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最終スコアは45-31。結果だけ見れば先発に1年生4人を含む下級生主体のメンバー構成の明治大が順当に勝利したようにも映る。しかしゲームを通してより強い印象を残したのは、敗れた朝日大だった。
キックオフ直後にライン防御のわずかなほころびを走られ先制トライを許したものの、朝日大は厳しい鍛錬の成果を感じさせる一体感ある攻守で果敢に立ち向かい、すぐに流れを立て直す。6分、WTBプスパコム・ピーラナツのPGでまず3点を返すと、11分には流れるようなBKのラインアタックから大外を崩しトライ。10-5とリードを奪ってグラウンドに緊張感を呼び戻した。
明治大もすかさず反撃に転じ、17分にスクラムからの連続攻撃でルーキーのHO西野帆平が左中間に押さえて12-10と逆転。その3分後にもラインアウトモールから西野が2本目のトライをマークし、ふたたび流れを引き寄せる。さらに31分にスクラムのターンオーバーからWTB杉本大雅、38分には圧巻の個人技でFB坂本公平がゴールラインを越え、一気に点差を広げてハーフタイムを迎えた。
前半40分のスコアは31-10。そのまま明治大が突き放すかと思わせる展開だったが、そうはならなかった。朝日大の燃え盛るようなスピリットと磨き上げてきたチーム力によって後半試合の様相はあざやかに反転し、勝負はフルタイムの瞬間まで熱を帯びた。
反撃の狼煙が上がったのは49分過ぎだ。朝日大はグラウンド中盤のキックレシーブからカウンターに転じ、この日攻守に大活躍のWTBピーラナツがバネの利いた走りでディフェンスラインをブレイク。そのまま50メートル以上を走り切るビッグランで右中間に飛び込み、チームにエナジーをよみがえらせる。
54分には敵陣22メートルライン内でのマイボールラインアウトからFWが近場でゲインを重ね、最後はNO8サミュエル・ワカヴァカがラックサイドをねじ込んでトライ。ゴールも決まって7点差に詰め寄ると、その後も気迫みなぎるタックルで明治大の攻撃を寸断し、じわじわとプレッシャーをかけていく。
大学ラグビー2022開幕直前! 菅平合宿 練習試合
【ハイライト動画】明治大学 vs. 朝日大学
そして迎えた61分。ふたたびラインアウト起点の連続攻撃でゴールラインに迫ると、ラックからFWが塊となってポスト下になだれ込みトライ。コンバージョン成功でついに31-31の同点に追いついた。
残り時間は20分ほど。勢いに乗る朝日大はなおも攻め立て、相手陣の深い位置でチャンスを作り出す。しかし気負いからか、あと一歩でトライという場面でペナルティやイージーミスが続き、勝ち越すまでには至らない。
そしてこの苦しい時間帯で底力を見せたのが、明治大だった。鋭い出足で膝下に突き刺さる朝日大のディフェンスにたびたび押し返されながらも辛抱強く攻め続け、78分にゴール前のラインアウトからFWがパワープレーで突き抜けてフィニッシュ。残り数分の土壇場で勝ち越しに成功する。
さらに朝日大の力を振り絞った猛攻をしのいで迎えた終了間際には、早いテンポで順目にボールを動かし、ブラインドサイドからライン参加したWTB關根瑞己が左中間にダメ押しのトライ。45-31とスコアを整えたところで、ノーサイドとなった。
惜しくも最後に振り切られ金星を逃した朝日大だが、闘志を前面に押し出した果敢なファイトと、15人一体の引き締まった攻守は、チームとして積み上げてきたものの確かさを感じさせた。突破力ある留学生が軸になっているものの、そのパワーに過度に頼る様子はなく、一人ひとりが献身的にハードワークする姿勢も目を引いた。14点差の敗戦を通して得た体感と手応えは、これまで跳ね返されてきた大学選手権3回戦の壁を乗り越えるための大切な糧となるだろう。
明治大は前半開始早々にあっさり先制トライを取ったことでにわかに集中力がぼやけ、かえって難しい展開になった印象が強い。相手防御のかすかな乱れを一撃で仕留め切る卓越したスキルは、あらためて逸材ひしめく学生随一の才能集団のすごみをうかがわせた。一方で単純なエラーや不用意な反則で決定機を仕留めきれず、相手の追撃を許した点は大きな反省材料だ。こちらにとっても貴重なレッスンだった。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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