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佐藤健次(早稲田大学)
9月10日、11日に開催された関東大学対抗戦Aの開幕節は、昨季の上位陣が順当に勝ったが、10日、駒沢オリンピック公園陸上競技場で行われた2試合は、挑戦者の健闘で観客席も固唾をのんで見守る展開となった。第1試合は昨季6位の筑波大学が3位明大を追い詰め、ノーサイド直前まで勝敗が覆る可能性のある激闘を繰り広げた。そして、第2試合も拮抗した戦いとなる。
昨季2位早大と7位青学大の一戦は、午後3時、早大SO守屋大誠(2年)のキックオフで始まった。立ち上がりから早大がボールをキープして攻めるが、青学大もディフェンスで粘る。前半13分、早大FL村田陣悟(3年)がインゴールに入ったが、青学大のディフェンダーを押さえさせず、ゴールライン・ドロップアウトになるシーンもあった。それでも早大は17分、ゴール前のラックからSH宮尾昌典(2年)がボールを出し、守屋、CTB野中健吾(1年)、CTB松下怜央(4年)にパスが渡って先制トライをあげる。
7-0と早大がリードしたが、青学大はFL八尋祥吾(1年)がターンオーバーを勝ち取る好タックルを見せ、ワイドに展開されたときも、タッチライン際でFB田口公暉(4年)、WTB榎本拓真(2年)が思い切りよく前に出てタックルを決めるなどピンチを防いだ。後半32分にはCTB桑田敬士郎(3年)がPGを決め、7-3と差を詰めて前半を終了する。
相良昌彦主将(早稲田大学)
LO江金海キャプテンが「風上の後半にエリアをとって攻めるプランだった」と話した通り、青学大はできるだけ早大陣で戦おうとした。しかし、後半4分、ラインアウトからモールを押し込まれ、早大HO佐藤健次(2年)にトライを奪われる。以降も粘り強く戦うのだが、次第にディフェンスが甘くなり、早大のCTB野中、NO8相良昌彦キャプテン(4年)らにトライされ点差を広げられた。
前半こそ苦しんだ早大だが、後半は安定したセットプレーを軸に5トライを奪った。苦しい試合だったようにも見えるが、大田尾竜彦監督は「安心して見ていられた」とコメントした。試合を通して反則は少なく、ディフェンス面も安定感があった。大田尾監督が第一の課題にあげたのはブレイクダウン(タックル後のボール争奪局面)だ。「2人目、3人目の仕事が課題です。ここで前に出られないので、テンポよく攻められないわけです」。キックを蹴ったあとの追いかける動きについても「甘い」と指摘した。ただし、現在のチーム状況については意図的に仕上がりを遅らせているという発言があった。「昨シーズン感じたのは、優勝するチームは秋から伸びるということです。早稲田について言えば、この時期での完成度は昨年のほうが高いです。しかし、今年の方が伸びる材料は多いと思います」。スクラムが昨季より格段に良くなり、フィジカル面も強くなっている。ベースが整った上で細部を詰めていけば、チーム力はこれから大きく伸びるということだろう。
ラグビー 関東大学対抗戦2022
【ハイライト動画】早稲田大学 vs. 青山学院大学
プレーヤー・オブ・ザ・マッチの野中健吾(早稲田大学)
この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(最優秀選手)は、早大1年の野中健吾が選ばれた。大田尾監督は「野中は状況判断が良く、ラインのコントロールが上手い。最初の松下のトライも、守屋は浅くなっていたが、野中がタメを作ってくれたからトライになった。能力を発揮してくれています」と称賛した。また、守屋についても、「彼はタックルの良い選手で、そこは良かった」とそれぞれが持ち味発揮した戦いを振り返った。
早大は3トライ差以上の差をつけるボーナス点も含めて勝ち点5を獲得。好スタートを切り、次節(9月18日)は筑波大と対戦する。一方、青学大は勝ち点を獲得できなかったが、前に出るディフェンスと、工夫した戦いは見る者の胸を打った。今後も楽しみなチームだ。次節(9月17日)は王者・帝京大に挑む。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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