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NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 vs. 埼玉ワイルドナイツ
別カンファレンスのチームが対戦するディビジョン1の交流戦は、今節で3週目を迎える。各チームの力関係が明らかになってくるとともに、順位争いも徐々に緊張感が高まってきており、今後さらに目の離せない戦いが繰り広げられそうだ。そうした中、3月5日土曜日のヤンマースタジアム長居では、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪と埼玉パナソニックワイルドナイツの一戦が行われる(12時キックオフ)。
現在の順位表を見ると、2勝5敗、勝点10で10位のレッドハリケーンズに対し、ワイルドナイツは5勝2敗で勝点22の4位。ただし中止になったゲームがレッドハリケーンズに3試合、ワイルドナイツは2試合あり、実施されたゲームに限ればレッドハリケーンズは4戦全敗、ワイルドナイツは5戦全勝で、ここまでは対照的な足取りになっている。構図としては、ホストチームのレッドハリケーンズが昨季トップリーグ王者のワイルドナイツにどこまでチャレンジできるか――という形になるだろう。
レッドハリケーンズにとって痛かったのは、今季のチームの顔になるはずだった現役南アフリカ代表のSOエルトン・ヤンチースが初戦で肩を負傷し、長期離脱を余儀なくされたことだ。ヨハン・アッカーマンヘッドコーチとは南アフリカのライオンズでもともに戦った間柄で、スタイルを熟知する司令塔として期待されていただけに、その穴はあまりに大きかった。キャプテンのLOローレンス・エラスマスや日本代表のLO/FLヴィンピー・ファンデルヴァルトもケガで開幕節から欠場が続いており、我慢の戦いを強いられている。
もっとも、直近のゲームである第5節の東京サントリーサンゴリアス戦では、圧倒的な攻撃力を誇る優勝候補を相手に3-22と奮闘し、上昇の兆しを感じさせた。その後、2試合が立て続けに中止になり、今節は4週ぶりの実戦となるが、連戦の消耗から心身ともリフレッシュし、十分な準備期間を経て臨める点は、むしろプラス材料といえるだろう。不戦勝とはいえ勝点10が加算され、精神的に楽になった部分もあるはず。チャンピオンクラブに迷いなく挑戦できる条件は整っている。
ワイルドナイツは前節、昨季のトップリーグファイナルの再戦となったサンゴリアスとの大一番に34-17で快勝し、新生リーグワンでも先頭を走る存在であることをあらためて証明した。充実を支える最大の要因は、リーグ随一ともいえる選手層の厚さだ。激しいチーム内競争が余裕のあるメンバー起用を可能にし、コンディションのいいプレーヤーが出場した試合で活躍することで、さらにポジション争いが活性化する。そうした好循環が、誰が出ても変わらずチームとして質の高いパフォーマンスを発揮できる安定感につながっている。
ゲーム内容では、おなじみの堅守速攻スタイルが際立つ。ここまでの5戦でタックル成功率は約86パーセントと高い数字を記録しており、総失点122は首位クボタスピアーズ船橋・東京ベイの103に次ぐ全体2番目の成績だ。堅牢にして対応力も備える組織防御をベースに、ボール奪取からの切り返しで一気にゴールラインを越える――というのが得意のトライパターン。レッドハリケーンズにすれば、どのエリアで戦っていても気を抜けない80分になるだろう。
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 スターティングメンバー
登録メンバーを見ていくと、レッドハリケーンズは4週前のサンゴリアス戦から6人を変更。FWでは献身的な仕事ぶりが光るタイラー・ポールがLOから6番に下がり、リーグ屈指の推進力を誇るNO8ナエアタルイが第2節以来7週ぶりにラインアップに名を連ねた。サンゴリアス戦で公式戦初出場ながらインパクトを残したFL/NO8安田司は、リザーブからチームを勢いづける役割を担う。キャプテンを務めるのは、移籍2シーズン目のSO川向瑛。多彩なスキルと強気のリードで、WTBラリー・スルンガ、FB吉澤太一らアウトサイドの好ランナーを走らせたい。
埼玉ワイルドナイツスターティングメンバー
対するワイルドナイツは、前節からFW3人、BK2人を入れ替えた布陣で臨む。両PRにはクレイグ・ミラーとヴァルアサエリ愛が入り、5番はジョージ・クルーズからエセイ・ハアンガナにシフト。SH小山大輝は今季6試合目の出場でこれが初の先発だ。2度目のスタメンとなる万能BKのヴィンス・アソ、前節に続きFBで登場する山沢拓也など、アタック力に優れるタレントのプレーも注目される。
両チームの対戦で思い出されるのは、一進一退の緊迫した展開の末にワイルドナイツが26-13で競り勝った昨シーズンのゲームだ。TJ・ペレナラの強烈なリーダーシップに導かれて躍進を遂げたレッドハリケーンズにとっては、まだ上には上がいることを思い知らされた半面、自分たちの成長を確信できた試合でもあった。当時の会場はヤンマーフィールド長居で、今回はその隣にそびえ立つヤンマースタジアム長居。世界有数の設備を誇る巨大スタジアムで、昨年を上回る熱戦が展開されることを期待したい。
文:直江 光信
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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