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埼玉ワイルドナイツ vs. コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズはプレーオフ進出へ土俵際だ。
負ければ初代王者への道が絶望的になる状況で、今季無敗の昨季チャンピオンが相手となる。
ジャパンラグビーリーグワンのディビジョン1。全16戦のレギュラーシーズンは第13節。
5勝7敗(実戦4勝5敗)で7位につけるスティーラーズは、4月16日(土)、埼玉・熊谷スポーツ文化公園ラグビー場に乗り込み、2位に浮上した10勝2敗(実戦10勝全勝)の埼玉ワイルドナイツと激突する。
リーグワンの開幕年は、18年度王者スティーラーズのまさかの2連敗で始まった。
しかし第3節(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦)でリーグワン初勝利をもぎ取ったスティーラーズは、第4節でワイルドナイツ相手に終盤までリード。
しかし自陣で立て続けに反則を犯し、後半40分、ワイルドナイツで途中出場の堀江翔太に逆転トライを決められ、痛恨の逆転負け(37-41)を喫した。
その後はコロナ禍による試合中止を3試合経験。2回あった中断の前はいずれも勝利しており、連勝してリズムに乗りたい状況で逆風が吹いた印象もある。
逆風もあって7位にいるスティーラーズだが、実力はリーグ上位だろう。
ゲインメーターランキング(4/15)
他のデータと比べて順位との相関関係が表れているデータに、ボールキャリー1回あたりの前進距離「平均ゲイン」がある。ゲインメーター(ボールを持って前進した距離)をボールキャリー数(ボールを持って走った回数)で割ったものだ。
この平均ゲインが上位のチームは順位も高い傾向にあるが、例外的なチームのひとつがスティーラーズだ。平均ゲイン数は第11節終了時点で2位タイだったが、順位はリーグ中位。
ボールを持って前進する力はリーグ屈指だが、それが勝利や順位という結果に繋がっていない。
「実際試合を振り返ると、たくさんのチャンスを生み出していたので、そのチャンスをものにできれば、必ずより成長できると思います」
実戦5敗目を喫した第11節(東芝ブレイブルーパス東京戦)でそう語ったのは新加入の南アフリカ代表CTBルカニョ・アムだ。
前進する力はトップクラス。生み出したチャンスを得点に変え、4強によるプレーオフ進出への望みを繋げたい。
そんなスティーラーズの前に立ちはだかるのは、スティーラーズとのリーグ戦直近16試合で負けていない(15勝1分け)ワイルドナイツだ。
前半リードを許しても重厚な選手層で後半に凌駕し、結果的にスコアで上回る。
先週のシャイニングアークス東京ベイ浦安戦では前半スコアが0-10だったが、後半スコアで31-14と逆転。見事に試合をひっくり返した。
インプレーのキック回数は多いが、1試合平均のテリトリー(敵陣でのプレー)がリーグ1位の 55%。初代リーグ王者の筆頭候補といってよい風格、実力だ。
司令塔として君臨するSO松田力也の好調は大きい。ワイルドナイツには驚異的なハイ・パフォーマンスで牽引したベリック・バーンズ(2013年から6季プレー)といった絶対的司令塔がいたが、松田も負けていない。
高精度のキックやパス、判断で試合をつくるゲームメイカーとしてはもちろん、守備の読みにも優れ、今季何度も決定的なトライを防いでいる。海外出身の先発スタンドオフが多いなか、リーグのトップ・オブ・トップに日本人10番が据わっている意義も少なくないだろう。
そんなワイルドナイツのメンバー23人が発表されている。
埼玉ワイルドナイツスターティングメンバー
前節から先発15人中2人(LOジャック・コーネルセン、CTBヴィンス・アソ)が変更となった。
CTBアソは前節で巧みなオフロードパスで逆襲を演出しており、先発でも王国ニュージーランドのハイスキルが期待される。
コベルコ神戸スティーラーズ スターティングメンバー
そして背水の陣で一戦必勝を期するスティーラーズ。
57-28でNECグリーンロケッツ東葛を振り切った前節から、先発1人(LOジェラード・カウリートゥイオティ)を変えた。
韓国代表歴のある選手はリーグワンのアジア枠撤廃により出場競争が激化しているが、そんな中でも韓国代表4キャップのLO張碩煥は先発として活躍中。
ハーフ団は、前節グリーンロケッツとの古巣対決で躍動したSH中嶋大希と、ニュージーランド代表50キャップのSOアーロン・クルーデン。決定力向上に寄与できる南アフリカ代表のCTBアムも先発を飾る。
リザーブには、前節リーグワンデビューした4月入団のPR前田翔(東海大卒)が2戦連続のメンバー入り。また新たにトコキオソシセニ、元主将の前川鐘平、ゲームチェンジャーとして期待される日和佐篤、チーム復帰のベン・スミスが入った。
第4節の悔しい敗戦から約2か月半。
今季2度目の激突で、背水のスティーラーズは雪辱を果たせるか。それともやはりワイルドナイツが最終スコアで上回るのか。注目の一戦だ。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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