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2023年を目指すSH流大(左)とSO田村優
10月の試合月間に向けて、9月5日から大分で合宿し、18日には宮崎に移動して第3クールを迎えるラグビー日本代表。
現在52名の代表候補選手がしのぎを削り、40名の枠を争っている。2019年ワールドカップでは主力としてハーフ団を組んだベテランのSH(スクラムハーフ)流大(東京サントリーサンゴリアス)、SO(スタンドオフ)田村優(横浜キヤノンイーグルス)の2人の今に迫った。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
今夏、SH流は共同キャプテンの1人に選ばれたが、合宿初日で体調を崩してしまい、その後、宮崎、東京で計10日ほど入院した影響もあり、試合出場は叶わなかった。7月、8月と徐々にコンディションを上げて、9月12日の第2クールから全体練習に参加した。
「ラグビーの感覚は戻ってきているが、フィットネス、体力面は100%に届いていない。あと10%、フィットネスを上げていかないと、長い時間走って息が切れている中で、いいパフォーマンスができないと思う。オーストラリアAの1戦目から出られるように練習から良いパフォーマンスをしたい」。
流はSO(スタンドオフ)李承信(神戸スティーラーズ)、SO/CTB(センター)中尾隼太(東芝ブレイブルーパス東京)とは、練習で初めてハーフ団を組んだという。流は2人を「承信に関してはポテンシャルがあって、すごく思いっきりのいいプレーをしている」。
「フランス代表戦を見てもわかるように、21歳でもあれだけのパフォーマンスができるのは彼のポテンシャルもそうだし、彼のやってきた努力が今の時点で発揮できている。合宿でもチームを引っ張ってアタックをリードしていて素晴らしい」。
「隼太に関してはリーグワンで、雨の味の素スタジアムでサントリーが完敗したときに、素晴らしい選手だなと印象を持った。(日本代表でも)その通りで、スキルも持っていますし、コミュニケーション能力がすごくあるので、ハーフで入ったときに彼が10番に入るとプレーしやすい」と高く評価した。
第2クールから全体練習に参加した流大
また、李やLO(ロック)ワーナー・ディアンズ(ブレイブルーパス東京)ら若手選手が増えたことについて、SH流はこう話した。「21歳、22歳で代表の試合、練習でいいプレーできているのは、ポテンシャルと素晴らしい才能だと思います」。
「若手がチームに入ってきやすくなったり、一緒にレビューしたりするのは、今までいたメンバーが上手く支えているところでもあるので、僕自身もうまくつなぎ合わせていきたい。日本代表のメンバーは変わっても文化は続いていますし、夕方、練習終わった後、治療部屋にパソコンがいっぱいあるんですが、若い選手たちが一緒に集まってビデオを見ている。以前もやっていたが、若い選手が率先してやっている」。
ワールドカップまであと1年。SH流は「今はオーストラリアAの3試合と、その後のテストマッチに向けて、という意識が強いですが、若い選手が増えて、高い強度でプレーできる選手が増えて選手層が厚くなってきたので、前回大会より手応えはあります。どんなメンバーが出ても、一貫性のあるパフォーマンスができることがキーになる。リーグワンでも選手個々人が自覚を持って、自分のパフォーマンスを出し続けることが大事だと思います」と自信をのぞかせた。
30歳になったSH流は2023年ワールドカップで代表引退を決めている。「もし、代表に招集していただいたとしても絶対に行くことはない。僕の中で前回のワールドカップが終わった後、もう1大会、覚悟を持ってやると決めた。指導者なのか、プレイヤーなのかわからないですが、ラグビーに関わっていくので次の準備をしたい」と先を見据えた。
過去2大会連続でワールドカップに出場したSO田村。今夏は代表予備軍にあたる「NDS」(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)からのスタートだった。NDSをキャプテンとして引っ張り、ウルグアイ代表との第1テストマッチに出場した。さらに、コンディション不良の選手が続出し、フランス代表との第2テストマッチは日本代表に招集され、後半途中から試合に出場した。
SO田村のキックをチャージにいくLOワーナー
そして、今秋は最初から日本代表候補として招集され、2週目はアタック&ディフェンスを行うグループに入り、SH流とハーフ団を組んでコーチ陣へアピールしていた。
「途中合流したフランス代表戦以降、ラグビーをしっかりやるのは、この合宿に来てから初めてだったので、徐々に感覚を戻しながら、チームのプレーを覚えていくという感じです。代表から離れていた分、身体はきついですが、メンタル的にはフレッシュです、感覚を戻しながら、高いレベルでラグビーできるような準備をしています」。
現在はSOのポジションで、李、中尾、山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)とのライバル争いを演じている。「ジェイミー(・ジョセフHC)からも言われていますけど、僕自身は『今、SOの中で最下位』だと思うので、がんばらないといけない。チームに良い選手がいるにこしたことはないと思うので、僕はチャレンジしてがんばっていかなければいけない」。
「若い選手も、歳を取った選手もいますけど、練習から自分でチャレンジしていくのがいいと思っています。なかなか、歳を重ねていくと、そういうのも難しくなってくることもあると思うので。モチベーションが保てているのはいいことなんじゃないかな」。
33歳のベテランの田村だが、若いSO李などにアドバイスをすることもあれば、聞くこともあるようだ。「だいぶ代表から離れていて、逆にいろいろ聞いています。分からないことが多いので、という感じです。僕はチャレンジするしかないので、毎日がんばって覚えています。自分の肌感覚的なところと、チームのプランをすり合わせていきながら、自分の良さを出していくという感じです」
若手が増えたことに関しては「単純に人数が多いので、みんなよりアグレッシブという感じもありますし、今、日本代表やラグビー界ってプロフェッショナルな方向になっていっている。選手の意識だけですけど、良い変化にしているんじゃないかなと思います」と話した。
3大会連続ワールドカップ出場を目指すSO田村
逆にベテランと一緒に練習することに関しては「(この夏に)ハル(立川理道)とやったときもうれしかったし、リーチ(マイケル)や山ちゃん(山中亮平)ともやれてうれしい。ラグビー人生というか、キャリアとしてはもうもうそろそろだと思うので、そんな中でもこういう場所で、歳の近い選手たちと一緒にラグビーできるのは幸せだと思うので、うれしいですね」としみじみと語った。
3度目となる2023年ワールドカップに向けて、SO田村は「まだ先ですが、自分の中で、そこが目標になるのか、何が目標になるかわからないですが、目標が決まったらそこに向けてがんばれるというか。考える時間ももらえましたし、これから考えるようにしていこうかな」とハッキリとした明言は避けた。
ただ、練習から高いパフォーマンスを発揮していたように、コンディションは徐々に上がっていることは間違いない。「代表に必要とされているうちは……というのもありますし。あとはケガが治って来たというのもあります。休めたというのはあります。モチベーションは動けるのでまだある。がんばれないなと思ったらやめます。今はがんばれるので、まだ動きますし、がんばろうかな」。
「SOの中で一番下だ」とジョセフHCに毎日、言われているというSO田村は「自分はすぐスイッチが切れてしまうので、毎日、自分がチャレンジするという状況にある方がいい。それが1日1日、積み重なっていけば、いいものになるんじゃないかという自信もあるので、以居心地は悪くないですね」と手応えも口にした。
30歳のSH流、33歳のSO田村のベテランハーフ団は、若手選手と切磋琢磨しつつ、自身を高めながら1年後のワールドカップを見据えている。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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