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前年度の大学選手権準々決勝でのスコアは76-24。圧勝した帝京大は、その勢いのまま続く準決勝、決勝にも勝利して頂点へと駆け上がった。一方大敗を喫した同志社大は、そのひと月半後の今年2月に宮本啓希新監督が就任。名門復活を託された若き指揮官は、当時の敗因を「マインドセット。試合をする前から負けていた」と振り返る。
8か月後の再戦は、果たしてどんな戦いになるのか。ともに今季から新体制でスタートを切ったこともあって、さまざまな意味で興味がふくらむ一戦となった。
昨季の大学選手権で4大会ぶりに大学日本一の座に返り咲いた帝京大は、岩出雅之前監督から元日本代表PRの相馬朋和新監督がバトンを引き継いだ今シーズンも、関東大学春季大会のAグループを制するなどここまで盤石の歩みを維持している。夏合宿でも天理大との初戦(8月16日)に55-7で快勝すると、21日には同じ関東対抗戦グループの早稲田大を35-28で撃破。天理大にはAチームからDチームまでの全マッチ、早稲田大にもA~Dまでの4試合中Cチーム戦以外の3試合に勝利しており、充実ぶりが際立つ。
21日の早稲田大戦は、序盤の15分で0-21と大きく先行される苦しい立ち上がりだったが、そこから底力を発揮して流れを立て直し、21-21で前半を折り返す。後半は膠着した時間が続く中、7点ビハインドで迎えた59分にNO8延原秀飛のトライで同点に追いつくと、78分にSO高本幹也の個人技からSH李錦寿がこぼれ球をインゴールに押さえて勝ち越した。まだ合宿2戦目ということもあって細かいミスや反則は目立ったものの、終始追いかける展開にも浮き足立つことなく、終盤にチャンスを仕留め切って勝ち切るところに、積み上げてきた確かな地力を感じさせた。
特に目を引いたのは、コリジョン局面で相手を飲み込むようなコンタクトの迫力と、選手層の厚さだ。昨季の快進撃の原動力となった強烈なスクラムとラインアウトモールも健在。入替で途中出場したメンバーがそれぞれに持ち味を発揮してゲームに活力をもたらしている点も、チーム全体の充実ぶりを表している。
今回は早稲田戦から中2日で迎えるゲームで、さらに3日後の27日には明治大戦を控えるタイトなスケジュールでの戦いとなるが、学生随一の戦力を誇るチームにとっては、むしろ選手たちの絶好のアピールの機会といえるだろう。貴重なチャンスをものにするべく、出場するメンバーは意欲十分にゲームに臨んでくるはずだ。非凡なポテンシャルを秘めた逸材が数多くひしめくだけに、新星の台頭も楽しみにしたい。
対する同志社大は関西大学春季トーナメントを5位で終えた後、8月21日に夏合宿のファーストマッチで東海大と対戦。前半は一時リードする場面もあったが、後半最初の15分間に5連続トライを奪われ、19-58で完敗を喫した。1対1のシチュエーションでタックルを外されるシーンが多く、セットプレーでも終始圧力を受けて、テーマに掲げる運動量で動き勝つ展開へ持ち込む前に勝負を決められたという印象だった。
前年度選手権ベスト4の強豪からいきなり厳しいレッスンを受けた格好だが、全国トップクラスのフィジカリティと接点のプレッシャーをここで体感できたことは、チームにとって小さくはない意味があるだろう。ペナルティからのクイックリスタートで2トライを奪うなど、新たに取り組むスタイルのポジティブな部分が表れる場面も随所に見られた。求められるのは、あの重圧の中で自分たちのラグビーをやり切るたくましさ。こちらもこのあと中3日で早稲田大戦が組まれており、過酷なスケジュールの中でどう試練を乗り越えていくか、チームの真価が試される連戦となる。
それぞれのここまでの試合内容を振り返れば、帝京大の優位は動かない。同志社にとっては相手の強烈な圧力の中でいかに精度高くプレーを遂行し、ディフェンスの局面でしっかりと体を当てられるかが、タイトな戦いに持ち込むための前提条件となる。攻守の起点となるセットプレーの攻防も、ゲームの流れを左右する大きな要素だ。
また大型FWが前を向いてプレーする時間が増えるほど、帝京大の有利な展開になる。キッキングゲームにおける陣地のせめぎ合いと、フィールドポジションを踏まえた両校の試合の組み立てにも注目したい。
文:直江 光信
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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