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帝京大学 vs. 青山学院大学
前半40分を終えてのスコアは5-0。1週前の早稲田大戦で善戦の要因となった青山学院大の出足鋭いシャローディフェンスにたびたび差し込まれ、帝京大は立ち上がりからエラーを重ねた。接戦のバトルで優位に立ちながら取り急いでミスで終わるシーンが続き、20分過ぎのウォーターブレイクまで0-0と試合は膠着する。
ようやく点を刻んだのは24分。ペナルティ獲得からゴール前でマイボールラインアウトを選択すると、FWがモールを組んで左コーナーになだれ込む。しかしその後はふたたび相手の好タックルに攻めあぐねる時間が続き、前半終了間際にはSO高本幹也が危険なタックルでシンビンに。ペースをつかめないまま、5-0でハーフタイムを迎えた。
チームの地力が問われる展開。そして、まさにここから、帝京大の真価は存分に発揮された。
まずは後半開始2分、相手陣22mライン付近のラインアウトからBKへ展開し、10番の位置でパスを受けたWTB小村真也が鋭いステップで走り抜けて進撃の号砲を鳴らす。47分にはシンビンから戻ったSO高本が、前へ出てくる青山学院の防御ラインの裏のスペースへ絶妙のコントロールでキック。タイミングよくチェイスしたFB谷中樹平が左中間に押さえ、またたく間に17-0とリードを広げる。
青山学院大もここで気持ちを切らさず、CTB金澤春樹の巧みなキックを起点に敵陣へ攻め込んだが、帝京大はあわてることなくしっかりと体を当てて危機の芽を摘み取る。そして58分、ペナルティ奪取→ゴール前ラインアウトからFWがモールを押し切ってトライ。これでゲームの流れは完全に真紅のジャージーの側へと傾いた。
以降は剛柔織り交ぜた多彩なゲームメイクで主導権を掌握。本来の重厚感ある攻守で着実に得点を重ねていく。終わってみれば後半だけで7本のトライを挙げ、52-0までスコアを伸ばしてフルタイムを迎えた。
思うようにいかない展開の中、浮き足立つことなく流れを引き寄せる決定的な要素となったのは、終始相手を圧倒したスクラムだ。圧力をかけるだけにとどまらず、完全に押し切って再三ペナルティを獲得できたことが、80分を通してゲームメイクの安定を呼んだ。昨季の大学選手権優勝の原動力となったチームの看板は、今年も健在といえそうだ。
ラグビー 関東大学対抗戦2022
【ハイライト動画】帝京大学 vs. 青山学院大学
個のパフォーマンスで輝きを放ったのは、FB谷中だ。落ち着いたフィールディング、精度の高い左足のキックに加え、腰の強いランや果敢なハイボールキャッチでもたびたびチャンスを作り、2トライを挙げる活躍を見せた。非凡なフットワークで同じく2本のトライをマークしたWTB小村真也も、さまざまなシーンに能力を披露して強い印象を残した。
そうしたBKの活躍を支えるFW陣の献身も、忘れてはならない。この日マンオブザマッチに選ばれたFL奥井章仁は、相手防御がそろっている局面でもひるまず体を当てにいき、何度も突破口を開いた。豊富な運動量と好機への嗅覚を生かしボールキャリーでよく前に出たNO8延原秀飛、スクラムやモールの軸として推進力を発揮した高井翔太、上杉太郎の両PRの存在も光った。
「前半はなかなか思うようにプレーできず難しいゲームになりましたが、最後は0点に抑えて勝つことができた。次につなげていけるゲームになったと思います」(相馬朋和監督)
青山学院大も前に出るディフェンスで前半を失トライ1で折り返すなど、今季の取り組みの成果を随所に感じさせた。最終的に大きく点差を開けられた最大の理由は、ペナルティの多さ。圧倒されたスクラム以外にも不用意なハイタックルやオフサイドでせっかくの好機を逃すシーンがあり、健闘しながらも流れを引き寄せるまでには至らなかった。
それでも前節の早稲田大戦に続き、前半互角の勝負を演じられたことは、チームにとって確かな自信になるだろう。スクラム、ペナルティと課題は明白で、防御とキックに焦点を絞ったシンプルなスタイルには一体感があった。まだ対抗戦は始まったばかり。こちらも今後の戦いに期待を抱かせた。
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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