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ラグビー初開催となった静岡県静岡市のIAIスタジアム日本平は、ジャパンラグビーリーグワン最高峰「ディビジョン1(D1)」で3勝7敗(9位)のホスト、静岡ブルーレヴズの新たなホストスタジアムのひとつだ。
ここへビジターとしてやってきた8連勝中(2敗)の埼玉ワイルドナイツ所属、日本代表のPR稲垣啓太は試合後、スタジアムの雰囲気、芝を絶賛した。
「芝生はすごく良かったです。昨日から雨が降っていましたが、いざ触ってみると良い状態。これまでの経験の中で3本の指に入るくらい素晴らしい芝でした」
「スタジアムはどんな雰囲気かなと思ったら、終始エンターテイメント性を感じました。こうした雰囲気は『いいな』と思いましたね。『ラグビー+エンターテイメント』の部分が周知されていけば、ラグビーに興味を持っていただける方が増えるのではと思いました」
最高の舞台で、リーグ最高峰の大熱戦が展開された。
8連勝中の昨シーズン王者を苦しめ、金星寸前のファイトを披露したのは、青いジャージーに白襟を立て、精度の高いディフェンスを披露したブルーレヴズだ。
3月27日(日)、IAIスタジアム日本平で行われた第11節交流戦で、優勝候補のワイルドナイツが苦戦していた。
静岡県のホストチームとして県中央部、静岡市に初登場したブルーレヴズは開始早々、強烈な先制パンチを見舞った。
この日ワイルドナイツを熱戦に引きずり込んだ要因の一つが、的確なタックル、粘り強いディフェンスだ。
一方、堅守がチーム文化のワイルドナイツは、ラインアウトなどで高精度の守備を見せて決定機を与えない。逆に相手のラックでの反則(サイドエントリー)から3点を先制した。
しかしブルーレヴズも守備で奮闘。FL庄司拓馬のジャッカルなどで再三ワイルドナイツを押し返す。ブルーレヴズDFの奮闘もあり、この日のワイルドナイツのハンドリングエラーは12回(ブルーレヴズは5回)に上った。
そして昨季王者のワイルドナイツに拮抗できた別の要因が、前半戦のスクラムだ。
「ブルーレヴズさんはセットプレー(スクラムやラインアウトなど)からゲームを動かしてくることは分かっていたので、そこで前半、スクラムのペナルティでも勢いを与えて締まったことは反省です」(ワイルドナイツHO坂手淳史キャプテン)
ブルーレブズは前半20分、相手ボールスクラムをプッシュしてターンオーバー。先発FW8人の合計体重は831キロ。ワイルドナイツの884キロに比べて約50キロも少ないが、技術とパワーで優勢となった。
状況を打開できるスペシャルな選手がいたことも大きかった。
サム・グリーン(静岡ブルーレヴズ)
27歳になった司令塔のサム・グリーンだ。
SOグリーンは前半1分のファーストプレー、PK(ペナルティキック)からのタッチキックで、チームを相手ゴール目前に前進させる“特大タッチキック”を披露。
するとフルバックもできるスピードランナーは前半26分。
スクラムからCTBヴィリアミ・タヒトゥアが突進。しかしCTBタヒトゥアは鋭いパスを後方に送ると、待っていたグリーンがタックル名手の日本代表CTBディラン・ライリーを振り切って快走。
鮮やかな逆転トライで5点を奪ったブルーレヴズは、さらに3分後。
WTBキーガン・ファリアの特大キックで敵陣に入ると、ワイルドナイツの珍しいラインアウトのミスから攻守交代。連続攻撃からふたたびサム・グリーンが斜めにDFラインを切った。
後半39分には“伝家の宝刀”強力スクラムでの強制ペナルティを奪って、さらにPGを追加。下馬評をくつがえし、ブルーレヴズの12点リード(15-3)で後半へ向かった。
しかし後半開始早々、王者のワイルドナイツが実力を見せる。
まず活躍したのは大東文化大学出身のSH小山大輝だ。
ワイルドナイツは自陣のインターセプトで攻守交代を起こすと、前半にはなかったCTBハドレー・パークスのショートキックから再獲得。SH小山がラック脇の無人を見つけて独走。開始1分も立たずに7点を返した。
さらにSH小山は直後のラックでも相手SH田上稔にプレッシャー。ブルーレヴズは立て続けにペナルティを犯してしまいPGで失点。
12点あったリードが、後半開始6分間でわずか2点になってしまった。
しかし後半17分、ワイルドナイツの猛タックラーであるCTBライリーが、WTB中井への危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)。
ところが試合巧者のワイルドナイツは慌てず、リーグ随一のリザーブ陣が力を発揮。後半はスクラムの形勢が逆転した。
ワイルドナイツは途中出場の日本代表の両PR、グレイグ・ミラーとヴァルアサエリ愛が入ると、逆にブルーレヴズからスクラムでペナルティ奪取。この反則をPG加点に繋げて、14人ながら16-15と逆転してしまう。
しかし相手が14人のうちにスコアしたいブルーレヴズ。
ハーフウェイライン付近の左スクラムからフェーズプレーで攻撃。FB奥村のライン突破で敵陣22m内へ。悲鳴にも似たホストの応援のなか、白熱の攻防を仕留めたのはFLクワッガ・スミス。
逆転トライ&コンバージョンで、ついに6点リードを奪ってみせた。
その後両軍PGを1本ずつ取り合い、迎えた最終盤だった。
1点リードのブルーレヴズだが、途中出場のHO堀江翔太をまじえたワイルドナイツはスクラムでプッシュ。お株を奪うペナルティ奪取で、最後まで敵陣に居座った。
一方のブルーレヴズは故意の反則によりFL庄司がシンビンに。
ジャック・コーネルセン(埼玉ワイルドナイツ)
落ち着いて仕留めにかかるワイルドナイツ、最後はバックス経験も豊富なFL布巻峻介の鋭いパスアウトから、NO8ジャック・コーネルセンがインゴールへ確実にグラウンディング。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1
【第11節ハイライト】静岡ブルーレヴズ vs. 埼玉ワイルドナイツ
SO松田の逆転コンバージョンが決まり、26-25でワイルドナイツが大熱戦を勝ちきった。
勝負を決めるコンバージョンを含めたプレースキック6本をすべて成功させたほか、絶妙な守備も見せ、勝利に大貢献したSO松田力也は試合後に「タフなゲームになった」と語った。
「しかし、勝って目指すところに向かっていけることはポジティブです。チーム一丸で良い絵を見ることができました。まだまだレベルアップできると感じています」
ワイルドナイツはこれで9連勝(2敗)。次戦は一週空いて4月9日(土)、3勝8敗(11位)のシャイニングアークス東京ベイ浦安を本拠地・熊谷に迎える。
一方の8敗目(3勝)を喫したブルーレヴズ。大黒柱のサム・グリーンが試合後に語った。
「チームは80分間頑張ってプレーしたと思います。しかしワイルドナイツが上手にプレーして、我々は勝つことができませんでした。彼らはなぜリーグのトップなのかを示しました。本日はサポート、応援ありがとうございました」(SOグリーン)
次戦はふたたびホストゲーム。
前身であるヤマハ発動機ジュビロ時代の思い出も染み込んでいる静岡県磐田市のヤマハスタジアムで、こちらも4月9日(土)、3勝8敗(8位)のリコーブラックラムズ東京を迎え撃つ。
負けはしたが、大熱戦をホストのファンに届けたブルーレヴズ。「最後まで手に汗握る展開に興奮しました!」「次節も見に行きますのでぜひ勝利を!」チーム公式Twitterには熱い激励が届いている。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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