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埼玉ワイルドナイツ 坂手淳史選手
不戦敗後は破竹の7連勝。ジャパンラグビーリーグワンのディビジョン1で、3位まで駆け上がってきた埼玉ワイルドナイツ。
3月19日(土)は、埼玉・熊谷スポーツ文化公園ラグビー場で、3勝6敗(実戦2勝4敗)で8位のブラックラムズ東京を迎え撃った。
ワイルドナイツは先週から15人中4人を変更した。
金沢篤BKコーチは選手起用の方針について問われると、「その時にパフォーマンスの良い選手を使うことが基本的な考え方」とした上で、16試合あるレギュラーシーズンを念頭にこう語った。
「今は中盤ですが、長く戦っていく中で選手層を厚くしていく必要があります。今回はバックスでいくつか新しい選手が入った。そういう選手が出ることでチームに良い刺激があり、これからの後半戦に臨めると考えています」
その「新しい選手」がいきなり強烈な刺激を与えた。
埼玉ワイルドナイツ 山沢京平選手
開始26秒、キックカウンターでボールを受けた23歳のFB山沢京平はランを選択。3人の相手バックスを次々にかわし、復帰戦のファーストプレーで圧巻のロングゲイン。
明治大学で1年先輩の相手HO武井日向が飛びつき、ようやく止まった。
「今回はフルバックでしたが、カウンターアタックのところで非凡な才能を発揮してくれた。チームの中でコネクトして動けていましたし、楽しみな選手です」(ワイルドナイツ金沢BKコーチ)
FB山沢京平のランから敵陣に入ったワイルドナイツは前半2分、PR平野翔平がラックライドを制して先制トライ。
前半11分には22歳のWTBセミシ・トゥポウがグラバーキックを冷静に押さえて連続トライ。4分後にPG(ペナルティゴール)も決め、15点をリードした。
ブラックラムズ、逆襲の起点となったのは豊明高校-中京大学と歩んだWTB西川大輔のジャッカルだ。
このペナルティから速攻したブラックラムズは敵陣に入り、最後はPR千葉太一が押し込み、雄叫びを上げた。
追いつきたいブラックラムズだが、前半39分にトライを許し、15点ビハインド(7-22)で後半に入る展開。
ブラックラムズのHO武井キャプテンは試合後「課題は相手陣に入ったところでトライを取ること。自分たちのディシプリン(規律)などでのミスから取り切れませんでした」と語った。
しかし規律を守りながらフェーズを重ねれば、スコアできる自信があった。
序盤から攻撃の要として機能していたのが愛称「ミルキー」のSOアイザック・ルーカスだ。
愛称の由来について問われると、みずから冗談めかして「色白でサンスクリーン(日焼け止め)をよく使っているからでしょう」(SOルーカス)。異能の23歳は、パナソニック攻略のプランについて問われると「辛抱強くあり続けること」と答えた。
「辛抱強くフェーズを重ねれば結果は出ると思っていました」(SOルーカス)
後半5分、その「結果」が出た。
しかし昨季王者のワイルドナイツは大崩れしなかった。
「後半の最初、特に自陣でペナルティを犯してプレーしてしまいましたが、修正できるペナルティだったので、その後切り替えて修正できました」(ワイルドナイツHO坂手淳史)
埼玉ワイルドナイツ 堀江翔太選手
後半19分には堀江翔太がフランカーで投入。これで前身の三洋電機、パナソニックから数えてチーム公式戦162キャップ。引退した北川智規、現役のヒーナン・ダニエルを上回りチーム最多を記録した。
ワイルドナイツで大車輪の活躍だったのは、80分間出場し、プレイヤー・オブ・ザ・マッチも受賞したHO坂手淳史キャプテンだ。
得意のディフェンスではチーム最多19タックルを放ち、アタックでもチームFWで2位タイの9キャリー。ラインアウトは13回すべてのスローイングを担当し、成功率100%を達成した。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1
【第10節ハイライト】埼玉ワイルドナイツ vs. ブラックラムズ東京
そのラインアウトで、前半32分にモールを組んで“フランカー”堀江翔太がこの日チーム4トライ目。「堀江さんと一緒に出場したのはたぶん初めて」(HO坂手)という2人がモールで仕事を果たし、首尾よく仕留めた。
最終スコアは29-12。ワイルドナイツはこれで直近のリーグ戦 で25 戦24勝1分けとなった。
敗戦は喫したが、見応え十分のファイトを見せたブラックラムズ。指揮官のピーター・ヒューワットHC(ヘッドコーチ)は試合後、厳しい事情を明かした。
「13人のフォワードがプレーできない状態です。基本的にはケガによる欠員で、フッカーがバックローをしたりしています」
ただ指揮官が内情を明かした意図は、戦力不足が敗因だったと主張することではなかったようだ。
「我々は言い訳をしないチーム。誰が出ようが、相手が誰であろうが良い試合をします」
ブラックラムズは4勝目を懸けて3月27日(日)、2勝8敗のシャイニングアークス東京ベイ浦安と相まみえる。
8連勝を飾り、順位に変動はないものの「リーグ初代王者」の期待がいや増す強さのワイルドナイツ。
「まずホストゲームでしっかり勝てたことは素晴らしい結果。今日はメンバーがいろいろ替わったり、新しい選手が入ったなかでの勝利で、難しい時間帯もありましたがうまく選手が対応していました」(ワイルドナイツ金沢BKコーチ)
ワイルドナイツの次節は3月27日、ラグビー初開催となる静岡・IAIスタジアム日本平で、ビジターとして9位(3勝7敗)の静岡ブルーレヴズと対戦予定。昨季王者の連勝街道はどこまで伸びるのか。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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