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齊藤誉哉(明治大学)
「筑波大学さんがすごく良い準備をしてこられて、それに対して、自分たちのミスから苦しい試合になったと思います」(明治大学・WTB石田吉平主将)
試合序盤から、筑波大学の準備力は光っていた。
9月10(土)に東京・駒沢で行われた関東大学対抗戦Aグループの開幕戦。
昨季準優勝の明大は、負傷者や体調不良者を抱えながら今夏を乗り越えたが、対抗戦初戦で「非常に緊張感のある相手」(明大・神鳥裕之監督)の筑波大と対峙することになった。
時に筑波大は、熟練の狙撃手のように、狙い定めた標的を鮮やかに仕留める。振り返れば2015年度、V7を達成する帝京大学の学生相手の公式戦連勝を「50」で止めたのも筑波大だった。
当時のヘッドコーチ職から指揮官となった嶋崎達也監督は、この重要な一戦を前にして「勝つ準備をしてきました」と闘志をのぞかせていた。
土曜の昼過ぎに3809人を集めた一戦で、しかし先制点を挙げたのは、奇襲を成功させた明大だった。
それまで紫紺ジャージーはSH萩原周のダイレクトパスから、幾度も接点にフォワードが走り込んでいた。
ところが前半5分、ゴールライン目前で仕掛けたのはバックスのSO伊藤耕太郎。ブラインドの位置から駆け込み、先制のトライ。2フェーズ前でロングゲインしたFL森山雄太のデコイ(おとり)のランも利いた。
筑波大の準備力を感じさせるプレーの連続は、この失点直後だった。
失トライ後のリスタート、筑波大のキックオフボールが相手フォワードの戻りにくい位置に落ちる。すると相手の捕球直後、WTB大畑亮太が猛タックルをかまし、すぐさま2人掛かりで圧力を加えた。
強みとするブレイクダウン・ワークで、見事に攻守交代。さらに相手反則から得点機のラインアウトを迎える。
谷山隼大(筑波大学)
ここで筑波大はジャンパーのパスから別働隊のモールで突進。最後は最後尾のNO8谷山隼大が勝負する「三段構え」のような複層攻撃で、最後はFW戦から対抗戦今季初トライ。前半9分に同点(7-7)とした。
「今日が開幕戦だと思って、色々準備して来たのですが、やはりプレッシャーもあって流れに乗れませんでした」(明大・SO伊藤)
明大は、オーバーラップ(数的優位)でのハンドリングエラー、敵陣ゴール前ラインアウトでのノットストレートなど、得点機でのミスが続いてしまう。
一方の筑波大は、2連続のペナルティゴール失敗(前半24、34分)もあってスコアは足踏み状態となったが、同36分のPKでは一転トライを狙い、これが吉と出た。
浅見亮太郎(筑波大学)
ラインアウトモールは崩れたものの、CTB浅見亮太郎がFW密集地へ走り込み、リロードの遅れていた相手FWを次々にかわし、振り解き、殊勲の2トライ目を奪取したのだ。
しかし5点リード(7-12)を奪われた明大も反撃する。
武器であるフィットネスを土台としたワイド攻撃は大迫力。前半39分には左隅を猛進するFL森山がふたたび圧巻のキャリー。大きく押し込むと、ワイド展開からCTB齊藤誉哉がフィニッシュした。
明大は前半42分にも敵陣好機でこの日2度目のノットストレートがあったが、プレー再開後のスクラムで筑波大のコラプシングを誘発。
ここでスクラム勝負に固執せず、明大はSO伊藤にパスアウトして難なくトライ。こちらも入念な準備を感じさせるプレーで、3トライ目を決めた。
前半の明大のハンドリングエラーは8回。ラインアウトは成功率50%(6回中3回成功)に落ち込んでいたが、それでも7点リード(19-12)で試合を折り返す地力がメイジにはあった。
後半に入ると、ラインアウトの攻防で劣勢だった明大が反抗。筑波大にミスが目立ち始める。PR中村公星はラックでファイトして攻守交代をたぐり寄せた。
すると筑波大の1番、PR木原優作主将もハードワーク。
前半にジャッカルも決めたPR木原主将は後半10分、鋭い出足で相手のスローフォワードを誘う。
ここから筑波大がすぐさま速攻。明大はWTB秋濱悠太の献身的なタックル、FW戦で再三ピンチを防いだものの、筑波大は19歳のCTB浅見のトライで押し切った。
ラグビー 関東大学対抗戦2022
【ハイライト動画】筑波大学 vs. 明治大学
ゴール成功でスコアは19-19。一進一退のハイレベルな開幕戦だ。
しかし最後は、「メイジタイム」と位置づけてきた終盤の活動量で、明大が凌駕した。
筑波大のPR木原主将は試合後「一瞬の隙を突かれて取られたり、後半20分過ぎから切れてしまった部分など修正していきたいと思います」と反省を口にした。
その4分後、筑波大にPGで4点差(22-26)に迫られた明大だが、この窮地で、後半開始から投入されていたWTB石田吉平主将が魅せた。
キックカウンターから切れ味鋭いラン。ここで相手のハイタックルを引き出した。さらにCTB廣瀬雄也がこの日2度目の「50:22」で形勢逆転に成功。
このキックから敵陣へ入り、迎えた後半37分。
勝負の敵陣ラインアウトで、修正力を見せたHO松下潤一郎のスローイングから、2フェーズ目でSH萩原がラックサイドを突破。WTB石田主将が勝負を決める5トライ目。
役者たちが値千金の仕事を果たし、激戦は33-22で決着。明大が10点差の白星を掴んだ。
明大・神鳥監督の「タフなゲームだったなあという印象です」という言葉は偽らざる実感だろう。
「筑波大学さんがしっかりしたラグビーをやって来るのは分かっていましたので、最後の最後まで諦めない姿勢を見せようと臨みました。我々としては、まだまだ伸び代があると感じるゲームでした」(明大・神鳥監督)
後半の最終盤、筑波大は自陣ゴール前に攻め込まれたが、ダメ押しのトライを許さなかった。
敗色濃厚の状況になっても戦意が落ちない、不屈の闘志がそこにあった。
「筑波のテーマとしては、しっかり全員で本当に長い時間、最後まで身体を張って闘って行こうということでした」
「準備してきたので、できたことも多くありましたが、いくつか足りない所もありました。高いレベルの相手に経験できる事がなかなかないので、本当に選手は、絶対にここから学んでくれると思います」(筑波大・嶋崎監督)
最後まで身体を張って闘った筑波大。
次戦の相手は、同じく一戦必勝の執念を持つ強豪、1勝の早稲田大学だ。9月18日(日)の群馬(アースケア敷島サッカー・ラグビー場)が舞台となる。
まさに「辛勝」――。しかし絶好調ではなくとも勝ちきる自信を手にした明大は、一敗の日本体育大学と、群馬で開催される「早大×筑波大」前の第1試合で激突する。
手に汗握る好ゲームで幕を開けた関東大学対抗戦。今年はどんなドラマが待っているのか。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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