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【ハイライト動画あり】ワクワクするラグビーを見せ続けた宗像サニックスブルース、28年間の活動に終止符。ジャパンラグビー リーグワン Div.3順位決定戦
ラグビーレポート by 斉藤 健仁ラストゲームを終えた宗像サニックスブルース
ジャパンラグビー リーグワンのディビジョン3、1~3位の順位決定戦の第3節が、5月8日(日)に行われた。ホストであるリーグ戦1位の豊田自動織機シャトルズ愛知が、2位の宗像サニックスブルースと対戦した。
1994年創部の宗像サニックスブルースが、株式会社サニックスの経営環境により、今季限りでの休部が決まり(現在のところ譲渡先は見つかっていない)、この試合がラストゲームとなった。
一方で豊田自動織機シャトルズ愛知も、第2節までの結果でディビジョン2への自動昇格が決まっていたが、地元の試合で今季全勝でディビジョン3の優勝を決めたいと臨んだ試合だった。
宗像サニックスブルースは前節からFW(フォワード)3人、BK(バックス)3人と、6人を交替して臨んだ。FWはHO(フッカー)にゲームキャプテン高島卓久馬、ベテランのLO(ロック)西井利宏、FL(フランカー)吉田光治郎、オールブラックスセブンズのFLスコット・カリーらが先発した。
BKはSH(スクラムハーフ)に2年目の土永雷、SO(スタンドオフ)には竹中太一、WTB(ウィング)には今季、コカ・コーラから移籍してきたフィジカルが武器の石垣航平、2015年ラグビーワールドカップ日本代表カーン・ヘスケスらが入った。
豊田自動織機シャトルズ愛知は第1節からFWのメンバーに変更はなく、BKのみ2名を変更。FWにはゲームキャプテンLO中村大志、FLタリフォロフォラ・タンギパ、NO8には身長202cmのタレニ・セウらが先発。
2トライを挙げて、POMに輝いた豊田自動織機シャトルズ愛知のWTB大道
BKを見るとハーフ団にSH藤原恵太とSO清水晶大のトップリーグ経験豊富な2人、CTB(センター)にはフィジー代表24キャップを誇るジョシュ・マタヴェシと、9トライを挙げてトライランキングトップに立つ2年目の齊藤大朗。WTBには中野豪と大道勇喜、FB(フルバック)にはトム・ハダッドが入った
宗像サニックスブルースの松園正隆監督は「宗像サニックスブルースの集大成として、”サニックスらしいラグビー”で締めくくりたい」と言えば、豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一HC(ヘッドコーチ)は「この2週間、サニックスの会社、チームの背景を学んでリスペクトして臨んだ」と話した。
最後の勇姿を見ようと、多くのファンが駆けつけた
「ありがとう、サニックス」など、応援ボードを持った宗像サニックスブルースのファンも含め、1698人のファンが駆けつけ、多くの人の思いが交錯する中、試合は午後4:00にキックオフされた。
先制したのは、28年の歴史でラストゲームとなる宗像サニックスブルースだった。前半5分、ラインアウトを起点にボールを動かし、最後はWTB石垣が左隅に押さえて5点を先制した。だが、10分以降はディビジョン3屈指の攻撃力を誇る豊田自動織機シャトルズ愛知の時間帯となる。
トライを挙げる豊田自動織機シャトルズ愛知のSO清水
12分、ラインアウトからモールを押し込み、SH藤原がトライを挙げて同点。20分にはモールを押し込んだ後、右に大きく展開しWTB大道が押さえた。27分にはゴール前で得た相手のペナルティからスクラムを選択し、FWで攻撃を継続後、SO清水が見事なステップでインゴールを陥れて、17-5とした。
さらにシャトルズは攻撃の手を緩めず、35分にはSO清水のキックパスをキャッチしたWTB大道が、39分には相手のパスをインターセプトしたNO8セウが、そのまま走り切ってトライを挙げて29-5と大きくリードして折り返した。
残り40分、宗像サニックスブルースのダミアン・カラウナHCは「もっとシンプルに、ワクワクするラグビーをしよう」と選手たちに声をかけてピッチに送り出した。4分には、ボールをよりワイドに大きく動かし「サニックスらしい」ラグビーを見せ、SO竹中がトライを挙げると、9分にはLO西井、12分にはFB八文字雅和がトライを挙げて、24-29と5点差に追い上げた。
しかし、実力で上回る豊田自動織機シャトルズ愛知は、「もう一度、スタンダードを見つめ直そう」と声を掛け合い、落ち着いてボールをキープして再び主導権を握った。22分、29分にWTB中野豪が連続トライを挙げると、35分にはCTB齊藤がディビジョン3のトライ王を決める通算10個目のトライを決めて、ロスタイムには途中出場のSH末拓実がトライ。
