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報徳学園
ラグビー合宿の聖地、長野・菅平高原で、全国の高校ラガーが躍動した。
7月16日(土)からの3日間、菅平高原のサニアパークで開催された、第9回全国高校7人制ラグビー大会。
「春の選抜大会」「冬の花園」と合わせて高校3冠の一つに数えられる7人制NO.1決定戦は、報徳学園(兵庫)の初優勝、2冠達成で幕を閉じた。
今大会の参加チームは、昨年優勝の東海大大阪仰星を含めた各都道府県の代表全48校。(※大会2日目から埼玉・昌平が出場辞退、大会3日目から鳥取・米子工業、大分東明、東京・早稲田実業が出場を棄権)
大会1日目は、3チームずつ16組に分かれて予選プールを戦い、2日目からは順位別にカップ(各組1位)、プレート(各組2位)、ボウル(各組3位)トーナメントで戦った。
【大会1日目】
予選プールでは、報徳学園をはじめ優勝経験を持つ4校(東福岡、東海大大阪仰星、千葉・流経大柏、神奈川・桐蔭学園)、そして昨年準優勝の國學院栃木などが順当に1位通過。
一方で、Hプールでは愛媛・松山聖陵が、激戦区・大阪代表の常翔学園に22-12で勝利して1位通過。
またJプールでは3大会ぶり出場の岐阜工業が、全8大会(コロナ禍で中止の第8回大会は含まず)に出場している長崎北陽台に、5点差(24-19)で競り勝ち1位通過した。
Gプールでは2回目出場の岡山・倉敷が、連覇を狙う東海大大阪仰星に肉薄(19-24)。さらに昨年も同プールだった青森山田を2年連続で降した(31-19)。
【大会2日目】
大会2日目から始まった順位別のトーナメントは、大熱戦の連続だった。
茗溪学園 vs. 桐蔭学園
上位16チームによるカップトーナメント1回戦では、茨城・茗溪学園が桐蔭学園から後半4連続トライを奪い、19点差をひっくり返す劇的な勝利(20-19)。
カップ2回戦では、流経大柏と國學院栃木が、終盤まで同点(12-12)の大熱戦。國學院栃木が、劇的な勝ち越しトライで17-12として4強進出を決めた。
また同じくカップ2回戦では、桐蔭学園を破った茗溪学園が、終盤まで最多3度の優勝経験を誇る東福岡をリード。逆転トライにより、東福岡が辛くも15-12で勝ちきった。
一方、各組3位によるボウルトーナメントでは、初出場の勿来工業(福島)と東海大甲府(山梨)が、1回戦で大会初勝利。東海大甲府はその後ボウル3位の成績を残した。
【大会3日目(最終日)】
そして最終順位が決まる3日目の最終日。
予選プール3位だったチームによるボウルトーナメントの決勝戦は、それぞれ3連勝した「青森山田」×「石見智翠館(島根)」に。
青森山田 vs. 石見智翠館
ボウル決勝で、青森山田はシンビン(2分間の一時退場)を受けながらも攻守に粘り強く、22-19で勝利。MVPは小澤龍太郎が受賞。出場3回目で初のトーナメント戦優勝を飾った。
予選プール2位チームによるプレートトーナメントの決勝は「常翔学園」×「開志国際(新潟)」だった。
プール2位から見事に立ち直った常翔学園は、序盤からキックオフボールを連取してトライラッシュ。
7トライ45得点で圧倒し、45-14でプレートトーナメント優勝。MVPは、2トライを決めた高校ジャパン候補の田中景翔が受賞した。
常翔学園は初出場だった第3回大会(2016年)のボウルトーナメントで優勝しており、これで2度目のトーナメント戦制覇となった。
そして第9回大会の覇者を決めるカップ(各組1位)トーナメントの決勝戦。
頂上決戦のカードは「報徳学園×東福岡」。
両者は今春の選抜大会決勝で顔を合わせたが、決勝戦はコロナ禍の影響を受けた東福岡が辞退して中止に。
報徳学園は不戦勝による初優勝であり、また、決勝同日に行われた練習試合では東福岡が37-10で勝利していた。
