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サクラフィフティーン、大会総括会見。レスリー・マッケンジーHCは「15人制はもっともっとやれる」。ラグビーワールドカップ(女子)
ラグビーレポート by 斉藤 健仁勝ち点をあげられなかったが確かな成長を見せた
女子ラグビー15人制世界一を決める「ラグビーワールドカップ2021」、予選プール3連敗で大会を終えた「サクラフィフティーン」こと、女子ラグビー日本代表が10月24日(月)、オンラインで総括会見を開いた。登壇者は浅見敬子NTD(ナショナルチームディレクター)とレスリー・マッケンジーHC(ヘッドコーチ)の2人だった。
サクラフィフティーンは予選プール初戦のカナダ代表戦(●5-41)こそ大敗したが、アメリカ代表(●17-30)、イタリア代表(●8-21)とは接戦を演じた。しかし、勝ち点を挙げられず全体12位で大会を終えた。
浅見敬子NTD
浅見NTDはまず、「チームとしては目標としていたトップ8は達成できなかったし、1勝もできなかったことは残念に思っている。フィジカルで大きなギャップがあった中で、自信を持って戦えたことは誇りに思います。プレーの中身は成長していたし、1試合1試合伸びていたことがパフォーマンスに出ていた。1試合、1試合、選手スタッフが懸命にやってくれた。私自身誇りに思うチームだし、ニュージーランド戦も含めて4試合で、素晴らしいチームになったと感じています」と話した。
浅見NTDはマッケンジーHCに関しては「選手を丁寧に見てくれて、言葉の壁がある中、よくコミュニケーションとってくれていた。2017年のワールドカップはケガや負傷が出たが、今大会はほとんどケガ人がでなかった。2017年以降、どれだけ選手層を厚く、フィジカルの強いチームにするかがポイントだった。レスリーさんがコンタクトに自信を持てるように、丁寧にこだわってくれた。そのチームカルチャーが選手のマインドを大きく変えてくれた」とその手腕を評価した。
気になるマッケンジーHCの去就についてだが、浅見NTDは「2019年1月からワールドカップまで、現体制になってからの道筋、何が結果としてよかったのか、何が上手くいかなかったのか。コロナの影響もあるが、しっかり分析して評価していかないといけない。選手やヘッドコーチから(イタリア戦後)試合経験、経験値で(他の国と)壁を感じたという言葉があったが、それは間違いない。レビューとして客観的に意見をいただきながら、代表強化部門として見据えていきたい」と話すにとどめた。
2025年のワールドカップは3年後に控えており、来年から新しい国際大会「WXV」が始まる予定もある。浅見NTDは「毎年しっかりやっていって、3年後のワールドカップに向けて強化を進めていく必要があります。今大会は1年多かったことが間違いなくプラスに働いた。次の大会は1年少なくなったので、我々はどうやっていくか、大きなところ。現体制の強化の内容を振り返って、次に進むことをしっかりやっていきたい」と語気を強めた。
マッケンジーHCとの契約は今のところ今年一杯。現段階では決まっておらず、まずはレビューをしてからの判断となるようだ。
レスリー・マッケンジーHC
昨晩はみんなでカラオケに行ったというマッケンジーHCは、まず、日本語で「(気持ちの切り替えは)全然できません!」。そして、「正直、心の切り替えはあと1~2週間かかると思います。このチームの強化のプログラムに携わって、そのプログラムでの選手たちの発展にすごくプライドを感じている。結果を見るとベストを出して、こういう結果になり、やるせなさというフラストレーションもありますが、そう思う分、情熱があった。チームに対する気持ちは大きいし、その分、いろんな感情が今、私の中にあります」と話した。
ワールドカップでポジティブに感じた面を聞くと「イタリア代表戦のディフェンスが素晴らしかった。イタリアは(大会直前に)フランスに勝って、(世界ランキング)2位、3位を争う素晴らしいチームです。経験もフィジカルもあるイタリアに対して効果的にディフェンスができた。ハーフタイムにも選手に『ワールドクラス(のディフェンス)だよ!』と声をかけました」と破顔した。
フィジカルとアタックは課題を残した
