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相馬新監督(左)と岩出監督
3月10日(木)、大学選手権で帝京大学ラグビー部を10度目の優勝に導き、今季限りの勇退を発表していた岩出雅之監督と、新たに指揮官に就くことになった相馬朋和監督の2人が会見を開いた。
なお、岩出前監督は4月から新設される「帝京大学スポーツ局」の初代局長に就任する。相馬新監督は昨年度、コーチとして埼玉パナソニックワイルドナイツの優勝に貢献した後、コーチとして学生たちを指導しており、今季から監督となり、専任講師として授業を持ちながら大学生たちのラグビー指導に携わる。
1月の大学選手権で10度目の優勝を飾った後に、今季限りの勇退を表明していた岩出前監督は改めて「26年間、お世話になりました。その間、様々な挑戦をさせていただき、結果として、いい監督生活を送れた。バトンを引き継いでくれる指導者がいるということで、幸せをとても感じています。勝利が大きな喜びですが、学生たちの成長も大きなモチベーションでした。この場をもって、贅沢な監督の終わり方ができてうれしく思います」と挨拶した。
岩出氏は4月からスポーツ局局長
そして岩出監督は、相馬朋和氏を新監督として紹介した。岩出監督にとって相馬氏は、高校日本代表時代はコーチと選手という間柄で、1996年に監督1年目の1年生にあたるという。相馬氏が帝京大学を卒業した後も、岩出監督は師の1人として相馬選手を見守ってきた。
相馬新監督は、帝京大学卒業後は三洋電機(元埼玉ワイルドナイツ)で右PRとして数々のタイトル奪取に貢献し、日本代表でも24キャップを誇り、2007年ワールドカップにも出場した。現役中からOBとして帝京大学の学生を指導しており、引退後の2014年から2年間はスクラムコーチも務めるなど関係を深めてきた。
岩出前監督は「選手として、時間を見て後輩たちの指導にも何度も来ていただいている姿を見させていただいて、将来は相馬くんに託すのかなと途中から思っていた。情熱的な指導も、そして母校ということもありますが、後輩たちへの愛情ある接し方にも指導者としての魅力を感じた」と話す。
岩出前監督は10年ほど前から後任を誰にするか考えていたという。その中で数人を候補に考える中で、相馬新監督が指導してきた埼玉ワイルドナイツが最後のトップリーグで優勝し、「区切りとして一番いいのでは」と相馬氏に監督を受け継いでくれるように打診したという。そして昨季、岩出前監督自身「あと2~3年くらいは監督をやるエネルギーがあった」というものの、10年後、20年後の帝京大学ラグビー部を考えて決断した。
相馬新監督は現役中から「指導者になろうと思っていた」といい、埼玉ワイルドナイツでスクラムコーチやヘッドコーチなど務めた。ただ、「現役中から母校で学生とふれあう機会をもたせていただきながら、大学生がラグビーを通して成長する姿を見て、それで得られる自分の喜び、充実感が他のものと比べる代え難いものと感じていた。もちろん、他の道もあったかもしれないが、これが必然だと思っています。私にはこの選択が最善で、これ以上にないものだと思います」と大学の監督になる決意を語った。
色紙には「一生懸命」
相馬新監督が色紙に書いた言葉は「一生懸命」だった。「人より優れたことがあるのであれば、一生懸命頑張ることだけだと思う。まだまだ至らぬ点ばかりだと思いますが、一生懸命、目の前にいる学生と1日1日大切にしながら、目の前の試合で、いいプレーができるように手助けできたらと思っております」。
岩出前監督は「帝京大学スポーツ局」の初代局長となり、ラグビー部だけでなく帝京大学のさまざまな運動部全体を統括する立場となり、帝京大学のスポーツ振興、スポーツブランドの確立・強化、さらにはスポーツを通して社会発展に寄与していくという。
岩出前監督はラグビー部としての肩書きはなくなるが、メンターの1人として相馬新監督の相談に応じていくという。「あまり側にいすぎると(相馬新監督が)気を遣うと思うので、一番いい立ち位置で、いい意味で相談役、いい意味で見守るだけの存在でお付き合いしていければいいなと思います」と話した。
相馬新監督は埼玉ワイルドナイツの名将ロビー・ディーンズ監督、そして岩出監督の下でコーチを経験し「驚くほど共通点が多い」と感じた。「岩出さん、ロビー監督にも教えるより、よく観察しなさい、よく見ることからはじめなさいと言われました。どうしても感情、情熱が先走って教えたくなってしまうが、ちょっと待ちなさい、見てからにしなさい、と。自分がコーチになるときに最初の一歩をいただきました」と振り返った。
新たな指揮官として相馬監督はどんな指導をしていきたいかと聞かれると「言葉にすると(帝京大ラグビー部のいいところを)守っていきたいと思います。周りの人に聞きながら、今あるものを大切にして、新たなものを加えていけたらと思います。まだまだ見るべきものが多すぎて、まずは見ること、そして、なぜそうなのかなど、考えることから始めたい」と話すにとどめた。
26年間の監督生活を終える岩出氏(右)
岩出監督は26年間、帝京大学ラグビー部を指導し、2009年度からは大学選手権9連覇、そして2007年度からの15年間で14度の大学選手権ベスト4以上に導くという実績を残した。当然、相馬新監督は「監督を引き受けるかどうか」を悩み、今でも「毎日、夜寝る前、朝起きる時、責任の重さで押し潰されそうになる」と正直に吐露した。
ただ、決意を固めての大学指導者への転身だった。昨秋、相馬新監督はパナソニックを退社、実質的に夏合宿から帝京大学でのコーチングをスタートしており、新チームもすでに始動している。現役時代よりも大きくなった体重130kgの巨漢監督は「なんとかこのチームをさらに未来のチームにできるように頑張っていきたい」と大きな胸を張った。
新監督の15人制ラグビーにおける初采配は4月末だという。「なんでも指導します」と語気を強めた相馬新監督は当然、就任1年目での大学選手権優勝、連覇を見据えて強化を押し進めていく。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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