勢い)を止めることができ、そこから良いターンオーバーが生まれ、良い攻撃に切り替えられました」
スピアーズは今回の勝利により、優勝候補としての存在感をはっきりと示した感がある。その優勝へ向けた一歩として、次戦のバトルは要注目だ。
相手は同じく1勝の横浜キヤノンイーグルス。12月25日に九州へ飛び、ビジターチームとして昭和電工ドーム大分(大分県)で激突する。
イーグルスは開幕戦でモールの攻防が光った。スクラムも強力であり、FW同士の泥臭い攻防は見物だ。バックスもお互いにスター揃いで、派手なプレーも飛び出しそう。第2節も注目カードが目白押しだ。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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