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五郎丸歩、スポーツビジネスの観点から日本ラグビーの未来を語る編 ~大畑大介、大西将太郎、五郎丸歩がラグビー界について語る!~
ラグビーレポート by J SPORTS 編集部五郎丸、早稲田の大学院でスポーツビジネスの勉強中
大西将太郎:前回、セカンドキャリアの話をしましたが、今回はニュースにもなっていましたが、五郎が4月から早稲田の大学院に入学したとのことで、そのことについて聞いてみようと思います。
五郎丸歩:早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科の先輩である稀勢の里さん(第72代横綱/二所ノ関親方)から、面白いよという話は聞いていました。自分も現場で生きていくのであれば、大学院には行かなかったと思いますが、全然違う運営になった。それで今までは感覚的に物事を進めてきた部分があったし、それを言語化しないと、これからは生きていけないという思いがきっかけです。
大畑大介:元々は現役中から、そういったところに行こうというよりも、今置かれた環境の中で自分自身がスキルアップしていくために、という感じ?
五郎丸:そうですね。
大西:勉強好きやもんな、五郎。
五郎丸:大嫌いですね。
一同:大爆笑
大西:何学部?
五郎丸:スポーツ科学部で、スポーツビジネスを学んでいます。
大畑:一緒に入ったのは錚々たるメンバー(サッカー元日本代表の川口能活氏、福西崇史氏ら)だよね?そこだけでも吸収できるものが一杯あるよね。
五郎丸:全く違う世界で活躍されてる方が多いので、すごく刺激的ですし、1つの議題に対して、いろいろな角度から話ができるので、すごく面白いですね。
大畑:学生の時のように、同じような学力や環境の人たちが集まるのとは違って、大学院なのでいろいろなキャリアを持って入ってきて、そこでお互い交流しあうことで、違う学びというか、刺激がある?
五郎丸:大学院に来られる方は、その道に興味ある方がいらっしゃって、すごく面白い。自分の大学時代は本当につまらなかった。つまらないというのが正しいか、わからないですが、練習のためにどう体力を温存しようとか、そっちの方が主だったので、行くのも「きついなー」とか、結構ネガティブな感じだった。
今は興味があることで、その興味に対して答えを持っている方が一杯いらっしゃって、すごく面白い。ここで何を学んで、何ができるかでしょうね。どう還元するかだと思います。
大西:ブルーレヴズに還元してという感じ?
五郎丸:いや、そんな偏った感じじゃないですよ。ラグビー界全体がいい方向に向けばと思いますし、その第一歩としてブルーレヴズで、しっかり結果を残したいというのはあります。
五郎丸歩、スポーツビジネスの観点から日本ラグビーの未来を語る編~大畑大介、大西将太郎、五郎丸歩がラグビー界について語る!~
【動画】レジェンド五郎丸が大畑大西と爆笑対談!
勝てる時期と勝てなかった時期を知る五郎丸への期待
大畑:2015年以降もそうだと思うし、それ以前も学生の時から注目されていて、五郎の中ではラグビー界のために、何をしようかという考えがすごく占めてる。その部分で言うと、2015年ワールドカップの活躍はすごく大きなきっかけになったと思うけど、行く前と帰ってきた時の社会がものすごく変わった。
五郎丸:変わりすぎでしょう。いやー、きつかったですね。2015年で成し遂げたことは、チームとして成し遂げたわけじゃないですか。でも、帰ってきた時にフォーカスされてるのが、僕1人みたいになって、そのギャップにすごく戸惑いました。
でも、2019年のワールドカップはもう戦わないというのは、2015年の時に決めていたので、2019年で戦う選手たちが、いい環境で戦えるような状況を、自分がいかに作り出すかを考え、あと4年現役でがんばろうと思いました。
大畑:俺は勝てなかった人間。将太郎は連敗を止めた人間。五郎は勝った人間。すごく大きな成果をあげたメンバーの中で、勝てなかった頃と勝ったことを経験してる。俺はそういった選手が、日本のラグビー界をこれからどんどん引っ張ってほしいというのがすごくある。経験した人間しか語れないことがある。登ったことのない山の景色なんか見えない。だから、そういった人間がこれからどんどん出てきてほしいとすごく思っている。
五郎丸:僕は19歳で日本代表入れてもらったので、勝てる時期と勝てなかった時期と、両方味わえたというのはすごく大きいと思います。
大畑:当時、何があかんかったとか、成功したからこそ、あの時はダメだったとかわかる。そういうことをもっともっと、いろいろなとこで伝えてほしいとすごく思う。
日本ラグビーに必要なのは「稼ぐ能力」をつけること
大西:これから、五郎はレジェンドとして日本ラグビー界にどう携っていきたいかとか、日本ラグビー界がどうなってほしいかとかある?
