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流大(東京サントリーサンゴリアス)
2019年のラグビーワールドカップでは全5試合に先発し、ベスト8進出に貢献した日本代表キャップ30のSH(スクラムハーフ)流大(東京サントリーサンゴリアス)。今春は代表の共同キャプテンに指名されたが、病気のため合宿初日で離脱。しかし、9月の合宿から復帰すると、今秋のシリーズでは6試合に出場して存在感を示した。流に代表活動の3ヶ月を振り返ってもらうとともに、12月17日に開幕するリーグワンへの意気込みも聞いた。
日本代表は9月から大分、宮崎で合宿を敢行し、10月はオーストラリアA代表と3試合、そして国内でオールブラックスと激突。さらに11月は敵地でイングランド、フランスとも対戦。だが、テストマッチは3連覇を喫した。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
まず、流は病気から復帰できたことに関して、「病院関係者の方はじめ、ファンの方にも心配の声や、励ましの声をすごくいただいて、一番好きなチームで活動再開することができて、幸せな時間だった」と話した。
秋の6試合を振り返り、「プレシーズンは本当にきつい合宿で、なかなかハードでしたけど、その中でもチームがまとまって少しずつ成長し、最初、オーストラリアA代表になかなか勝てなくて、最終戦に勝てた。オールブラックス、イングランド、フランスに対しても負けてしまって、すごく残念ですけど、自分たちがやってきたことを出せた部分も多々あった」。
「とにかく、6試合出場することができて病気から復帰できたことには満足しています。ただ、パフォーマンスはもっと上げていかないといけないですし、テストマッチで勝ちたかった。本番は来年のワールドカップですので、そこで結果を出せるように、また頑張っていきたい」と総括した。
敵地では来年ワールドカップの同組のイングランドと対戦し、フランスとはワールドカップで2試合行うトゥールーズで試合を行った。「世界のトップの力をその場で感じることができたのは収穫でした。イングランドとは実際にワールドカップで対戦するので、どうやったら崩せるかというところを少しずつイメージが湧いてきた」。
ラグビー日本代表テストマッチ
【ハイライト】日本 vs. ニュージーランド(10月29日)
「負けはしましたけど、次に活かせるところだと思います。フランスでは、実際に来年のワールドカップで試合をする会場でできたのはすごく大きな経験で、初めてやるのと1回やっているのでは大きな経験の差があるのですごく良かった」。
流はテストマッチでは2試合先発し、フランス戦では控えだった。「毎回、僕に求められていることはいつも同じ。チームがやりたいことをしっかりと一番理解して、それをみんなにやり続けてもらうようなコミュニケーションを取り続けること。速い展開にしていきたいので、それを引っ張っていくこと。キックをするのか、アタックするのかという判断のところを早く正確にやることです。ベストの判断をするのが僕の求められていること」。
『Our Team』という新スローガンについて聞かれると、「日本独自のチームを作るということ、自分たちを誇れるチームになれるように日々の準備をしっかりとすること、試合でそれを出せるようにみんなで絆を作ること。そのあたりが積み重なって、自分たちがその掲げたチームになっていくと今は理解しています。これからまだ1年あるので、リーダーとして引っ張っていきたい」と話した。
オールブラックス戦でトライをあげた流大
9月に代表チームに合流したとき、「2023年のワールドカップで日本代表の活動は終わりします」と話していた流。その気持ちに「変わりはない」とキッパリ。「2023年にしっかり覚悟を持って、残り1年しっかりとトレーニングを積んで、日本のために頑張りたい。やはり結果を出すことが日本のラグビーを世界に知ってもらうこともそうですし、日本国内での普及にも勝つことが一番なので、本当に覚悟を持って、あと1年やり切りたい」と意気込んだ。
