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スプリングボクスの「小さな巨人」デクラーク
2019年の熱狂の中心にいたスプリングボクスの「小さな巨人」がやってきた。
7月21日(木)、2019年ラグビーワールドカップ決勝の舞台となった神奈川・日産スタジアムで、横浜キヤノンイーグルスに入団する南アフリカ代表SH(スクラムハーフ)ファフ・デクラーク選手(30歳)の入団会見が行われた。
スタンドに集まったファン
登壇したのは永友洋司GM(ゼネラルマネージャー)、沢木敬介監督、そしてデクラークの3人。また、スタジアムのスタンドには抽選によって選ばれた横浜キヤノンイーグルスのサポーターズクラブ、アカデミーの子どもたちなど700人も集った。
まず、永友GMは「デクラーク選手は2014年にスーパーラグビーのライオンズ(南アフリカ)からキャリアをスタートさせ、2017年から2022年までセール・シャークス(イングランド)で、100キャップ以上試合に出場して中心選手として活躍しました。2016年から南アフリカ代表に選ばれ、現在、38キャップで、2019年ワールドカップでは、準々決勝の日本代表戦では優秀選手に選ばれ、このスタジアムで優勝杯を掲げたスプリングボクスの中心でした」とデクラーク選手を紹介した」。
永友GMとデクラーク
さらに「まさか、その選手が私どものイーグルスの仲間になってくれるとは夢のような気持ちです。世界一を取った勝者のメンタリティーをチームに植え付けてほしい。また、リーグワンの各チームは未来の子どもたちのために夢を与えてくれるようなチームを目指していますが、その中心選手として活躍していただきたい」と期待を寄せた。
沢木監督は「ラグビー界で注目されている世界のトップレベルのSHが入団し、チームにとってプレーはもちろん、いろいろなところでいい影響を与えてくれる。本当の一流はチーム、コーチ、環境が変わっても対応して力を発揮できるので、彼もすぐにフィットすると思います」。
デクラークと沢木監督
「ワールドカップで優勝しているチームの一員ですし、ウィニングカルチャーを知っていると思うので、勝つために必要なものをみんなに伝えてくれる。プレーはもちろん、練習への取り組みなどプロフェッショナルな姿を見せて、チームのロールモデルになってくれる選手だと思います。イーグルスも日本のファンも歓迎している。シーズンを盛り上げていきたい」と話した。
会見に臨むデクラーク
経験豊富なデクラーク選手本人は、特に緊張した様子も見せず、まず「イーグルスの一員になれてうれしい。ワールドカップで優勝したスタジアムにまた戻って来られてうれしいですし、ワクワクしています。このチームでトロフィーが取れるように、世界でもベストのチームと言われるようになりたい。できる限り多く勝利し、ファンのみなさまが誇れるようなパフォーマンスをしたい。そしてラグビーだけでなく、イーグルスの選手、ファンにいい影響を与えていきたい」と笑顔で挨拶した。
来日を決めた理由を聞かれると、「ワールドカップ時、日本に10週間いましたが本当に気に入り、何年かプレーできると思いました。また、南アフリカの選手が日本のラグビーや生活を楽しんでいると聞いて、それも魅力的でした。日本の文化が大好きで、沖縄や富士山に行ったり、雪遊びがしたい。また南アフリカ、シャークスで5年プレーし、居心地がいいと成長が止まってしまう。自分を成長させるために新たなビッグチャレンジに挑みたいと思った」と話した。
横浜キャノンイーグルスに関しては、スプリングボクスでも一緒にプレーしており、今季からチームメイトとなるCTB(センター)ジェシー・クリエルからもいろいろ聞いているようだ。
「チームを選ぶときはパフォーマンスや過去の成績を見ますが、大きなポテンシャルがあり、このチームでやりたいと思った。友人であるジェシーからも住んでいる場所や、コーチ陣などいい話を聞いており、リーグワンは他にもチームがあるが横浜という街、立地関係も気に入っており、決めたきっかけになった」と説明した。
また、昨季から始まったリーグワンの印象については、「リーグワンはワクワクするようなラグビーをしている。ランやパスでボールが動くので、すごく楽しみです。スタンダードが上がっていて、若手もいるので、このリーグに貢献して、将来の日本のラグビーのためにも頑張りたい」と話した。
リーグワンでのプレーが楽しみなデクラーク
どんなプレーを日本のファンに見せたいかと聞かれると、「タックルがすごく好きです。得意としているのでビッグタックルを披露したい。またアタック面でしっかりゲームをスピードアップし、周りの選手にチャンスを作りたい。テストマッチではキックが多いが、リーグワンではアタックが多いので、スキルを伸ばしていきたい」とリーグワンでのプレーを楽しみにしている。
ワールドカップでは敵として対戦したが、チームメイトとなる日本代表SO(スタンドオフ)田村優については「素晴らしい選手で、怖い物知らずで、なんでも果敢にチャレンジする。クリエルからも彼がしっかりスタンダードを上げてくれる存在だと聞いている。強いチームには9番、10番のコンビネーションが必要。コンビを組めば切磋琢磨して成長していきたい」と話した。
また、リーグワンで対戦が楽しみな選手は「南アフリカ代表選手と対戦したら、いらつかせたり、嫌がらせをしていきたい。特に仲のいい(クボタスピアーズ東京ベイ・船橋の)HO(フッカー)マルコム・マークスに嫌がらせをして、切れさせたいなと思います(苦笑)」と茶目っ気たっぷりに話した。
今季の目標について聞かれて、デクラーク選手は「イーグルスはエキサイティングで見ていてワクワクするラグビーをしているので、早くチームの一員となってプレーしたいし、たくさんトライしたい。昨季は6位だったので、それよりもいい成績で終えられるようにしたい。チームメイトに会いたくてウズウズしています。あとはグラウンドでパフォーマンスを発揮するだけです」と意気込んだ。
チームの目標は「まず、トップ4に必ず入る。トップ4に入れば優勝する権利がある」(沢木監督)という横浜キヤノンイーグルス。その目標達成のためにも、デクラーク選手の加入は大きな存在となることは間違いない。複数年プレーする見込みで、スプリングボクスの経験豊富なデクラーク選手が攻守に渡りチームを牽引し、ウィニングカルチャーをチームに浸透させていく。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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