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ラグビー コラム 2022年10月31日

【ハイライト動画あり】惜しい、悔しい。でも、誇らしい。 日本代表、オールブラックスに7点差の惜敗

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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「悔しいです。勝てた試合だったので」。何度もジャッカルで試合の流れを変えた姫野和樹の言葉にすべてが凝縮されていた。10月29日、国立競技場には65,188人という同競技場観客動員記録の大観衆が集った。その多くが姫野と同じ気持ちだっただろう。同時に誇らしさも感じる戦いでもあった。

 

三笠宮彬子女王殿下の両国選手への激励、男声合唱団コール・ファーマーの両国国歌斉唱が試合の格を高めた。ニュージーランド代表オールブラックス(NZ)のハカ(ウォークライ)をハーフウェイラインに整列して見据える日本代表。中央の坂手淳史キャプテン、リーチ マイケルは笑みをたたえていた。両チームが対峙するハカでスタジアムのボルテージは一気に上がった。

午後2時55分、SO山沢拓也のキックオフ。フィールド中央深くに蹴り上げられたボールを確保したNZに日本のWTBシオサイア・フィフィタ、リーチが突き刺さる。序盤のNZは日本の前に出てくるディフェンスの背後にキックを多用した。前半5分、日本が切り返し、NO8テビタ・タタフが大きく前進。SH流大につなぎ22mラインを越えるも、NZのSOリッチー・モウンガが激しくタックル。チャンスを逸する。両チームの激しいコンタクト合戦を観客は固唾をのんで見守った。

先にトライをとったのはNZだった。前半11分、日本陣10mライン付近のラインアウトからの攻撃でLOブロディー・レタリックがインゴールまで走り切る。日本にとっては、ゴールラインを背負ったスクラムでトライを防いだ直後だけに、もったいない失点だった。前半19分、日本も山沢のPGで、3-7と差を詰める。日本のディフェンスはよく機能していたが、前半26分、スクラムからの連続攻撃でCTBブレンドン・エノーにトライを奪われる。タックルには入っていたが受け身になってオフロードパスを連続で決められてしまったものだ。スコアは、3-14。

流 大

32分にはラインアウトからサインプレーで、WTBセヴ・リースにトライを許し、3-21と引き離された。その後のキックオフからもボールを繋がれ、自陣深く入られてしまう。そのまま失点していたら勝敗の興味は薄らいだかもしれない。たが、姫野が値千金のジャッカルでボールを取り返す。ここから攻め、右タッチライン際でCTBディラン・ライリーがショートパントを蹴り込むと、NZのFBスティーブン・ペロフェタが処理をミスする。転々としたボールをFB山中亮平と山沢が追い、最後は山沢が足でドリブルしながらトライをあげた。38分にはCTBディラン・ライリーが左タッチライン際を抜け出し、サポートした流につないで連続トライ。山沢がゴールを決めて、17-21と4点差で折り返した。

後半開始直後、再三パワフルな突進をしていたNZのWTBケイリブ・クラークが坂手のタックルを振り切ってトライし、17-28となる。その後は日本がディフェンスで粘り失点を防いだ。ラインアウトのNZボールにもプレッシャーをかけ、モールの前進も許さない。「日本のディフェンスはラインスピードが速く、攻撃の時間とスぺースを奪われた。加えて、きょうの日本はフィールドの横幅全体をカバーし、バックフィールドも守ることができていた」(SOリッチー・モウンガ)。

ワーナー・ディアンズ

後半16分には、LOワーナー・ディアンズが相手SHフィンレー・クリスティーのキックをチャージし、そのままキャッチすると約40mを走り切ってトライを奪う。身長202cmの独走を大声援が後押しした。これでスコアは、24-28。ワンチャンスで逆転可能な点差に食らいつく。21分、NZのNO8ホスキンス・ソトゥトゥにトライされて24-35と差をつけられたが、日本は崩れなかった。後半36分には中盤のディフェンスで坂手が猛タックル。ミスでこぼれたボールを交代出場のゲラート・ファンデンヒーファーが蹴り、それを猛然と追いかける。そのままボールをキャッチしたモウンガを倒して反則を勝ちとり、チャンスが広がった。その後の連続攻撃で姫野がトライ。31-35として再び勝利の可能性が膨らむ。

リポビタンDチャレンジカップ2022 ラグビー日本代表テストマッチ

【ハイライト動画】日本 vs. ニュージーランド(10/29)

好プレーのたび盛り上がるスタジアムは日本代表選手の奮闘を支えていた。自陣から攻める日本代表だが、最後はペナルティーを犯し、PGを決められてノーサイド。31-38と7点差で敗れた。オールブラックスのサム・ケインキャプテンは言った。「タフな試合だった。日本には、ラインアウト、ブレイクダウンでプレッシャーを受けた。ただ、さまざまな状況で落ち着いてプレーできたので勝てたと思う」。これまで日本代表に大勝していたNZのキャプテンが勝因を語らなくてはいけないことこそ、日本代表の成長の証だった。

獅子奮迅の活躍だったリーチは「めっちゃ疲れました。全力タックルの連続だったから」と少し誇らしそうに語った。「細かいミスが失点につながったけど、チームとしてはいい方向に向かっています。ディフェンスもアタックも良かったし、あとは整備するだけです」。ラグビー王国の誇り高き代表オールブラックスと接戦。ミスでトライを獲り逃すシーンもあったが、スクラム、ラインアウトで互角に戦い、80分間粘り強く戦い抜いた。そして、選手たちは心底悔しそうな表情を浮かべた。10年前には想像もできなかったレベルに日本代表は達しているということだ。さらに成長し、次は勝利で世界を驚かせてもらいたい。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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