大会初優勝で高校2冠を掴み取りたい報徳学園。
大会最多3度の優勝を誇る東福岡。
報徳 vs. 東福岡
午後1時30分にキックオフされた優勝決定戦で、まず報徳学園の伊藤利江人が輝いた。
7人制代表のユース活動に招集されている伊藤は、前半1分、俊敏なステップでわずかな間隙を突破。鮮烈な先制トライを決めた。
「いい形で試合に入れた」(伊藤)という報徳学園。
守備でもカウンターラックに成功し、ボール奪取。前半2分には同じくセブンズユースに選抜されている海老澤琥珀が2トライ目を決めた。
14点を奪われた東福岡は、ディフェンス背後へのキックに活路を見出す。
前半4分にはキックの再獲得から185センチの舛尾緑がトライを返す。しかし「1対1、ブレイクダウンで仕掛けようと思ったが、報徳はブレイクダウンを作らせなかった」(東福岡・大川虎拓郎主将)
強みを封じられ、その後も2トライ(前半5、7分)を奪われた東福岡は、19点ビハインド(7-26)で後半へ。
しかし後半1分、東福岡はふたたび防御裏へキックを転がして、インゴールで永井大成がグラウンディング成功。
さらに後半3分には連続攻撃からふたたび永井がトライを決め、9点差(17-26)に迫った。
残り時間はまだある――。さらに追撃したい東福岡だったが、ハイタックルなど3連続の反則で窮地に。
ここで、またも報徳学園の伊藤が電撃的なラン。
ラックから、相手ディフェンスが外展開に動いたところで内へ切れ込み、ラックから立ち上がっていた石橋チューカがパスを受け、初優勝を手繰り寄せるチーム5トライ目。
このまま14点リードを守り続けた報徳学園が、最後はボールを蹴り出してノーサイド。31-17で歓喜に沸いた。
大会初優勝と共に、高校2冠を達成した報徳学園。MVPに輝いた伊藤利江人が語った。
「(コロナで)春は決勝戦ができず、腑に落ちないというか、納得できなかった。今大会は実力で優勝できて良かった。東福岡にライバル意識持っていたので勝てて良かった」
「今大会、ランニングラグビーもフィジカル面も成長できたので、15人制も頑張って、花園でも優勝します」(報徳学園・伊藤)
昨年は無観客開催であり、有観客としては2019年以来3年ぶりの開催だった。
ラグビーファンにはお馴染みの菅平で繰り広げられた3日間の熱闘。
そして冬の全国高校ラグビー大会(花園)へ、高校ラガーたちの物語は続いていく。
■第9回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会 決勝トーナメント順位
報徳学園
【カップトーナメント】
1位 報徳学園
2位 東福岡
3位 東海大大阪仰星
3位 国学院栃木
5位 佐賀工業
6位 茗溪学園
7位 尾道
7位 流経大柏
9位 京都工学院
10位 岐阜工業
11位 早稲田実業
11位 大分東明
13位 桐蔭学園
14位 朝明
15位 松山聖陵
15位 光泉カトリック
常翔学園
【プレートトーナメント】
1位 常翔学園
2位 開志国際
3位 仙台育英
3位 長崎北陽台
5位 春日丘
6位 日本航空石川
7位 高鍋
7位 城東
9位 天理
10位 倉敷
11位 熊本西
11位 近大和歌山
13位 東海大翔洋
14位 明和県央
15位 坂出第一
15位 コザ
青森山田
【ボウルトーナメント】
1位 青森山田
2位 石見智翠館
3位 札幌山の手
3位 東海大甲府
5位 秋田工業
6位 勿来工業
7位 岡谷工業
7位 大津緑洋
9位 黒沢尻工業
10位 富山第一
11位 米子工業
11位 鹿児島実業
13位 山形中央
14位 若狭東
15位 昌平
15位 土佐塾
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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