ラインブレイクする宗像サニックスブルースのFL吉田。最後のトライも挙げた
33分には、宗像サニックスブルースはFL吉田がトライを返したが、終わってみれば豊田自動織機シャトルズ愛知が、9トライの猛攻を見せて55-29で快勝し、ディビジョン3を全勝で駆け抜け優勝を決めた。POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には2トライを挙げた豊田自動織機シャトルズ愛知のWTB大道が選出された。
28年の活動に終止符を打った宗像サニックスブルース
有終の美を飾れなかった宗像サニックスブルースの松園監督は「負けたことは残念ですが、選手たちが最後まであきらめずに戦うってことを見せてくれたので満足しています。自分はチームができて3年目から、誰よりも一番長く、人生の半分以上はサニックスに関わっているので、自分の中で大事なものが1つ抜け落ちる、欠けてしまうというのが正直な気持ちです」と話した。
宗像サニックスブルースの松園監督
福岡や全国各地から、最後のサニックスの試合を見ようと多くのファンが駆けつけていた。ファンに向けて松園監督は「本当に感謝の言葉しかありません。トップリーグでは昇格したり、降格したりのシーズンたくさん過ごしましたが、(2部に)落ちても『頑張れ』、勝っても『良かった』と言ってもらえ、『ブルース、応援しているよ!』と言ってくれたファンがたくさんいたことに感謝しています」という言葉で締めた。
豪快なランで会場を沸かせたブルースWTBヘスケス
また12年間、在籍していたWTBヘスケスは「今日は、みなさんが『サニックススタイル』だと思っている、そのままのラグビーをやれた。(サニックスというチームの存在は)ハードワークと、速いランニングラグビー、そしてワクワクさせるラグビー、そして家族生活、あとは晴れたビーチですね!(ファンに向けて)とても大きな存在です。サニックスは負けの方が多い時もあったが、本当に最後の瞬間までサポートしてくれました」と話した。なお、ヘスケスは、このまま日本に残ってのプレーを希望している。
全勝で駆け抜けて優勝。来季はディビジョン2で戦う
ディビジョン3で全勝し、ディビジョン2へ昇格した豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野HCは「3年後、日本一を目指すということを描いて臨んでいるので、この1週間を成長の機会と捉えた。今日はサニックスさんの28年の歴史を80分通して学ばせていただいた。勝ちには満足していますが、サニックスさんの思いを背負いながら来季、ディビジョン2を戦っていかないといけない」と先を見据えた。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン3
【順位決定戦 第3節ハイライト】豊田自動織機シャトルズ愛知 vs. 宗像サニックスブルース
試合に欠場したPR(プロップ)山口知貴キャプテンは「サニックスさんの見ていてワクワクするようなアタックに翻弄されてトライを取られるシーンもあった。勝ったことは良かったが、ディビジョン2、その先のディビジョン1のことを考えると、ディフェンスにまだ課題が残る。ただ、1年やってきて最後優勝という結果で終われたので、頑張ってくれた選手を称えたい」と振り返った。
LO中村ゲームキャプテンは「ボールを大きく動かすところでは通用した部分があったので、来季に向けてさらにレベルアップしたい。徳野HCが就任してから、FWのセットプレーはこだわってきているところなので、現状に満足せず、セットプレーは来季もこだわりをもっていきたい」と話した
最後は両チームで記念撮影
試合後、豊田自動織機シャトルズ愛知のディビジョン3優勝セレモニーが開催され、トロフィーと優勝賞金100万円が授与された。さらに、最後に豊田自動織機シャトルズ愛知により、この試合が1994年の創部からラストマッチとなった宗像サニックスブルースのセレモニーが行われて、最後は両チーム揃って記念撮影が行われた。
豊田自動織機シャトルズ愛知は来季のディビジョン2でプレーすることになり、ワクワクするラグビーを見せ続けた宗像サニックスブルースは公式戦324試合目で、28年間の活動に終止符を打った。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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