しかし、カナダ代表、イタリア代表とは接戦を演じたが、1試合平均1.7トライと決定力のなさが響いた。アタックで攻め急いでミスをしたり、プレッシャーがあったりしたのでは?という質問に対して、「2つとも、選手たちは自問自答していたし、自覚していた。15人制のゲームの経験値がまだまだ足りない部分がある」。
「国内でどのくらいのコンペティションのレベルでやれるのかが大きい。そういう環境でミスをして、自ら学ぶことを繰り返してやっていく。そしてテストマッチに向けて準備していくことが少なからずある。テストマッチはすごく大きなプレッシャーの中でパフォーマンスを発揮できるかにある。15人制の経験をどれだけ積めるか、積めないかが結果などに反映してくる」と話した。
さらにカナダ出身の指揮官は「15人制はもっともっとやれるし、もっと選手たちを15人制のプログラムに参加させて、どういったものが大事か、もっと明確に打ち出すことがワールドカップの結果にもつながっていくし、結果の意味にもつながっていく。それが、今後のサクラフィフティーンの成長につながる」と語気を強めた。
マッケンジーHCはサクラフィフティーンがワールドカップでベスト8に入るためには、国内外でのさらに試合経験を積むだけでなく、フィジカル強化も求めた。
「チームとしてはフィジカルの足りなさが目に見えたと思います。フィジカリティーと一言で言う中で、もっと力強く、もっとパワフルに、もっと動けるようになれると思っている。チームを強化する中でもっと考えていくべきです。次、その次のサイクルに向けて、もう少しサイズのある選手を発掘してリクルートしていくことをやっていかないといけない。日本の女子ラグビーがフィジカリティーを上げるために、フィジカリティーな選手を求めています、ということはもっと言っていいことだと思います」
南早紀キャプテン
2019年から一緒に戦ってきたスキッパーPR(プロップ)南早紀選手について聞かれるとマッケンジーHCは「いつも誠実に私にもきちんと向き合って、人の話を聞けるし質問できる。人間性が素晴らしかった。願わくはキャプテンとしての役割に誇りを持ってほしい」。
「彼女だけでなくて、スコッド全体として、次へのステップや今後の女子ラグビーをキャンパスに描くのであれば、どこへ向かっていくのかと、何を描きたいのか、きちんと見て、考えていくことが大事です。それをやる上にあたって、南主将の経験やこれまで得たことが、そこに価値をもたらしてくれることは確実だと思うので、そういうことをやっていってほしい」と目を細めた。
女子ラグビーワールドカップ2021 ニュージーランド大会 プールB
【ハイライト動画】日本 vs. イタリア
今回のサクラフィフティーンは23,24歳の若い選手が多く、その経験を持って3年後のワールドカップに出場できる可能性のある選手が多い。厳しくも温かい目で指導してきたマッケンジーHCは「日本代表には若い選手がたくさんいるが、ポイントは今回の大会でどんな気づきを得て、持ち帰って消化してつなげていくか」。
「チームはもっと強くならないといけない、パワフルになり、ゲーム理解を深めて、マネジメント力も高めていかないといけない。そういうことをやっていく中で、今回の気づきの中で選手たちが個々にやれるかやれないか。基本的には素晴らしくてエキサイティングな若い選手がたくさんいるので次を楽しみにしていただいてもいいかと思います」と、さらなる成長に期待を寄せた。
2019年1月に発足したサクラフィフティーンのレスリー体制は一段落したが、2017年ワールドカップよりも確実に世界に近づき、戦えるシーンが多くなったことは誰の目にも明らかだろう。チーム、コーチ陣、そして個々の選手が次の大会こそベスト8に出場するため、今大会で得た気づき、経験をどう次につなげていくことが欠かせない。「サクラウェーブ」という大きな波こそ引き起こせなかったが、確かな成長、進歩を遂げた大会となったことは間違いない。
文:斉藤健仁/写真:WORLD RUGBY/Getty Images
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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