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グレイグ・レイドロー(シャイニングアークス東京ベイ浦安)
3月27日(日)、江東区夢の島競技場は気温20度という暖かさ。一気に開花した桜が熱心なラグビーファンを迎えた。ホストのシャイニングアークス東京ベイ浦安(SA浦安)は、ここまで2勝8敗でディビジョン1の最下位。対するブラックラムズ東京(BR東京)は、3勝7敗の8位。ともに浮上のきっかけをつかみたい戦いだった。
ホームのファンを喜ばせたいSA浦安だが、試合直前に攻撃の要であるFBイズラエル・フォラウが負傷で出場を回避する事態となる。代わってFBには、ヘンリー ブラッキンが入り、当初出場の予定がなかったSHグレイグ・レイドローが先発となった。午後2時30分、SA浦安SOオテレ・ブラックがキックオフのボールを蹴り上げる。前節、東京サンゴリアスのスピーディーな攻撃にディフェンスを破られたSA浦安だが、BR東京に対しては立ち上がりから激しく前に出て重量感のあるタックルを次々に決めた。
その先頭に立ったのは、怪我から復調し第2節以来の先発となったNO8リアム・ギルだ。まずはPKから速攻を仕掛けてチャンスを作り、ブラックの先制PGにつなげる。続く5分、SA浦安はCTBトゥクフカトネがディフェンダー2人を弾き飛ばし、CTBシェーン・ゲイツがディフェンスを突破。倒されながらもパスをつなぎ、WTB石井魁がトライをあげた。直後のキックオフからはレイドローがハイパントを蹴り、キャッチしたBR東京SOアイザック・ルーカスにギルがタックル。その後の攻防でもギルがガツガツとボール争奪戦に参加してボールにからみ、BR東京にプレッシャーをかけ続けた。序盤の流れを作ったのは、元オーストラリア代表のギルであり、元スコットランド代表のレイドローだった。
前半13分、勝敗を大きさ左右する出来事が起きる。自陣でボールをつなごうとしたギルに対し、BR東京NO8ブレア・カーワンが猛然とタックルに行ったが、勢いあまって頭部にコンタクトしてしまったのだ。これでカーワンにはレッドカードが出て退場処分。BR東京は以降、一人少ない14人での戦いを余儀なくされた。一方のギルもその後、脳震とうのチェックで、そのまま交代。ギルを失ったのはSA浦安にとって痛かったが、ディフェンスコーチのマット・コーベインからの指示通り前に出続け、PR齊藤剣、中島進護らのFWだけではなく、BK陣もジャッカルでボールを奪うなど、BR東京の掲げる「フィジカルアタッキングラグビー」を封じた。さらにPG、トライを追加し、前半終了間際、BR東京のルーカスに1トライを奪われたものの、18-5と13点リードで前半を終えた。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1
【第11節ハイライト】シャイニングアークス東京ベイ浦安 vs. ブラックラムズ東京
中島進護(シャイニングアークス東京ベイ浦安)
後半もSA浦安の勢いは衰えず、10分、ラインアウトのモールからの連続攻撃で中島がトライをあげて25-5とすると、ブラックがPGを追加し、28-5とリードを広げる。勝利を決定づけたのは、後半18分のFLジェームズ・ムーアのトライだった。ハーフウェイライン付近で石井が相手ボールをジャッカルで奪い、ブラック、レイドローがパスをつなぎ、いったんは止められたが、トネがつなぎ、最後はHO藤村琉士からムーアにパスが渡った。チャンスを作りながらトライできなかった前節までの戦いがウソのように、この日のSA浦安は攻撃がつながった。
後半29分、BR東京FBマット・マガーンにトライを奪われ、35-12と迫られたが、33分、交代出場のSH湯本睦の好走から石井がトライし、ダメを押した。プレーヤーオブザマッチは、セットプレーの軸となり運動量豊富に動き回ったHO藤村琉士が初受賞。LO中島進護は「アークスアタックを体現できました」と語った。フィールド広く使ってボールを動かし続けるプレースタイル「アークスアタック」を作り上げてきたロブ・ペニー監督は安堵感を漂わせつつ語った。「80分にわたって良いパフォーマンスを見ている人に楽しんでもらえたことは嬉しいです。今季はコーチングスタッフが変わり、新しい選手も入って来て、コンビネーションを合わせるのに時間がかかっている。ようやく軌道に乗ってきたので、これからこのチームの未来は明るいと思います」。SA浦安は順位を一つ上げ、次節(4月9日)、アウェイで3位の埼玉ワイルドナイツに挑む。
一方、大半の時間を14人で戦ったBR東京の武井日向キャプテンは完敗を認めた。「ブレイクダウン、フィジカルバトルのところで、まったくよいパフォーマンスができませんでした。スクラムでもプレッシャーを受けて流れを持っていかれました。言い訳しても成長できません。この事実を受け止め変わっていくしかない。僕自身が行動で示していきたいと思います」。BR東京の順位は8位のまま変わらず。次節(4月9日)は、静岡ブルーレヴズとアウェイで戦う。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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