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どちらも持ち味を発揮して存分に攻め合った。刻まれた10本のトライはいずれもエキサイティングなものばかり。見応えあるシーンが連続する80分は、国内最高峰リーグのトップディビジョンにふさわしい迫力と躍動感に満ちていた。
体を当てる接点に強いこだわりを持つ両者の激突らしく、開始直後からコンタクトエリアのバトルは熾烈を極めた。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのNO8ファウルア・マキシが相手を抱え上げてボールをもぎ取れば、東芝ブレイブルーパス東京もWTB桑山淳生が出足鋭いディフェンスで突き刺さり、ターンオーバーを勝ち取る。
目まぐるしく攻守が入れ替わる立ち上がりの中、最初にスコアが動いたのは6分だった。敵陣22メートルライン付近でブレイブルーパスが左オープンへ振ったところを、スピアーズのNO8マキシが判断よく飛び出してパスカット。サポートに上がったSO岸岡智樹が約50メートルを走り切り、先制のトライを挙げる。
ブレイブルーパスもすかさず反撃。9分、テンポよく球を散らして相手防御を揺さぶり、中央ラックからの右展開で大外のCTBセタ・タマニバルにボールが渡る。2人のタックルを受けながら得意のオフロードで内のFLマット・トッドにつなぐと、さらにポンと浮かせたパスをSH小川高廣がつかんでゴールラインを超えた。SOトム・テイラーのコンバージョンも決まり、7-7に追いつく。
もちろんスピアーズはここで引き下がらず、怪物PRオペティ・ヘルの突進を起点にLOルアン・ボタ、NO8マキシと強いFWで縦にたたみかけて勝ち越し。さらに21分にはゴール前ラインアウトから早いテンポで左順目にラックを重ね、SO岸岡からの長いカットパスを大外で受けたWTB根塚洸雅が左コーナーへ。19-7とリードを広げた。
第7節のデビュー以来インパクトある活躍を続けるルーキーが記念すべきリーグワン初トライを挙げれば、今度はブレイブルーパスの弾丸ランナーが圧巻の走りでスタジアムをどよめかせる。32分、TMOでトライキャンセルになった後のペナルティで相手のキックがノータッチになると、そこからのカウンターアタックでWTBジョネ・ナイカブラが鮮やかにラインブレイク。そのままディフェンダーをぶっちぎってインゴールへ駆け抜け、5点差に詰め寄った。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1
【第10節ハイライト】東芝ブレイブルーパス東京 vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
しかし取られたらすぐ取り返せるのが、いまのスピアーズのたくましさだ。直後の36分、こちらも中盤のキックレシーブから左に振ってWTB根塚がボールを手にすると、ミスマッチを見逃さずに抜いて一気に駆け上がる。外をサポートしたCTBライアン・クロッティが悠々とインゴールを陥れ、26-14として前半の40分を折り返した。
後半。意地をぶつけ合うような激しいせめぎ合いに15分過ぎまでスコアボードが膠着する中、またしても均衡を破ったのは目下絶好調のルーキーだった。
57分、中央のスクラムから立川理道-クロッティのCTBコンビが円熟のパスワークでオーバーラップを作り出し、ボールは左ライン際のWTB根塚へ。ひとり目のディフェンダーをハンドオフで振り切ると、カバーディフェンスにきたFB松永拓朗のタックルも巧みなボディバランスで弾いて、左スミに飛び込む。
これで2チャンスでも届かない点差までリードを広げたスピアーズは、68分にもFBゲラード・ファンデンヒーファーが正面35メートルのPGを通し、36-14と突き放しにかかる。ホストチームのブレイブルーパスもここで気落ちせず、力感あふれる縦の連続攻撃から75分にHO森太志がトライを返したが、スピアーズは78分、ターンオーバー起点の切り返しでWTB金秀隆がきれいに外を抜いてインゴールへ。続くキックオフからブレイブルーパスが意地を示すトライを挙げたところで、フルタイムとなった。
終わってみれば43-28の完勝といえるスコアで、8勝目を手にしたスピアーズ。終了間際の失トライでボーナスポイントを逃したのは惜しまれるが、プレーオフ進出圏となるトップ4入りの足場を固めるとともに、タイトル獲得に向けまた一歩チームの成熟が進んだことを感じさせる勝利となった。なおプレーヤー・オブ・ザ・マッチは、2トライに加えたびたびビッグゲインを見せたWTB根塚が獲得。出場4試合で2度目の選出という充実ぶりだ。
敗れたブレイブルーパスは細かい部分のミスが続き、攻め込んだところで仕留め切れないシーンが複数あったことが敗戦の主因となった。もっとも、12チーム中トップの数字を誇るオフロードパスを存分に生かした果敢なアタックは、見る者をワクワクさせるような魅力をたたえていた。残り6節、どこまでプレーの精度を高められるかが、浮上の鍵となりそうだ。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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