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ノーサイド。ともに大学選手権に挑む
12月3日(土)、東京・秩父宮ラグビー場で、ラグビー関東大学対抗戦の最終節が行われた。前節、2年連続11度目の対抗戦優勝を決めた帝京大学が、4位の慶應義塾大学の挑戦を受けた。
昨年の同カードは帝京大学が64-14で快勝したが、一昨年は慶應義塾大学が12-13で勝利。過去5年は帝京大学が4勝1敗とリードしているが、2017年は3点差、2018年は5点差と接戦だった。
帝京大学が2年連続となる全勝優勝を決めるか。慶應義塾大学は勝利すれば、早稲田大学vs.明治大学の結果にもよるが、3位になる可能性も残されていた。ともに大学選手権に向けて勝利して、自信と勢いをつけるために勝利したい試合だった。帝京大学は前節から、キャプテンCTB(センター)松山千大(4年)、LO(ロック)本橋拓馬(2年)が先発に復帰した。一方の慶應義塾大学は前節の早慶戦から4名変更したものの、キャプテンFL(フランカー)今野勇久、SO中楠一期(ともに4年)ら中軸は先発メンバーに名を連ねた。
接点では帝京大学が優勢だった
冬の訪れを感じさせるひんやりとした天気の中、午後2:00に試合はキックオフされた。序盤、キックを使って敵陣で戦う意識の高かった慶應義塾大学が、相手のミスに乗じて攻め込むが得点に結びつけることはできなかった。すると接点のバトルで優位に立った帝京大学が相手陣でのプレーが増えていく。
トライを挙げたRP上杉
前半7分、モールからPR(プロップ)上杉太郎(3年)が右中間にトライ。SO(スタンドオフ)高本幹也(4年)がゴールを決めて7点を先制。19分には同じ形から再び、PR上杉がインゴールにボールを押さえて、14-0とリードを広げる。28分、慶應義塾大学も反撃し、相手陣奥でチャンスを得てモールを形成、ブラインドサイドを攻めてWTB(ウィング)今野椋平(1年)が押さえてトライ。難しい角度のコンバージョンをSO中楠が沈めて、7-14と追い上げる。
トライを挙げるHO江良
その後、再び帝京大学のペースとなるが、慶應義塾大学のディフェンスで粘りを見せた。だが、帝京大学は36分、モールからHO(フッカー)江良颯(3年)が持ち込んでトライ。さらに前半終了間際、SO高本が正面からのPG(ペナルティゴール)を決めて24-7で前半を折り返した。
ラグビー 関東大学対抗戦2022
【ハイライト】慶應義塾大学 vs. 帝京大学
後半も「紅い旋風」のペースは変わらず、8分にWTB高本とむ(3年)、15分には途中出場のLO(ロック)ダアンジャロ・アスイ(3年)がトライを挙げて、38-7と大きくリードする。32分、慶應義塾大学もモールを起点にCTB三木海芽が力強いボールキャリーを見せ、インゴールにボールを押さえて14-38とした。
トライを挙げる慶應のCTB三木
しかし、帝京大学は最後まで攻撃の手を緩めることなく、SH(スクラムハーフ)前田翔哉(4年)、NO8(ナンバーエイト)延原秀飛(3年)、LOアスイと3連続トライを重ねてノーサイド。帝京大学が57-14で快勝し、2年連続となる対抗戦全勝優勝に花を添えた。POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には前半2トライを挙げるだけでなく、セットプレーに貢献した帝京大学PR上杉が選ばれた。
前節に続いて活躍を見せた帝京PR上杉
来週、12月11日(日)から大学選手権3回戦が始まるが、対抗戦4位となった慶應義塾大学は秩父宮ラグビー場で、リーグ戦2位となった流通経済大学と対戦する。一方、シードとなった帝京大学は12月25日(土)の準々決勝からの参戦となり、同志社大学(関西3位)と福岡工業大学(九州1位)の勝者と秩父宮ラグビー場で対戦する。
慶應義塾大学の栗原徹監督は「(帝京大学に)思いっきりチャレンジしましたが、フィジカルや細かな集中力の差を痛感しました。まだまだ成長、修正できる部分がたくさんあると思いますので、1週間しかないですが、いい準備をして、そしてまた(大学選手権で)帝京大学と試合ができるように成長していきたい」と先を見据えた。FL今野主将も「非常に悔しい試合になったが、自分たちは前を向いていくしかない。1週間後の大学選手権に向けて頑張っていきたい。ポジティブに捉えてここからいきたい」と意気込んだ。
慶應もディフェンスで粘りを見せたが
11日(日)に対戦する流通経済大学の印象を聞かれて栗原監督は、「春季大会で負けて、夏合宿で勝った。日頃から切磋琢磨している大学の1つです。非常にボールを動かしますし、FW(フォワード)が大きな強いチームだと思います。慶應としては、彼らの強みを出させないように対策を考えたい」と話した。
モールを押し込む帝京大学FW
就任1年目から対抗戦で全勝優勝を飾った帝京大学の相馬朋和監督は、「慶應さんに我々の持てるものをすべてぶつけようと準備し、勝利で終えることができてうれしく思います。(大学選手権に向けて)1日1日を大切にしてハードワークして、成長を止めないこと。これから寒くなって体調管理も含めて、緊張感もって過ごすことが大事になってくる」と気を引き締めた。
CTB松山主将は「慶應さんのおかげでタフな試合ができて、80分を通じて、自分たちが成長できたいい試合だった。(大学選手権優勝を100点とすると)70点くらい。アタックでもディフェンスでも小さなことをどれだけこの3週間で修正できるかが大事。そこをしっかり詰めて高い完成度で大学選手権に臨みたい」と意気込んだ。
7本中6本のプレースキックを決めた帝京SO高本
帝京大学、慶應義塾大学は他の6校より1日早く、対抗戦の全日程を終えた。ただ、まだ戦いは終わらない。ともに負けたら終わりの大学選手権に臨む。大学選手権でも連覇を狙うシード校の帝京大学は初戦(準々決勝)が3週間後の25日(日)のため、しっかりと調整することが求められるだろう。慶應義塾大学は1週間後の流通経済大学に全力で挑む。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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