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逆転トライを決めた石井魁
14人での逆転トライに、夢の島が湧いた。
ジャパンラグビーリーグワン「ディビジョン1」第7節、2月26日(土)は東京・江東区夢の島競技場で、1勝5敗(うち不戦敗3)のNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安が、3勝3敗(うち不戦勝1)の東芝ブレイブルーパス東京を迎え撃った。
ブレイブルーパスは「このリーグで勝っていくためには厚い選手層が必要」(ブレイブルーパス、トッド・ブラックアダーHC)という理由から、前節の埼玉ワイルドナイツ戦から先発の約半数を変更。
ホストのシャイニングアークスは、ワイルドナイツ戦からBYEウィーク(休みの週)に試合中止が重なり、3週間の試合間隔が空いた。実戦感覚では不利な状況だが、元帝京大主将のCTB本郷泰司をゲーム主将に据え、新加入のLOジェームス・ムーア、FBイズラエル・フォラウが先発入り。
そしてリザーブにはW杯4大会連続出場などで日本代表71キャップを重ねた鉄人、新加入のトンプソンルークが名を連ね、後半27分、背番号19を背負ってリーグワン初出場を果たした。
序盤は風上に立ったブレイブルーパスがSHジャック・ストラトンらの的確なキックで効果的に敵陣へ入った。前半3分には分析通りか、実戦感覚で後手を踏む相手の隙を突くようにWTB松延泰樹がクリーンブレイクから独走トライ。7点を先制した。
風上で快調に飛ばしたいブレイブルーパスだったが、この日の反省点はやはり被ペナルティキック(PK)の数。下の図のように、前半だけで敵陣で6つのペナルティを犯してしまった。
東芝ブレイブルーパス東京「被ペナルティ(前半)」
上図の通り、右から左に攻めるブレイブルーパスは、前半だけで敵陣で6つのPK(ペナルティキック)を許している。そして後半も敵陣で6つのPKを与えており、つまりは試合を通して敵陣に入りながらも12回攻撃権を奪われたことになる。
シャイニングアークスも11回のPKはあるが、敵陣でのペナルティは少なかった。シャイニングアークスは少ないチャンスを確実にものにした。
またしても規律が課題となったブレイブルーパスは前半13分、SHストラトンがハイタックルでシンビン(10分間の一時退出)。この間にFBイズラエル・フォラウに1トライ(前半23分)を返された。
その5分後の前半28分にはWTB濱田将暉がスクラムからの1フェーズ目でトライを取り切るが、同39分にはシャイニングアークスが連続攻撃。
CTB本郷が「準備していたことを上手くできた」と語るサインプレーから独走して自身今季初トライ。シャイニングアークスはこれがFBフォラウ以外の選手による今季最初のトライとなった。
14-14で迎えた後半、今度はシャイニングアークスが風上に立ったが、強風もあり15本中9回成功(69.2%)に留まったラインアウト、ハンドリグエラーで優位を活かせない。
ホストで今季2勝目を上げたいシャイニングアークスは、九州共立大で主将だった今季初先発のPR竹内柊平がジャッカル。敵陣に入ってフェーズプレーを挑むが、落球を誘うFLリーチの猛タックルなど、ブレイブルーパスの堅守を崩せない。FLリーチはこの日チーム最多14タックルをノーミスで決めた。
しかしスクラムは優勢。後半26分、背番号19のトンプソンが投入され、最初のプレーとなったマイボールスクラムで強制PKを奪取。ブルーズでスーパーラグビー・トランスタスマン優勝を経験しているSOオテレ・ブラックがショットを決め、後半30分を目前にして、ついに17-14と勝ち越した。
ところがシャイニングアークスはチームの反則の繰り返しにより後半31分、FL金正奎がシンビンとなり、後半41分までの10分間を14人で戦うことに。
ここでブレイブルーパスはゴール目前から大外に展開してWTB松延が逆転トライ。逆風の中、SO中尾隼太のコンバージョンを見事に成功させて4点リード(21-17)とした。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1
【第7節ハイライト】シャイニングアークス東京ベイ浦安 vs. 東芝ブレイブルーパス東京
シャイニングアークスは14人となったが、ここで風下のブレイブルーパスは、相手FBフォラウのキックカウンターへの警戒もあってか、後半は積極的にボールを保持。ポゼッションを高めたが、最終盤の後半35分でノックオンのミスが起きた。
ここからPR竹内、トンプソン、FBフォラウらがオフロードパスを重ねて8次攻撃目、CTB本郷が「確実に余っていると感じた」という右サイドに移動してボールを受け、最後はWTB石井魁が古巣ブレイブルーパスを窮地に追い込む逆転トライ。ゴールは失敗でリードは1点(22-21)に。
時間は余っており、逆転したいブレイブルーパスだったが、最後にカウンターラックを狙うなかで17回目のペナルティを犯し、万事休す。シャイニングアークスは開幕節以来の今季2勝目、ブレイブルーパスは4敗目を喫した。
ブレイブルーパスのトッド・ブラックアダーHCは、プレッシャー下での遂行が上手くいかなかったと振り返った。
「良いポジショニングの状況は数多く作れましたが、遂行する部分で上手くいきませんでした。基本的なことができなかったことでこのような結果になりました。相手は数少ないチャンスを掴みました。おめでとうと伝えたいです」
FLリーチは「東芝としては言い訳できない試合。良い部分もありましたが点数に変えられず負けてしまいました」と反省。
日本代表で共にプレーした途中出場のトンプソンについては「試合中に軽く挨拶をして、試合前すこしだけ挨拶しました。プレーをしている姿を見てとても嬉しいです」とピッチでの再会を喜んでいた。
トンプソン ルーク
そのシャイニングアークスのトンプソンは、試合後の記者会見に登場。ここまでの調整方法を尋ねられると「ここ2年は牧場でいろんな動物を追いかけていたのでコンディションは万全」と冗談めかしつつ、「調子は良く感じた」と振り返った。
「動きの部分で向上しなければいけないところはありますが、全般的には大丈夫だった。チームの将来のためにやるべき仕事をして手助けをしたいと思っています」
2勝5敗で12位のシャイニングアークスは次節、3月5日(土)に5勝2敗で3位のトヨタヴェルブリッツと敵地で対戦する。3勝4敗で6位となったブレイブルーパスは同日、5勝2敗の横浜キヤノンイーグルスと激突する。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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