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1点差の決着となったニュージーランドとフランス
10月8日にニュージーランドで開幕した女子15人制ラグビーの世界一を決める「ラグビーワールドカップ2021」。11月5日(土)はオークランド・イーデンパークで準決勝の2試合が行われた。ともに最後まで勝負の行方がわからない激闘となった。
●カナダ 19-26 イングランド○
第1試合は世界ランキング3位のカナダと1位のイングランドとの対戦となった。準々決勝でアメリカを32-11で下してテストマッチ8連勝と勢いに乗るカナダは、ベンチメンバー8名のうち、7人のFW(フォワード)を入れて得意のFW戦で難敵に挑んだ。
一方、オーストラリアを41-5で下したイングランドは、15人制女子として最多記録となる138キャップを達成したキャプテンのNO8(ナンバーエイト)サラ・ハンターを中心に、こちらも強力なFWを擁し、BK(バックス)も2019年世界最優秀選手のCTB(センター)エミリー・スカラットや、WTB(ウイング)クローディア・マクドナルドなど得点力の高い選手が入った。
イングランドが優位に試合を進めるが…
2014年ワールドカップ決勝の再戦は、序盤は両者とも譲らない展開となったが、先に試合を動かしたのはイングランドだった。前半9分、ラインアウトからそのままドライビングモールで、FL(フランカー)マーリー・パッカーが押さえてトライ。ゴールも決まりイングランドが7点を先制した。さらにイングランドは15分、FB(フルバック)ヘレナ・ローランドがビッグゲインし、WTBアビー・ダウにオフロードパスが渡って12-0とリードを広げる。
しかし、カナダもその直後の19分、スクラムからSH(スクラムハーフ)ジュスティーヌ・ペレティエが素早くボールを出し、最後はFLカレン・パキンが持ち込んで、5点を返す。
さらに35分に再びカナダが魅せる。モールで15m以上前進すると反則を誘う。カナダはモールにこだわり、最後はCTBアリーシャ・コリガンがゴールラインを超え、12-12の同点に追いつく。イングランドは前半終了間際にCTBスカラットのPG(ペナルティゴール)で3点を追加。イングラントが3点リードで前半を折り返した。
後半3分、イングランドはさらにPGで3点を加えて6点差に広げる。カナダも敵陣で粘り強く攻め続けるが、ディフェンスを崩せなかった。すると20分、イングランドが自陣奥からWTBクローディア・マクドナルドのカウンターから一気に敵陣までブレイクし、WTBダウにオフロードパスをつないでトライを挙げ、23-12と突き放す。
それでも諦めないカナダは、モールで勝負を挑むと、イングランドはたまらず反則を繰り返してしまう。14分、イングランドPR(プロップ)ヴィッキー・コーンボローにイエローカードが出て10分間の一時退場となるが、カナダはシンビン中に得点を挙げることができなかった。
28分には、カナダは途中出場LO(ロック)タイソン・ブークブームが突破してトライ。ゴールも決まり19-23と4点差まで追い上げる。残り10分となったところで、イングランドはキックオフのボールをキープして相手の反則を誘うと、迷わずPGを選択して26-19とリードを広げて、そのままノーサイドを迎えた。
カナダの反撃は及ばず
イングランドはカナダを退けて、テストマッチ30連勝の記録を更新して決勝に進出した。POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には、イングランドLOゾーイ・オールドクロフトが選ばれた。
イングランドのサイモン・ミドルトンHC(ヘッドコーチ)は、「緊張感のある準決勝にふさわしい試合で、今日のカナダはワールドクラスでした。今大会でも傑出したチームだった。素晴らしい相手がいたからこそ、私たちは最後まで耐え、決勝に進むことができた」と相手を称えた。
キャプテンNO8ハンターは、「私たちはベストな状態ではなかったが、そうでなくても勝つ方法は見つけられる。今日のラスト20分はまさにそうで、身体を張って目指していた決勝に進めた」と笑顔を見せた。
カナダのケヴィン・ルーエHCは「結果は残念だが選手たちがやってきたことを誇りに思う。胸を張っていい。彼女たちは報酬を得ることもなく、いろんなことを犠牲にしてきた。1日1日の積み重ねが大事だと言ってやってきたが、それが報われた。結果としては報われなかったが、それでも本当に誇りに思う」と選手たちを称えた。
女子ラグビーワールドカップ2021
【準決勝ハイライト】カナダ vs. イングランド
キャプテンのNO8ゾフィー・デグルートは「出し切ったと思うし、いいパフォーマンスだった。ただ、まだまだ私たちのチームには可能性がある。カナダは世界的なラグビー大国ではないけど、みんなにカナダのラグビーを知ってもらいたい一心でやってきた」と敗戦も前を向いた。
○ニュージーランド 25-24 フランス●
準決勝第2試合は開催国で、大会連覇を目指すニュージーランド(世界ランキング2位)と、初の決勝進出を目指すフランス(同4位)の激突となった。
