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東洋大学FLヴェアの突破を止める早稲田
いよいよ大学日本一を決めるラグビー大学選手権が始まり、12月11日(日)は3回戦が東西で2試合ずつ行われた。東京・秩父宮ラグビー場では、優勝16回と最多を誇る早稲田大学(関東大学対抗戦3位)と今季、大学ラグビーの「台風の目」で、初出場となった東洋大学(関東大学リーグ戦3位)が激突した。
21-35で敗戦した「早明戦」から中6日だった早稲田大学の大田尾竜彦監督、先発メンバーはFW(フォワード)2人を交替。HO(フッカー)佐藤健次(2年)、LO(ロック)前田知暉(4年)がリザーブに回ったが、他の13人は変わらなかった。
キャプテンFL(フランカー)相良昌彦(4年)はケガの影響で不在となったが、副将CTB(センター)吉村紘(4年)がゲームキャプテンを務めた。他には1年生のFL栗田文介(千種高校出身)、NO8(ナンバーエイト)村田陣悟(3年)、SH(スクラムハーフ)宮尾昌典(2年)、WTB(ウイング)松下怜央、槇瑛人、FB(フルバック)小泉怜史(いずれも4年)が先発した。
一方、初出場となった東洋大学の福永昇三監督はBK(バックス)のメンバーを1人交替。前節からは新人FBステファン・バファフォラウ(札幌山の手高校出身)がメンバー外となり、南アフリカ出身のWTBモリース・マークス(2年)が先発し、14番で先発していた田中康平がFBに下がった。
LOウーストハイゼン、南アフリカ国旗のヘッドギアをつけて出場
他にはHO(フッカー)谷名樹、LOはキャプテンLO齋藤良明慈縁(ともに4年)と、身長211cmの南アフリカ出身ジュアン・ウーストハイゼン(1年)、FLタニエラ・ヴェア(3年)、SH神田悠作、SO土橋郁矢、CTB大島暁、繁松秀太(いずれも4年)、正確なキックが持ち味のWTB杉本海斗(3年)らがスターティングメンバーに名を連ねた。
早稲田大学が伝統の展開力を見せ、ライバル明治大学が待つ準々決勝に進むのか。それともFWに力のある初出場の東洋大学が新たに歴史を刻むのか。大学ラグビーファン注目の一戦は、冬晴れの中、午前11:30にキックオフされた。
先にペースを掴んだのは東洋大学だった。スクラム、接点で相手にプレッシャーをかけて反則を誘い、相手陣奥のラインアウトからモールを組むが、「ファースト10(最初の10分)とフィニッシュ10(最後の10分)」をこの試合のテーマに掲げていた早稲田大学も、ディフェンスで粘りを見せて簡単にゴールラインを割らせない。
反則を得た後、PG(ペナルティゴール)を狙わなかったことに関して東洋大学の福永監督は、「チャレンジャーなので攻めていこう。自信のあるところ(ラインアウトモール)で攻めていこうと話をしていました」と強気の姿勢の意図を説明した。ただ、東洋大学が得点を挙げられないでいると、前半15分、早稲田大SH宮尾が相手パスをインターセプトし、そのまま中央にトライを挙げて7点を先制する。
前半29分、東洋大学SH神田のトライ
しかし、東洋大学ペースは変わらず、反撃。前半29分、相手ラインアウトをスチールし、右に展開。最後はフォローしたSH神田がステップで相手をかわして右中間にトライ、ゴールも決まって7-7の同点に追いつく。さらに39分、相手反則から得たラインアウトからモールを押し込み、最後はHO谷名が押さえてトライ。チャレンジャーの東洋大学がリードして前半を折り返す。
谷名のトライを喜ぶ神田とウーストハイゼン
5点を追う早稲田大学は先に動く。大田尾監督は後半の頭からHO佐藤、LO前田を投入した。「(スクラムでペナルティを取られたので)佐藤を出すしかないなと思った。前田のラインアウトのコンテストスキルにかけてみようと思った」(大田尾監督)。それでも後半3分、東洋大学は相手の反則から、敵陣奥でモールを組んで、再び谷名が押さえてリードを12点に広げた。
このまま一気に東洋大学が畳み掛けるかと思われたが、早稲田大学も6分、スクラムから「8-9」を仕掛けて、SH宮尾がCTB吉村にパスし、そのまま吉村が中央にトライを挙げて、5点差に迫る。この後、東洋大学に疲れが見え始めると、徐々に早稲田大学ペースとなっていく。
ラグビー 全国大学選手権 22/23
【ハイライト】3回戦 早稲田大学 vs. 東洋大学
後半26分、早稲田WTB槇のトライ
18分、CTB吉村がPGを沈めて17-19と2点差に追い上げると、26分はワイドにアタックを仕掛けて、最後はWTB槇が右隅にトライを挙げ、ゴールも決まってついに24-19と逆転に成功。33分にも再び、ボールを継続し、WTB松下が見事なステップで相手をかわしてトライを挙げて31-19。さらに試合終了間際にCTB吉村がPGを決めて早稲田大学が34-19として、そのままノーサイドを迎えた。
善戦するものの敗れた東洋大学の福永監督は、「選手たちは本当に精一杯力を出し切っていました。本当にたくさんの人が来てくれて、すごく期待をしていただいていた中で残念な気持ちはありますが、自分たちの力を出し切った。今日、(大学選手権を)経験できたことはまず何よりもチームとしても収穫ですし、そのままチームはどんどん強くなっていく。その準備を進めていきたい」と、来季を見据えた。
ノーサイド後、涙を見せていたLO齋藤キャプテンは「やっぱり日本一のためにトレーニングしてきたので、それが果たせず悔しいです。自分たちの代は終わりましたが、東洋大学はこれからも続くので期待してください。(今季を振り返り)ラグビープレーヤーにとってこんな素晴らしい経験をさせていただけたので本当に幸せの幸せです。感謝の気持ちでいっぱいです」という言葉で締めた。
見事に逆転勝利を収めた早稲田大学の大田尾監督は「選手たちはプレッシャーがあった中で、それに打ち勝ってくれたことが誇らしい。非常にチームとして大きく成長できる試合だったし、準備だったと思います。相手はフィジカルも団結力もあってすばらしい。そこに対してどう準備してどう乗り越えるか、その先にしか(次の)試合はない。次の試合(明治大学戦)は昨季と同じタイミングで負けて、前回(早明戦)も負けました。何が何でも勝ちたい」と語気を強めた。
トライをあげるCTB吉村
ゲームキャプテンのCTB吉村は「今週の試合を迎えるにあたり、正直、相当怖かった。東洋大学をリスペクトしているからこそ、早稲田がここで負けてはいけないというプレッシャーからみんな緊張感を持って1週間、過ごしてきました。そういった中で良い準備ができたからこそ、80分の中で何度もリードされたが、1つになれて最終的に勝つことができた」と安堵した表情で振り返った。
ちょうど1年前の12月11日、入替戦を戦っていた東洋大学。快進撃を続けて大学選手権出場という形で今シーズンを終了した。来季、再び、大学選手権に出場して勝利を目指す。
一方の早稲田大学は準々決勝に駒を進めて、12月25日(日)、秩父宮ラグビー場でライバル明治大学(対抗戦2位)と激突する。昨季は同じタイミングで戦って敗戦しており、今季の対抗戦でも負けている。2週間、万全の準備をしてリベンジに挑む。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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