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クラブとしての矜持を示す舞台。それが3位決定戦だ。優勝への道が途絶えた直後の失意の中で迎えるシーズンのラストマッチ。だからこそそこでのパフォーマンスにこの1年の歩みの真価は現れる。リーグ戦3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイと同4位の東芝ブレイブルーパス東京が激突した記念すべきリーグワン初年度の3位決定戦は、随所に両者の意地とスピリットが立ち上る誇り高き80分となった。
序盤からあらゆる局面で小細工なしの真っ向勝負が繰り広げられたこの試合。先にペースをつかんだのは、3月19日のリーグ戦第10節で28-43と敗れているブレイブルーパスだった。攻守とも迷いなく前に出て体を当てるおなじみのスタイルで勢いに乗ると、開始7分にラインアウト起点の連続攻撃から右大外のスペースを崩し、WTBセタ・タマニバルがこの日最初のトライを挙げる。
11分にはキックの応酬から、いい位置でボールをキャッチしたタマニバルが左ライン際をカウンター。SH高橋昴平のサイドアタックは止められたものの、奪われかけたボールがふたたび高橋の手に入り、サポートについたSO松永拓朗があざやかなスピードでポスト下へ駆け抜ける。コンバージョンも決まってリードは12-0に広がった。
バーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
ブレイブルーパスの推進力に差し込まれる時間が続いたスピアーズも、ここから反撃に転じる。まずは18分、自陣10メートル付近のマイボールスクラムでプッシュをかけると、SOバーナード・フォーリーが飛び出してくる相手ラインディフェンスの裏へ絶妙のキック。追いかけたCTBライアン・クロッティが見事にバウンドに合わせてキャッチし、外のFBゲラード・ファンデンヒーファーへとつないで仕留め切る。27分にはラインアウトのスティールからBKに展開して一気にゴールラインへ迫り、テンポよく攻め続けてWTB山崎洋之がフィニッシュ。12-12と試合を振り出しに戻した。
33分過ぎにはブレイブルーパスがスクラムの真上でパスを通す驚きのサインプレーでチャンスを作り、SO松永のPGで15-12とふたたび勝ち越す。しかしスピアーズも続くキックオフでプレッシャーをかけてマイボールスクラムの好機をつかむと、しなるようなラインアタックでWTB山崎が左大外を抜け出しインゴールへ。17-15とスピアーズが先行して前半を折り返した。
この1年を通して培ってきたものをすべて出し合うようなフルスロットルのバトルは、後半に入っても続く。30度近い気温の中、互いに立ち上がりからハイペースで飛ばしてきたこともあってスコアはなかなか動かなかったが、フィールド上では終始見応えある攻防が展開された。
拮抗した流れの中、貴重な追加点を刻んだのはスピアーズだ。力強い連続攻撃でプレッシャーをかけて敵陣へ攻め入ると、相手ボールのスクラムをドミネートしてペナルティを獲得。SOフォーリーが正面約30メートルのPGを落ち着いて通し、残り30分の時点でリードを5点に拡大する。
ブレイブルーパスもここで気迫を押し出して猛攻を仕掛け、あわやという場面をたびたび作った。61分には、ラインアウトのミスで惜敗した前週の準決勝の終了直後にトッド・ブラックアダーヘッドコーチからこの日のスタメンを伝えられたというHO森太志が、入替でピッチを退く際に万雷の拍手を受けたまらず男泣きするシーンも。しかしスピアーズも集中力を高く維持して懸命に対抗し、最後の一線を死守する。
そして迎えた67分。蹴り合いの中でブレイブルーパスにキッカーより前の選手がプレーに参加する痛恨のペナルティがあり、スピアーズが絶好のPG機を獲得する。SOフォーリーがこれを成功させ、スコアはワンチャンスで追いつけない8点差まで広がった。
その後、69分にスピアーズのPRオペティ・ヘルが危険なタックルでシンビンになり、ブレイブルーパスはひとり多い状況となったが、ゴールラインに迫りながらも細かいミスが重なり、得点を伸ばせない。終盤は逆にスピアーズが敵陣でいい形を作ったが、ブレイブルーパスも渾身の猛タックルで応戦。お互いに一歩も譲らず持ち味を出し合った壮絶な死闘は、23-15とスピアーズの勝利で幕を閉じた。
順位を争うこと以上に、この一戦にかける気持ちと、磨き上げてきた自分たちのラグビーを最後まで貫こうとする意志が際立った80分。それぞれの思いとプライドに満ちた戦いは、ラグビーという競技の魅力をあらためて思い起こさせた。
東芝ブレイブルーパス東京 vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クラブ史上最高の単独3位という結果を残したスピアーズは、もはや誰もが認める堂々のトップチームだ。往時の力強さを取り戻し6シーズンぶりの4強入りを遂げたブレイブルーパスも、完全復活に向けたしかな兆しを感じさせた。それぞれの来シーズンへの期待がさらにふくらむ、充実の最終戦だった。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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