ここから話は日本代表からサンゴリアスへと移る。サンゴリアスは最後のトップリーグ、そして昨季のリーグワン元年、ともに埼玉パナソニックワイルドナイツにプレーオフ決勝で敗れて涙を呑んだ。そんなサンゴリアスの新指揮官には、明治大学を優勝に導き、ゼネラルマネージャーを務めていた田中澄憲監督が就いた。
「サンゴリアスらしさを取り戻す」と流大
「キヨさんは僕が大学のときに採用をやられて、僕を誘ってくれた方なので、その方と監督と選手でプレーできるっていうのはすごく楽しみ。サンゴリアスのカルチャーをすごく理解している方なので、一緒になって作り上げていきたい」。
今季、サンゴリアスは『アタッキングアグレッシブラグビー』を取り戻すことに注力している。キャプテン経験のある流も、「2年連続ワイルドナイツに負けています。試合内容に関しても自分たちの良さ、サンゴリアスらしさ、自分たちのアイデンティティーというのを出せないまま負けてしまった印象がある」。
「優勝をすることがサンゴリアスの使命ですが、今一番やらないといけないのはサンゴリアスらしさ、自分たちらしさを取り戻すことです。プレシーズン、いい時間を過ごしていると聞いているので、若い選手がどれだけ成長したのかすごく楽しみです」と意気込んだ。
サンゴリアスではチームメイトであり、日本代表でもライバルであるSH齋藤直人は、今季から共同キャプテンを務める。流は齋藤にキックスキルを教えつつ、パススキルは教わっているという。「素晴らしい選手であることには変わりないですし、今回のツアーでもいいプレーをしていた。オフフィールドではすごく仲いいというか、一緒にいることも多いですが、グランドでは競争心を持ってお互いやり合っていくことが、互いのために必要ですし、ライバルなのでそういう意識でいます」。
「齋藤は日本代表で経験も積んできているので、自信も出てきたと思う。その自信をどんどん表現して、サンゴリアスでもキャプテンになったので、遠慮することなく、周りに対して発信をして、自分の意見をどんどん言ってチームを引っ張っていく選手になってほしいし、その辺を手助けできたら、と個人的に思っています」。
来年のワールドカップイヤーを迎えるにあたり、インターナショナルレベルのパフォーマンスを維持していくために必要なことは?と聞かれると、流は「自分自身の意識のところが一番大きい。リーグワンの中で質の低いプレーをしてしまうと、チーム全体のレベルも落ちてしまうので、常に高いスタンダードを持ってプレーすることがすごく大事。常に自分の頭の中には、日本代表を背負っているという覚悟を持って、サントリーでの責任を持って毎日過ごさないといけない」と話した。
チャージからトライしたワーナーに飛びつく流大
今季のリーグワンで対戦を楽しみにしている選手は?と聞くと、流は「SHウィル・ゲニア(花園ライナーズ)は昔から見ている選手なので、対戦がすごく楽しみな選手です。東芝ブレイブルーパス東京戦はLO(ロック)ワーナー・ディアンズがいるときは、ボールを蹴っちゃいけないなと思っています。ワーナーには、『俺にはチャージ、来るなよ!』って言ってあるんですけど(苦笑)。ワーナーがいたら10番から蹴ってもらうようにしたいです」。
あと、(サンゴリアスの)同期のHO(フッカー)北出卓也が神戸スティーラーズに移籍したので、対戦が楽しみです!」と声を弾ませた。
今季の個人的な目標について聞くと、流は「とにかく優勝したい気持ちが強くて、例えば『ベスト15』に入りたいとか、先発として何試合出たいとかまったくなくて、サンゴリアスでワイルドナイツに勝ちたいという気持ちが一番強いです」と語気を強めた。
9月に30歳になった流だが、日本代表でもサンゴリアスでもその存在感は揺るがない。2シーズン目を迎えるリーグワン、最後と決めているワールドカップに向けて個を鍛えつつも、アタッキングラグビーを体現し、サンゴリアスの優勝に貢献したい。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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