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【ハイライト動画あり】シーズンを占う一戦でイーグルスが大きな白星を獲得。スティーラーズは勝ち点に届かず。リーグワン2022-23 開幕節レビュー
ラグビーレポート by 直江 光信コリー・ヒル(横浜キヤノンイーグルス)
この先の戦いに弾みをつける意味でも、昨季あと一歩で届かなかったトップ4入りをつかみ取るためにも、お互いにとって重要な一戦となった横浜キヤノンイーグルス対コベルコ神戸スティーラーズの開幕節。試合は両者の今シーズンにかける思いと準備の成果が随所に現れる、引き締まった80分になった。
アタッキングラグビーを志向するチーム同士らしく、ゲームは立ち上がりからボールとスコアがめまぐるしく動く展開で進んだ。まずは開始6分、スティーラーズがSO李承信のPGで先制。しかしイーグルスは直後に敵陣22mライン付近でマイボールスクラムの好機を得ると、CTB梶村祐介のパワフルなゲインから左逆目へ移動したSO田村優が巧みなコースどりでディフェンダーの合間をすり抜け、左中間に飛び込む。
イーグルスは14分にも敵陣ラインアウトを起点にレッドゾーンへ攻め込み、小刻みにパスをつないで大外のスペースを攻略。CTBジェシー・クリエルのオフロードからFBエスピー・マレーが抜け出し、ゴールラインを越える。SO田村優のコンバージョンも決まり、12-3とリードを広げた。
李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)
スティーラーズもここでズルズルとは崩れず、19分にゴール前ラインアウトからFW戦で相手防御を集めて、左大外のスペースでカットパスを受けたルーキーのWTB松永貫汰がフィニッシュ。SO李のゴール成功で2点差に詰め寄り、相手側へ傾きかけた流れをすぐに引き戻す。
その後は互いに攻め込みながらも相手の厳しいタックルに仕留めきれないシーンが連続し、主導権を奪い合うような展開に。35分にイーグルス、40分にはスティーラーズとそれぞれ1本ずつPGを加え、15-13でハーフタイムを迎えた。
一進一退の攻防は後半も続く。先に得点を刻んだのはイーグルス。44分、CTB梶村の自陣でのターンオーバーから一気に切り返し、相手防御が整う前にラックサイドに走り込んだLOコリー・ヒルが豪快にゴールラインを越える。
ジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1
【第1節ハイライト動画】横浜キヤノンイーグルス vs. コベルコ神戸スティーラーズ
しかしスティーラーズも直後のピンチを懸命のカバーディフェンスでしのぐと、56分にCTBマイケル・リトルの絶妙のグラバーキックからチャンスメーク。複数でプレッシャーをかけてボールを奪い、パスを受けたFL橋本皓が左コーナーに押さえる。難しい角度のゴールキックをSO李が通し、ふたたび2点差に。
ファフ・デクラーク(横浜キヤノンイーグルス)
もちろんゲームはまだ決まらない。65分、イーグルスは得意のラインアウトモールからインゴールに迫り、入替で登場した注目の新加入、南アフリカ代表のSHファフ・デクラークがタックラーの届かないゾーンを横に引っ張る。LOヒルがまたも相手の目線が切れる角度から縦に突き抜け、この日2本目のトライを挙げた。
しかしスティーラーズもすかさず取り返す。69分、敵陣22メートル線内のマイボールラインアウトでモールを押し込むと、相手の意識が内側へ向いたところで一気に大外へ展開。フリーのWTB井関信介が右中間へ滑り込んだ。これで29-27。
体力が限界に近づくラスト10分の最終盤。この勝負どころで真価を発揮したのが、ホストチームのイーグルスだった。73分、じわじわとゲインを重ねて敵陣ゴール前でマイボールラインアウトを獲得すると、看板のモールを形成。巧みに相手の圧力をそらしながら前進し、NO8アマナキ・レレイ・マフィがなだれ込んだ。
スティーラーズも77分にSO李のPGで逆転圏内の6点差に詰め寄ったが、イーグルスは直後のキックオフで途中出場のPR津嘉山廉人が球に絡んでノットリリースザボールのペナルティを奪取。SO田村優が落ち着いてPGの3点を加え、ふたたび9点リードに突き放す。そこからの1分強はきっちりとボールをキープして時計を進め、フルタイムを迎えた。
就任3シーズン目の沢木敬介監督が掲げた「ウィナーズ・マインドセット」のスローガンを体現するように、タイトなクロスゲームを勝ち切ったイーグルス。どちらに流れが傾くかという拮抗した局面で常に先手をとり、精神的優位性を保ちながら試合を進められたことは、チームの進歩の証といえるだろう。ホストスタジアムでの開幕戦、昨季プレーオフ進出への望みを断たれた相手を振り切っての白星スタートで、いい流れでこの先の戦いへ向かって行けるはずだ。
敗れたスティーラーズは肝心な場面でイージーエラーが重なり、7点差以内のボーナスポイントも逃す痛い敗戦となった。ただ、この日はややおとなしかったナニ・ラウマペとリトルのCTBコンビを筆頭に、リーグ有数の戦力を備えたチームであることは間違いない。地元神戸でのホストゲームとなる次節の花園近鉄ライナーズ戦(12月24日13時キックオフ@神戸総合運動公園ユニバー記念競技場)での巻き返しを期待したい。
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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