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勝敗は劇的な「逆転サヨナラPG」(ペナルティゴール)で決まった。
10月2日(日)に埼玉・セナリオハウスフィールド三郷で行われた関東大学リーグ戦の注目カードは、後半48分までドラマチックな展開が続いた。
絶対に負けられない――。昨季リーグ戦3位ながら今季白星がない大東大は必勝態勢。
しかし伝統のモスグリーン軍団はこの日、不測の事態に見舞われた。
前半8分に攻守のキーマンの一人であるNO8リサラ・フィナウが負傷退場。さらに両共同主将(FL吉瀬航汰、FB青木拓己)も前半に途中交代となるハプニングに見舞われた。
しかし前半は大東大が21-0とリードした。
まず大東大には局面を打開できる大駒がいた。LOサイモニ・ヴニランギだ。
フィジー出身の4年生は開始17分、交代したフィナウに代わってナンバーエイトの位置に入ると、スクラムから単独キャリー。相手BKを次々に蹴散らして先制のグラウンディング。ゴール成功で7点を先取した。
22歳のヴニランギは躍動した。
相手2本目のラインアウトでは196センチの体躯、リーチを活かして競り合い、ミスを誘った。
また、チームが前半25分に2種類のキック(ハイパント、クロスキック)を組み合わせて2トライ目を奪った後は、ジャッカルで3トライ目の足場を築いた。
大東大はキーマンの負傷退場にも対応できる選手層があった。
前半30分の3本目のスコアラーは、負傷の青木拓己に代わって投入された二十歳の神田永遠だった。
ヴニランギのジャッカル、展開からのWTB伊藤和樹の突破、SO落和史の仕掛けとSH稲葉聖馬の鋭いパス――。最後は神田がトライで締めくくり、大東大が3連続トライで21-0。リードを広げた。
一方の東洋大は前半、キックの処理に苦しんだ。ラインアウトも前半やや精彩を欠いていたが、スクラムは堅調。
前半35分頃にはスクラムでこの日初の強制ペナルティを奪取。PR山口泰雅、HO谷名樹、PR石川槙人のフロントローに加えてバックファイブ(後列5人)の加勢も強烈だった。
ただ東洋大は前半終了前、立て直したラインアウトからモール勝負をかけるが、ここはオブストラクションで得点ならず。勝負所でスコアできず、前半を無失点で折り返した。
しかし東洋大は後半に猛追する。
ラグビー 関東大学リーグ戦2022
【ハイライト動画】東洋大学 vs. 大東文化大学
後半開始からラインアウトで2連続のノット・ストレートを犯したものの、FLタニエラ・ヴェア、CTB大島暁のダブルタックルから相手を誘発するなど、全員のハードワークで主導権を渡さない。
大東大も後半7分、決定的なラインブレイクに対して途中出場の18歳、ジョセフ・ドモニが懸命に戻りタックル。SH稲葉聖馬、神田永遠がダブルでジャッカルを決めた。
風上の大東大はクレバーにボックスキック、ロングキックで敵陣に入ると、相手ペナルティから後半15分にPG成功。リードを24点に広げた。
しかし24点ビハインドの東洋大が、ここから見事なカムバック。
1本目のトライの起点はハイパント。
大東大が深いハイパントを捕球できず背後に転がり、蹴り出したボールが東洋大のチャンスに。ここから後半19分にモールで1トライ目(ゴール失敗)。
残り時間は20分。ビハインドは19点だ。
東洋大、後半29分のトライは圧巻の「チームトライ」だった。
敵陣10m付近のラインアウトからSH神田悠作の配球を起点として猛攻。相手反則によるクイックスタートで迫ると、接点への仕掛けからCTB梅村柊羽がグラウンディング。
大東大相手に力で押し切り、インゴールを奪った。これで12点差(12-24)。
風下の東洋大は自陣からボールキープ。すると後半35分、正確なキッカーでもある二十歳のWTB杉本海斗が自陣からラインブレイク。
石本拓巳が押さえ、約70mを切り返すスペシャルなトライが決まった。
ビハインドはついに5点差。残りは5分だ。
最後に魅せたのはフォワード陣だ。
まずSH神田がラインDFの間隙からランですり抜け、観客席を沸かせるロングゲイン。ゴール前まで迫り、ペナルティで勝負のスクラム選択。
ここでFW陣が有無を言わせぬ猛プッシュ。大東大は3連続の強制ペナルティを犯し、3本目でNO8梅村が押さえ、歓喜の同点ST(スクラム・トライ)。ゴール成功で26-24だ。
ついに24点差をひっくり返した東洋大。強烈なスクラムもさることながら、ラインアウトを立て直した修正力、一発で獲りきる準備力と遂行力も光った。
しかし、最後にドラマは待っていた。
東洋大は何としてもトライ後のキックオフボールを確保したかった。が、これを大東大が確保。モスグリーン軍団がしぶとく攻撃を重ねると、東洋大陣内で田崎富レフリーの笛。
東洋大は自陣中央で、痛恨のノット・ロールアウェイ。
後半48分。ここで大東大はPGを選択。決まれば歓喜の今季初勝利へ。外せば東洋大が開幕3連勝--。
CTB戸野部が右足を振り抜く。楕円球は、Hゴールの中間を射貫いた。
最終スコアは27-26。大東大が劇的なサヨナラPGで今季1勝を手にした。
今季初黒星となった東洋大は、敗戦したが7点差以内だったためボーナスの勝点1を獲得した。
プレイヤー・オブ・ザ・マッチは強風の中でプレースキック5本を全成功させ、逆転PGも放り込んだCTB戸野部謙。岐阜工業出身のタフガイが文句なしの受賞となった。
全勝だった東洋大と法政大学が負けた関東リーグ戦は、これで3戦全勝の流通経済大学以外すべてのチームに黒星がついた。
混戦の度が深まり、ファンにはより面白くなった関東リーグ戦は10月第2週、全チームが休みの週(BYE)となる。
1勝2敗となった大東大の次戦は10月16日(日)、同じく埼玉・三郷で今季4戦目を迎える。相手は関東学院大学から1勝を奪った立正大学(1勝2敗)だ。
これで2勝1敗となった東洋大も16日(日)、こちらも埼玉・三郷の第2試合として、1勝2敗の日本大学と激突する。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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