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ラグビー コラム 2022年5月27日

大本命同士の頂上決戦 攻めの東京サンゴリアスか、守りの埼玉ワイルドナイツか

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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東京サンゴリアス vs. 埼玉ワイルドナイツ

開幕年のリーグワンはコロナ禍で苦しんだ。不戦勝、不戦敗が勝ち点争いに影響し、本命が勝ち残れないのではないか。そんな心配もあった。しかし、それは杞憂だった。日本ラグビー最高峰の戦いは「トップリーグ」から、「リーグワン」と名を変え、大会方式も運営形態も一新されたが、トップリーグ最後も、リーグワン最初も、決勝カードは東京サンゴリアス(東京SG)対埼玉ワイルドナイツ(埼玉WK)に落ち着いた。ともに日本代表候補選手を多数擁し、実力は拮抗。どちらがリーグワン初代王者に輝くのか予断を許さない戦いだ。

トップリーグ最後の決勝戦では、埼玉WKが31-26で勝利。この試合で引退した福岡堅樹の左コーナーへのトライは印象深い。ディラン・ライリーの値千金のインターセプトからのトライもあった。リーグワンでは2月26日、カンファレンス間の交流戦で対戦し、34-17で埼玉WKが勝ってる。このときも、後半30分過ぎ、ディフェンスからの切り返しで勝利を決めるトライをあげたのは、ディラン・ライリーだった。

東京サンゴリアススターティングメンバー

27日に発表されたメンバーでは、準決勝から東京SGは先発15名で2名の変更。身長206cmのLOハリー・ホッキングスが欠場し、小林航が出場する。ホッキングスは今季ラインアウトスチール数がディビジョン1最多の10回。キックオフでも再三にわたって相手ボールを奪うなどハイボールには無類の強さがある。ホッキングス不在は空中戦には影響がありそうだ。また、NO8箸本龍雅に代わっては、トム・サンダースが先発する。機動力あるFWと、WTBテビタ・リー、CTBサム・ケレビ、FBダミアン・マッケンジーといった決定力あるアウトサイドBKを、SH流大、SO田村煕、CTB中村亮土が卓越したスキルで操る。埼玉WKのディフェンスとの我慢比べになると苦しい。短い時間で切り裂くような攻撃を見せたいところだ。

埼玉ワイルドナイツスターティングメンバー

対する埼玉WKは準決勝から先発で4名の変更がある。先発だったPR平野翔平がリザーブに回って藤井大喜が今季初先発。仕事人のLOジョージ・クルーズが復帰し、NO8ジャック・コーネルセンヒーナン ダニエルに代わってLOに上がり、NO8に布巻峻介が入る。BKでは、SH小山大輝に代わって内田啓介が先発復帰。埼玉WKの選手層の厚さが光るメンバー編成だ。ターンオーバー能力の高い両FLベン・ガンターラクラン・ボーシェーに加えて、仕事人のクルーズが復帰したのはディフェンスの厚みという面でも大きい。ファンタジスタのSO山沢拓也は決勝でも創造的なプレーを披露するだろう。

埼玉WKは東京SGとの直近4試合の対戦で3勝1敗と勝ち越している。昨年の決勝と今年の試合では各30得点以上を記録した。東京SGは埼玉WKには分が悪いが、ディビジョン1の直近9試合では8勝1敗。今季12勝のうち、11試合で30得点以上を記録して得点力の高さを見せつけている。両チームはセットプレーの安定感も際立っている。ディビジョン1でスクラム成功率が 90%を超えているのは、埼玉WK(94.2%)と東京 SG(93.9%)だけだ。逆に言えば、スクラムで優位に立ったチームに勝利は大きく近づく。ホッキングス不在の中で東京SGが埼玉WKのラインアウトを乱せるかどうかも注目ポイントだ。

両者の戦いの図式は分かりやすい。東京SGは素早いテンポでボールを動かす超攻撃型。埼玉WKは粘り強い組織防御から切り返す堅守速攻型だ。東京SGが勝つためには、埼玉WKにターンオーバーを許さない精度の高いプレーが必要だ。トライが取り切れなくても、ボールをテンポよく動かすことがきれば埼玉WKの反則を誘えるだろう。そうすれば、FBダミアン・マッケンジーの正確なPGで着実にスコアできる。

埼玉WKは粘り強く守ってチャンスを待つ。一か八かに見えるインターセプトもディフェンスで圧力をかけ続けるからこそ、相手のパスコースが限定される。今回も得意の形で決定的なトライを奪うのか。それとも、東京SGがターンオーバーを許さずにトライを取り切るのか。一瞬たりとも目の離せない激闘になるだろう。リーグワン初代王者としてトロフィーを掲げるのは誰か。初代MVPに輝くのは?日本ラグビー最高峰の戦いをあらゆる角度から楽しみたい。

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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