五郎丸:こうしてほしいというか、ならなくちゃいけない姿は間違いなく、稼ぐ能力をつけるということですね。お金が全てではないですけど、でもお金稼げるということは、みなさんがしっかり仕事して責任感持ってやっているからこそ、そういうことになってくると思うんです。
ラグビー界では、今まで稼いじゃいけないという風潮がなんとなくある中で、ボランティアみたいな形で、なんとなくやってきました。けれども、稼げる組織を作ることによって、いろいろな人たちが報われる世界ができると思うんです。
2019年ワールドカップのあの光景を、ラグビーをさほど知らない人たちでも共有できている。今だからこそ、できることが沢山あると思うし、そういうことが形になった時には、選手たちとか子供たちの世界観も絶対変わってくると思う。まずはリーグワンがしっかりと稼げる能力をつけるというのが、最優先だと思います。
大西:ビジネスの中に入っている五郎だからこそ、稼げるリーグになれば日本代表の強化に密接につながるというのは実感できる?
五郎丸:我々もイチから全て作り上げてきましたけれど、お客さんはスタジアムに非日常を求めてくるわけです。だからラグビーのスタジアムで、いかに非日常を味わわせるかが勝負だと思うんです。
選手たちはプレイでそれを感じてもらえばいいけれど、運営はその選手たちがプレイしている姿というのを、特殊効果使ったりだとか、いろいろな形で見せないといけない。でも、そこにはお金が絶対ついてくるんですよ。
今回でいくと、リーグワンとBリーグ(男子プロバスケットボール)が同日に決勝をやっていましたが、優勝セレモニー1つとっても、お客さんが3、4万人入る国立競技場よりも、隣の東京体育館で6000人の決勝戦の方が華やかだったりするわけです。それはおかしいというか、そうあっちゃいけない。
あれだけいいスタジアムでやっているのであれば、もっとできることはたくさんあるでしょう。でも、そこは思いだけではなく、お金が絶対についてくるので、しっかりと稼げるものをリーグ全体として作っていかないと、見に来られる方を満足させられる空間というのは、なかなかできないと思います。
特に静岡はサッカーが根付いてるエリアですし、人口的にも東京と比べたら圧倒的に少ない。だからこそ、僕らが先陣切ってやらなければいけないことも多いだろうし、我々が成功することによって、リーグ全体が変わってくると思います。
国内リーグの充実と日本代表強化のバランス
大西:今まで磐田・浜松の静岡県の西の方が中心。東の方は巻き込めてきている?
五郎丸:東部、伊豆はやっぱり難しいです。沼津もそうです。静岡はすごく横に長いので、なかなか難しくて。今年は清水エスパルスさんのグラウンド(日本平スタジアム)を使わせていただいて、中部エリアでは開催できたんで、今後は東部、これは試合開催だけではなくて、普及活動も含めてやっていかなくちゃいけないと思います。
大畑:リーグワン自体もこれから3年、またさらに拡大していく中で、ブルーレヴズとしても当然、いろいろなビジョンを持っていくということ?
五郎丸:もちろん、そうです。まず試合数を増やさないといけないと思っています。ワールドカップがあるので基本的に今まで、日本代表中心のスケジュールでずっとここまで来ている。でも、自国開催が終わったので、一旦シフトを戻さないといけないと僕は思っています。
もうちょっと国内のリーグを充実させないといけなくて、もちろん代表が強いことで引っ張られる部分もあるんですが、そこにスケジュールが偏ってしまうと、国内でラグビーに関心がある人で、応援したいという人たちを取り込むのは難しいでしょうし、事業的にも採算が合わなくなってくるので、単純に試合数は増やさないといけない、となります。
大畑:現役時代もそうだし、引退してからも五郎に注目してる人はすごく多いので、大変な役かもしれないけど、五郎らしく、前回の清宮(克幸/元ヤマハ監督)さんの話ではないけれど、五郎にしかできないようないいところを見せてほしいと思います。
五郎丸:がんばります。
大西:今回、五郎丸さんをゲストにお招きして、セカンドキャリアを中心に話しましたが、これから日本ラグビー界の発展のためにも、五郎丸さんはご尽力されていきますから、みなさん応援よろしくお願いします。
<プロフィール>
◆五郎丸歩:1986年3月1日生まれの36歳。佐賀工業高校、早稲田大学から、ヤマハ発動機、レッズ、RCトゥーロン(フランス)に所属。日本代表キャップ57、通算711得点で日本代表テストマッチ最多得点を記録。2015年ワールドカップの大会ベストフィフティーン。現在、リーグワン・静岡ブルーレヴズのCRO。
◆大畑大介:1975年11月11日生まれの46歳。東海大学付属仰星高校、京都産業大学から、神戸製鋼、モンフェラン(フランス)に所属。日本代表キャップ58、通算69トライ、345得点を記録。日本人として2人目のワールドラグビー殿堂入り。
◆大西将太郎:1978年11月18日生まれの43歳。啓光学園高校、同志社大学から、ワールド、ヤマハ発動機、近鉄、豊田自動織機に所属。日本代表キャップ33。2007年ワールドカップのカナダ戦、終了直前に同点のコンバージョンキックを決め、日本のワールドカップ連敗記録を13で止めた。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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