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NDSの主将、司令塔として挑む田村優
6月9日(木)、東京・秩父宮ラグビー場で11日(土)に『トンガサムライXV』と対戦する『エマージングブロッサムズ』のメンバーが発表された。
大分・別府で合宿していたNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)から「日本代表に一番近いメンバー」として堀川隆延HC(ヘッドコーチ)が選んだ先発15人に、キャプテンを任された代表68キャップのSO(スタンドオフ)田村優(33歳/横浜キヤノンイーグルス)の名があった。
5月31日に、6~7月にテストマッチ4試合を控えた日本代表メンバーが発表された。その日本代表の中に田村の名前はなく、少し驚きだった。2016年秋、ジェイミー・ジョセフHCが就任して以来、2019年ワールドカップで5試合先発するなど、過去6年、桜のジャージーの10番を背負い続けてきた田村は、セカンドチームであるNDSとして選出された。
NDS合宿で練習中の田村
その理由をジョセフHCは「田村は長い間、一緒にやってきて素晴らしい選手だと思いますし、これからも素晴らしいプレーができると思います。彼が求められたパフォーマンスを取り戻せれば、ワールドカップにおいて、我々のチームの中で本当に大きな役割を果たすと思いますが、現時点ではまずはプレーを見たい」と説明した。
5月中、リーグワンのプレーオフが行われていたときに実施されていた別府合宿で、田村はジョセフHCと、1対1のミーティングをして、NDSでの選出を伝えられたという。
日本代表から落選し、NDSとなった田村は「ジェイミーから僕に対するフィードバックは常に厳しい。ほぼ直球でフィードバックをくれるので助かります。どこからスタートするにせよ、大きな結末、ゴールはあるわけで、まず2試合、このチームでできることはなかなか貴重な経験だと思うし、このチームをスペシャルなチームにするチャンスがあると思うので、すごく楽しみ」と前向きに捉えた。
オンラインで会見する田村
6月3日(金)からNDS合宿が始まると堀川HCにキャプテンとして指名された。「ジェイミーともいろいろ話して、最終的に田村のリーダーシップが若いチームに必要だし、彼の経験がこの2戦戦っていく上で非常に重要であるとキャプテンを託しました」(堀川HC)。
NDSのキャプテンに指名されたことに関して「やっぱり、みたいな感じだった」という田村は「新しく始まるチームは大変なこともありますが、学びも多い。2週間このチームにフルコミットで、身体がどうなろうと全部出し切るということだけ」と快諾した。
過去2年、田村は横浜イーグルスでのキャプテンをした経験も大きかったようだ。「このチームに100%コミットするという気持ちだけで、今、僕は動いています。キヤノンでやらせてもらっていることは、間違いなく全部100%プラスになっているので、ここでもスムーズにできている」。
若手とのコミュニケーションも積極的に行った
練習が公開された6月4日(土)、田村はベテランCTB(センター)立川理道、若手のWTB(ウィング)根塚洸雅(ともにクボタスピアーズ船橋・東京ベイ)らと積極的にコミュニケーションしている姿が見られた。
田村は「(NDSは)とりあえず2週間だけのチームで、(試合までは)1週間という限られた時間だったので、関係性を作り上げることが大事と思っていた。(過去に)一緒にやっていた選手より、新しく一緒に始める選手が多かったので、そこにフォーカスした。僕も新しいチームの中では新しい選手なので」と話した。オフフィールドでも若い選手と一緒に映像を見たり、スタッフが確保してくれた安全な場所で、みんなでご飯を食べたりとコミュニケーションの量を増やしていたという。
田村は根塚、WTB竹山晃暉(埼玉パナソニックワイルドナイツ)といった若い選手だけでなく、立川、CTBラファエレ ティモシー(コベルコ神戸スティーラーズ)といったベテランとともに先発する。特に55キャップのCTB立川と桜のエンブレムがついたジャージーで試合をするのは、2018年6月以来のことだ。
立川と話す田村
田村は「やはり、安心感ありますよ。特にハル(立川)は、だいぶ前から一緒にプレーできていないですが、本当に今、日本でも数少ない良い12番だと思います。久しぶりにラグビーを楽しめていて、ハルとかとやれるのはフレッシュだし、こういう感覚、気持ちになれるのが一番。それだけで合宿に参加させてもらっている意味があります」としみじみと語った。
今回のトンガサムライXV戦に続く、6月18日(土)のウルグアイ代表との第1テストマッチで田村を10番で起用することは、すでにジョセフHCが明言している。2試合の結果次第では、当然、日本代表に合流する可能性もある。田村は「まず(トンガサムライXVを)みんなで頑張りたいですし、その次(ウルグアイ代表戦)もあります。徐々に段階を踏んでいればいい」と語った。
さらに2023年ワールドカップへの思いを聞いてみると、田村は「まずはこの2試合ですね。ケガも癒えてきて、10週間くらいできなかったことが、(今)できるようになって動けている。まだ遠い質問に、なかなか答えられないですが、ここまでみんなで、このチームがすごい速度でここまで成長できている。まずこの2週間だと思います」と話すにとどめた。
トンガサムライXV戦に挑む
PR(プロップ)中島イシレリ(コベルコ神戸スティーラーズ)、SOロマノレメキ ラヴァ(NECグリーンロケッツ東葛)ら、日本代表経験のある選手も先発するフィジカルの強いトンガサムライXVに対して、司令塔の田村は「自分たちが1週間やってきた準備を出すという感じです。自分たちのやってきたことをやり切るだけだと思います」と意気込んだ。
現在、日本代表、NDS、コンディション不良の選手も含めると80名近い大きなスコッドだが、ジョセフHCは6月~7月のテストマッチシリーズ終了後に「45~50名に絞る」とキッパリと断言した。NDSは2週間限定のチームだが、田村はまず6月11日のトンガサムライVX戦で、司令塔としてプランを遂行し、チームを勝利に導くことが日本代表復帰への近道となる。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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