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現在の順位がどうであれ、前回の対戦がどんな結果であれ、全力を尽くして勝利をつかみにいく。それが地元でのホストゲームというものだ。4月2日、リーグワンディビジョン2の第9節。釜石シーウェイブスにとって今季2度目の釜石鵜住居復興スタジアムでのゲームとなる三重ホンダヒートとの一戦は、そんなホストアンドビジターのリーグ戦の醍醐味を実感する80分になった。
シーウェイブスの突き抜けた気迫と使命感は、キックオフ直後から骨きしむようなヒットとなってあらゆる局面に立ちのぼった。LOチャールズ・マシューやNO8サム・ヘンウッド、HO伊藤大輝らを筆頭に誰もが鋭い出足で前へ出て激しく体を当て、攻守に渡りヒートへプレッシャーをかける。開始4分、ラインアウト起点のアタックから敵陣ゴール前でペナルティを誘うと、SOブレット・キャメロンがPGを決めて先制。
その後しばらくは拮抗した展開が続き、22分のSO朴成基のPGと、個の脚力でスクラムサイドを抜け走り切ったSH根塚聖冴の27分のトライ(ゴール)で、いったんはヒートが10-3と逆転した。しかしシーウェイブスもすぐ反撃に転じ、SOブレット・キャメロンのディフェンダー2人を引きつけての絶妙のパスから、NO8ヘンウッドが縦にクリーンブレイク。サポートしたFL河野良太が元WTBらしい見事なランで走り切り、10-10のイーブンに戻す。
これで波に乗ったシーウェイブスは、続くキックオフでLOマシューが豪快なキャッチングから大きくゲイン。さらにHO伊藤-NO8ヘンウッドとつなぎ、一気にゴールラインに迫る。このチャンスはSOキャメロンのカットパスがスローフォワードの判定でトライにはならなかったが、シーウェイブスのWTB菅原祐輝への危険なタックルでヒートWTB生方信孝がシンビンに。一連の流れで得た2度目のゴール前でのマイボールラインアウトで、NO8ヘンウッド-CTBヘルダス・ファンデルヴォルトと強いランナーによるサインプレーで突破してトライを奪い、17-10と勝ち越して前半を折り返した。
サイドが入れ替わった後半も、シーウェイブスのアグレッシブな姿勢にヒートが食い込まれるシーンが続く。風上に立ったこともあって敵陣に攻め込む機会も多く、立ち上がりの5分で立て続けに22メートルライン内でのマイボールラインアウトの機会をつかんだ。
しかしスローイングの乱れでこのチャンスを仕留め切れず、50分の左中間約45メートルのPGもわずかに右にそれて失敗。貴重な得点機を相次いで逃すと、流れは徐々にヒートの側へと傾いていく。その後も細かいミスやペナルティが重なり、ヒートがシーウェイブス陣に攻め入る場面が増え始めた。
ゲームが動いたのは62分だ。敵陣22メートル線内のラインアウトを起点にヒートが連続攻撃でボールを動かし続け、途中出場のSOジョノ・ランスの背後から走り込んだWTB生方信孝がディフェンスラインをブレイク。パスを受けたCTB渡邉弐貴がタックラー2人をかわし、左中間に押さえる。
これで2点差に詰め寄ったヒートは、なおも逆風の中で辛抱強くボールを動かして攻め続け、ゴール正面でペナルティを獲得。68分のSOランスのPG成功で、ついに18-17と試合をひっくり返した。
そこからのラスト10分の攻防は壮絶だった。ヒートがスピードに乗ったアタックでたびたび敵陣22メートルライン内に攻め込むも、シーウェイブスは集中力高くディフェンスし続けてボールを奪い返し、すかさず切り返す。そして迎えた79分過ぎ、渾身のタックルとジャッカルで相手のノットリリースザボールを誘うと、SOキャメロンのタッチキックが風に乗って一気に敵陣へ。
残り時間がなくなったことを知らせるホーンが鳴らされる中、シーウェイブスが懸命にフェーズを重ねたところでヒートにラインオフサイドの反則があり、レフリーの右腕がホストチームの側に上がる。シーウェイブスのCTB小野航大キャプテンは、ここでPGを選択。
距離は約40メートル。決まれば逆転。緊迫した静寂の中、SOキャメロンの右足から放たれたボールはゴールに向かって伸びていったが、無情にもポールをかすめて右にそれた。17-18。直後にノーサイドを告げるホイッスルがスタジアムに響いた。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン2
【第9節ハイライト】釜石シーウェイブス vs. 三重ホンダヒート
惜しくも1点差で勝利はならなかったシーウェイブスだが、マツダスカイアクティブズ広島に19-21で痛恨の敗戦を喫した前節からよく立ち直り、今季ベストといえるパフォーマンスを発揮できたことは、チームにとって大きな収穫だろう。地元釜石でのホストゲームで絶対に白星をつかみ取るという強い意志は、応援に駆けつけたファンにも伝わったはずだ。次週の花園近鉄ライナーズとのリーグ戦最終節、さらにはその先に控える順位決定戦と入替戦に向け、この流れを大事にしたい。
ヒートにすれば前日の結果により3位が確定し、モチベーションの部分で難しさがあったのは事実だろう。優勢に試合を進めながら主導権を握れず、課題の多く残る冷や汗ものの勝利となったが、一方で万全ではない内容でも勝ち切れたのは、地力の証といえる。この経験を次週以降のクライマックスの戦いにどうつなげていくか、ここからが真価の見せどころだ。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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