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東芝ブレイブルーパス東京にとっては大きな勝利だ。
コベルコ神戸スティーラーズ vs. 東芝ブレイブルーパス東京
リーグ戦も残り6試合となり、上位4チームによるプレーオフ進出へ向けひとつのゲームがいっそう重い意味を持ってくる状況。しかも相手は勝点4差で背後に迫ってきたコベルコ神戸スティーラーズだ。負ければ順位が入れ替わる可能性もある中、3季前のトップリーグ王者を相手にビジターゲームで6トライを挙げてつかんだ一勝は、チームに確かな自信と勢いをもたらすだろう。
アタック力が持ち味の両者らしく、ゲームはキックオフ直後からアグレッシブに仕掛け合う動きの多い展開となった。先制したのはブレイブルーパスだ。マイボールのキックオフで相手のミスに乗じていきなりチャンスをつかむと、そのままテンポよく前に出続け、CTBティム・ベイトマンが開始54秒でノーホイッスルトライを挙げる。
ホストチームのスティーラーズもすかさず反撃。タテとヨコを組み合わせた流れるような連続攻撃でゲインを刻んでペナルティを獲得すると、ゴール前のラインアウトからモールをドライブし、HO有田隆平がゴールラインを越える。ゲームキャプテンのSO李承信のコンバージョンも決まってすぐに7-7と追いついた。
しかしこの日のブレイブルーパスは、相手にスコアされた後の集中力が見事だった。9分に接点でプレッシャーをかけて反則を誘い、SOトム・テイラーが正面約30メートルのPGを通して勝ち越すと、自陣でのピンチをしのぎ切って迎えた16分には、ラインアウトからのBKの右展開で大外のスペースを攻略。WTBジョネ・ナイカブラの防御裏へのキックボールがFB豊島翔平の胸にすっぽりと入り、17-7とリードを拡大する。
攻めあぐねるシーンが続いていたスティーラーズも34分、相手ボールのスクラムでSH日和佐篤が判断よくチャージをかけターンオーバー。一連の流れでたたみかけ、鋭く縦に切れ込んだFB山中亮平がインゴールにボールを押さえる。ただブレイブルーパスもここでひるまず、コンタクト局面で厳しく体を当ててスティーラーズのエラーやペナルティを誘発。そこからSOテイラーが40分に2本目のPGを成功させ、20-14として前半を折り返した。
後半も立ち上がりから接点で熾烈なバトルが繰り広げられる中、先に得点を刻んだのはスティーラーズだった。51分、WTBアタアタ・モエアキオラがパワフルなランで右ライン際をブレイクし、自陣から一気に敵陣22メートルライン付近までゲイン。たまらずブレイブルーパスが反則をおかしたところでPR中島イシレリがクイックタップで仕掛け、右中間に飛び込む。SO李のゴールも決まり、この日初めてスティーラーズがリードを奪った。
流れが変わりそうな場面だったが、ここでもたくましさを誇示したのはブレイブルーパスだった。攻守に厳しく体を当てて敵陣で試合を進めると、58分、連続攻撃で相手防御を揺さぶり、最後は左大外に位置していたCTBセタ・タマニバルが豪快にタックラーを弾いてフィニッシュし再逆転。さらに66分にはゴール前中央スクラムの絶好のチャンスから、左サイドをSH小川高廣-SOテイラーであざやかに崩して仕留め、34-21と点差を拡大する。
トップ4入りへ望みをつなぐためには絶対に負けられないスティーラーズもここで意地を見せ、注目の新加入、南アフリカ代表のCTBルカニョ・アムのワールドクラスのパスとランから途中出場のSOヘイデン・パーカーが69分にトライを挙げ、ふたたび逆転圏内の6点差まで詰め寄った。しかし直後のキックオフからのアタックで、そのアムがボールをファンブルする痛恨のエラー。ブレイブルーパスのCTBタマニバルが球を奪うと、CTBニコラス・マクカランへとつないでトライを返し、39-28とする。
さらにブレイブルーパスは76分にも力強い連続攻撃でゲインを重ね、ギャップに走り込んだFLリーチマイケルが手を伸ばしてインゴールにグラウンディング。スティーラーズも79分にWTBモエキオラが4試合連続となるトライを挙げて11点差まで追い上げたが、追撃はここまで。ボーナスポイントが得られる7点差以内には届かず、46-35でブレイブルーパスが勝利を手にした。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1
【第11節ハイライト】コベルコ神戸スティーラーズ vs. 東芝ブレイブルーパス東京
これでブレイブルーパスは勝点4を加え、トータルの勝点は29に。順位は前節の6位から変わらなかったが、4位横浜キヤノンイーグルスとの勝点差は3にまで縮まった。得失点差もイーグルスの71に対し54と接近しており、5位トヨタヴェルブリッツとの次節(4月10日14時30分キックオフ、岐阜メモリアルセンター長良川競技場)の結果次第では、入れ替わってのトップ4入りの可能性もある。チームの顔であるFLリーチもここにきて急激にコンディションが上がってきており、逆転でのプレーオフ進出が現実味を帯びてきた印象だ。
一方敗れたスティーラーズは残り5試合で4位との勝点差が11となり、状況はかなり厳しくなった。ただ今後のスケジュールを見ると、埼玉パナソニックワイルドナイツ、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、そしてイーグルスと上位勢との対戦を残しており、4強争いの鍵を握る存在になりそうな予感はある。ケガ人の復帰や大物外国人選手の加入で戦力が整いつつあるだけに、最後までリーグ戦を盛り上げてくれることを期待したい。
文:直江 光信
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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