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ラグビー コラム 2022年6月21日

司令塔争いに加わる中尾隼太と李承信、ウルグアイ戦で初キャップを目指す。ラグビー日本代表

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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SO争いに加わる中尾(左)と李

6月25日(土)のウルグアイ代表戦、7月2日(土)9日(土)のフランス代表戦を迎え、いよいよ宮崎で合宿していた「ファーストチーム」であるラグビー日本代表のメンバーが出場する。NDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)からは、FW(フォワード)4名の昇格にとどまり、SO(スタンドオフ)田村優などのBK(バックス)陣は招集されることはなかった。

注目が集まるのはやはりSO(スタンドオフ)、司令塔争いだろう。松田力也のケガにより、リーグワンのプレーオフで10番を背負い、埼玉パナソニックワイルドナイツを優勝に導いた3キャップの山沢拓也が、10番の筆頭候補と予想される中、2人のノンキャップの選手も選ばれて切磋琢磨している。

それはともに12番としてもプレー可能な、山沢と同級生にあたる27歳のSO中尾隼太(東芝ブレイブルーパス東京)と、21歳のSO李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)だ。ノンキャップの2人は今回が初の日本代表選出である。

代表合宿初参加の中尾

「東芝に入ったとき(日本代表は)視界にはまったく入っていませんでした。運が良かったこと、周りのスタッフ、仲間に恵まれてここまで来られた。すごくハッピーと思います」(中尾)。

「正直、このタイミングで代表に入るとは思っていなかったです。驚きが一番大きかったです。自分はNDSへ行くと思っていたので、驚きと素直にうれしい気持ちもありました」(李)。

リーグワンでのプレーぶりも踏まえて、2人を日本代表に招集したジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は、「中尾は12番でもプレーでき、他の選手たちとの連携も取れています。東芝で本当にいいプレーをしていましたし、いいリーダーシップも発揮していました。日本代表のSOの中でも異なるタイプとして期待しています」。

「李は非常に若い選手です。将来有望な選手で、非常に熱心ですし、未熟な部分もあり学ぶべきことがあるが、謙虚でハングリーです」と評価していた。

2人は6月3日から始まった宮崎での日本代表合宿に初めて参加した。中尾は「今まで経験したことがないような強度でトレーニングして、最初の1週間は毎日、終えるのが大変という状況でした。(初めてプレーする選手も多く)お互いの特徴を理解することは、僕のプレースタイルでは大事になってくるので、その難しさもあります」とコメント。

合宿での成長を感じている李

李も「初めて会った選手と一緒にプレーして、すごくハイレベルですし、1つ1つのセッションでやるべきことが明確で、自分自身が成長できていると感じています」と話した。

2人に自らの強みを聞くと、中尾は「他の人と比較する気持ちはないですが、長所としてディフェンス、コンタクトエリア、ディシジョンメイキングです。それらを含めて、日本代表のラグビーをもっと知って、より有効な働きかけをしていきたい」と話した。

李は「代表でも通用するかと言われたら、そこまで自信は持っていませんが、やはりランはすごく強みにしています。そこはチャレンジして、受け身にならず、ボールもらったら強気で勝負していきたい」と胸を張った。

練習中に話す山沢(左)と李

田村がNDSから昇格せず、山沢、中尾、李3人によるポジション争いをしているが、練習中でも3人で積極的にコミュニケーションを取って高め合っており「いい関係が築けている」(中尾)という。

「すごく試されているのが伝わってきます。初キャップが取れるチャンスがすぐそこにあると思うので、毎日チャレンジして、チャンスをものにしたい」(李)。

「2人から学びたい気持ちは僕が一番強いので、山沢はみんなから、ひらめきでプレーしている、天才みたいに言われているが、彼なりの理論を持って考えて、キックの判断をしているので、そういうところを聞いている。(李)承信は一番、若いですが取り組み姿勢が本当に素晴らしく、準備とか練習の集中度、アチチュードの部分もすごいし、ラン、パスのスピードも優れているので、その話を聞いている」(中尾)。

鹿児島大学出身の中尾

中尾と言えば、長崎北陽台高校から鹿児島大学に進学し、ラグビーをしながらも中学、高校だけでなく、小学校教諭の資格も取ったことで知られている。

「(大学)当時は、先生になりたいので(その資格を)とったが、(東芝に入り社会人で)ラグビーをすることになり見える世界が変わり、考え方も変わった」と中尾。

「教育など、人に携わる、人の未来に携わることは好きですが、それは先生に限ったことでなないので、自分自身どういう人が知って、どういうことで、人の未来に携わっていけるかという視点で、これから自分にできること考えていきたい」と話すにとどめた。きっと、日本代表の経験も中尾の将来にいい影響を与えることになるはずだ。

まだ21歳の李

李と言えば、大阪朝鮮高校2年で高校日本代表に選出されて、大学1年時にジュニア・ジャパンの主将を務めた後、帝京大学を2年で中退して、ニュージーランド留学を決めた。ただ、コロナ禍の影響で断念して、コベルコ神戸スティーラーズに入った。

21歳の李は「大学を退学した時も、自分がこれから進む道に後悔がないようにと思い、1つ1つの行動や過ごし方を大事にしようと思っていました。今、振り返っても後悔はしていないので、もっと自分が選んだ道に誇りを持てるようにがんばっていきたい」と前を向いた。

もちろん、2人は6・7月の3連戦でアピールすれば、2023年ワールドカップへの道も開けてくる。

李は「日本代表に入ることは漠然とした目標としてありましたが、日本代表の合宿へ来て、(目標が)明確になってきた部分もある。もっとハングリーに、もっとアピールして、初キャップを取って、絶対にワールドカップメンバーに選ばれたいなという気持ちは強くなっています」。

大阪朝鮮高校出身として初キャップとなることについては、「プレッシャーというよりも、その期待に応えたいという気持ちが大きい」と語気を強めた。

中尾は「自分自身、最低限やらないといけない仕事ができないと、チームのためにもならないですし、楽しむ資格はないので、まずは自分のことをしっかりやるのが第1プライオリティーだと考えています」。

「(今は東芝に入社したときと)同じような気持ちで、何で自分はこんなにできないんだという気持ちになっていますが、そこはあきらめずに、長期的な視点で、毎日、積み重ねていけば、明るい未来につながっている」と先を見据えた。

中尾と李の2人は6月25日(土)から始まる3連戦で、まずは日本代表初キャップを狙う。そして試合に出場し、アピールすることで秋の日本代表に再び呼ばれることが当面の目標となろう。

コミュニケーションと戦術眼に長けた中尾、ボールを持ったらランで積極的にしかける李。桜のジャージーを着た2人のプレーを今から楽しみにしたい。

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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