「ブラックファーンズ」こと、ニュージーランド。ここまでトライランキング首位のWTBポーティア・ウッドマンや、WTBルビー・ツイ、CTBテレサ・フィッツ パトリック、CTBステイシー・フリューラー、FLサラ・ヒリニと、5人の東京オリンピック金メダリストを含む布陣で臨んだ。
6大会連続ベスト4のフランスは、脳震盪で2試合を欠場したNO8ロマーヌ・メナジェが先発に復帰。ベテランのLOサフィ・ンディアジェがベンチに入り、トライランク3位タイのWTBジョアンナ・グリセ、FBエミリー・ブラールと、強いFWと得点力の高いBKのバランスの取れたラインアップを揃えた。
ブラックファーンズのハカ
直近の4試合では、フランスがブラックファーンズに勝利しているが、ワールドカップの過去3度の対戦はニュージーランドが勝っている。お互いに負けられない一戦は、ニュージーランドのハカの後、キックオフされた。
試合はまず前半7分にフランスがSO(スタンドオフ)キャロリーヌ・ドゥルーアンのPGで3点を先制した。その後20分を過ぎるまで互いに点を与えない拮抗した展開となったが、23分、フランスが再び好機を得る。ラインアウトからラックを繰り返し、最後はNO8メナジェが拾ってトライ、ゴールも決まって、10点をリードする。
開催国ニュージーランドも前半35分、相手のスクラムの反則でフリーキックを得ると、SH(スクラムハーフ)ケンドラ・コックセッジのタップキックからワイドに展開、CTBフリューラーにボールが渡ると、そのまま大外を走り切ってトライ。3点差と追い上げる。直後の37分にもPGで10-10の同点に追いつく。
しかし、フランスは前半終了間際、ラインアウトを起点にアタックし、最後はCTBガブリエル・ヴェルニエがトライ。コンバージョンも決まり17-10としてフランスがブラックファーンズに7点をリードして折り返す。
追いかける展開となったニュージーランドは、後半4分、FBレニー・ホームズのキックをチェイスしたWTBトゥイが、ボールに追いついてそのまま押さえてトライ。2点差に迫る。さらに17分、ニュージーランドはラインアウトからHOルカ・コナーがキャリーしてパスをつなぎ、CTBフィッツパトリックが相手のディフェンスをかわしてトライ。ゴールも決まり22-17と、ブラックファーンズがこの試合初めてリードする。
ニュージーランドは28分、キャプテンSOルアヘイ・デマントのPGで3点を加えて25-17と8点差にリードを広げた。しかし、初めての決勝に進みたいフランスも粘りを見せる。25分、ラックを連取して最後はNO8メナジェがゴール下にトライ。ゴールも決まり、24-25と1点差に追い上げる。
試合終了が迫る中、ニュージーランドPRサント・タウマタが危険なタックルでシンビン(10分間の途中退場)となり、フランスはSOドゥルーアンのPGが決まれば逆転勝利という展開にも知込んだが、ボールは左に大きく逸れて逆転することはできなかった。そのまま、25-24で地元ニュージーランドがフランスを振り切って、決勝へ駒を進めた。POMはFLヒリニが受賞した。
薄氷を踏む思いで勝利を手にしたニュージーランドのウェイン・スミスDOR(ディレクター・オブ・ラグビー)は、「(自身がオールブラックスの指揮官を務めていた時の)2011年の時は、またこのイーデンパークでフランスと対戦するとは思っていなかった。このチームのハートが、特に後半は顕著に現れた。決勝で当たるイングランドは我々のずっと先を行っている。あと1週間で、どこまでそのギャップを埋められるか」と気を引き締めた。
女子ラグビーワールドカップ2021
【準決勝ハイライト】ニュージーランド vs.フランス
キャプテンのSOルアヘイは「本当に誇らしい。家族や国が私たちを応援し、誇りに思ってくれていることが、フィールドにいる私たちにどれほどの違いをもたらすか。人々は、かつてないほど、女子ラグビーを応援してくれるようになりました」と感極まった。
惜しくも敗れたトマ・ダラックHCは「選手は期待通りのことをやってくれた。リスクを取り、よく守った。少しのミスが痛手となった。ワールドカップは4年に1度しかないのに本当に悔しい」と唇を噛んだ。
キャプテンFLガエル・エルメは「スコアを見れば、いかに激しい試合であったかがわかる。歴史に名を刻み、勝利を手に入れたかったので、がっかりしている。大会を通じて多くのハートを見せてきましたが、今日もそれを示せました。女子ラグビーにとって、信じられないような試合でした」と振り返った。
いよいよ女子の世界一決定戦も残り2試合。11月12日(土)、オークランド・イーデンパークでカナダ対フランスの3位決定戦、そして前回大会と同じくニュージーランドとイングランドが優勝をかけて相まみえる。
文:斉藤健仁/写真:WORLD RUGBY/Getty Images
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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