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中国電力レッドレグリオンズ vs. 九州電力キューデンヴォルテクス
1988年創部の中国電力レッドレグリオンズと、1951年創部の九州電力キューデンヴォルテクスによる伝統の「電力ダービー」が、ジャパンラグビーリーグワンで初開催された。
両軍が所属するリーグワン・ディビジョン3で開幕節に予定されていた「電力ダービー」は、コロナ禍の影響で開催中止に。
しかし2月19日(土)、レッドレグリオンズがホストとなり、広島市のBalcom BMW Rugby Stadiumで、リーグ最初のダービーマッチが実現した。
ともに外国人選手以外はサラリーマン。長崎北陽台高-明治大と歩んだレッドレグリオンズの脊川穏監督は「始業から終業まで働いており練習開始は7時」と明かす。
大変なハードワークだが、キューデンヴォルテクスのFL高井迪郎共同キャプテンは「確かに日常はサラリーマンですが、お客様の前でフィールドに立っている時点で『我々はラグビー選手だ』という自覚はチームで強く持っています」と語る。
そんな殊勝なラガーマンたちによる伝統の一戦は、拠点がある広島では初となるホストゲームであり、実戦初勝利をめざす1勝(不戦勝)3敗のレッドレグリオンズにとっては、必勝の一番となった。
レッドレグリオンズの持ち味のひとつは全員による展開ラグビー。ブレイクダウンを連取しながら、多彩なオプションを持って攻撃を仕掛ける。
しかし当日はボールを大きく動かしたいチームには不利な悪天候。雨の影響により近場勝負となれば、ディフェンスにこだわりを持つ1勝3敗(不戦敗1)のキューデンヴォルテクスにとっては望むところだったろう。
キューデンヴォルテクスの実戦での2敗は、元トップリーチームの宗像サニックスブルース、豊田自動織機シャトルズ愛知を相手にどちらも7点差の惜敗だった。
そんな難敵のキューデンヴォルテクスを相手に、レッドレグリオンズは「雨のゲームでキックを多用するプラン」(LO西川太郎ゲーム主将)で臨んだ。
しかし一進一退だった前半13分、サンウルブズのレジェンドであるNO8エドワード・カークが負傷退場となるアクシンデントが起きた。
「彼(カーク)は経験豊富で、プレーの知識や、練習に取り組む姿勢などについて、練習中から教えてくれています。主にラインアウトの細かい技術的なところを丁寧に教えてもらっていて、個人的に勉強になっています」(レッドレグリオンズ、LO西川ゲーム主将)
そんな中心選手の一人を早々に欠くことなったレッドレグリオンズに対し、キューデンヴォルテクスは守備から主導権を握る。
前半14分に接点に強い流経大卒のSH児玉大輔のジャッカルから敵陣に入り、ラインアウトモールからルーキーのHO岡輝剛がグラウンディング。好守備を起点として7点を先取した。
レッドレグリオンズも果敢にボールを動かすが、前半22分にはふたたびSH児玉がジャッカル。さらにキューデンヴォルテクスは202センチのLOトム・ロウが片手でラインアウトスローをキャッチするなど、高さを活かしたラインアウトの攻防も光った。
FL高井共同キャプテンは、効果的だったラインアウトの攻防について「試合に出られないメンバーが相手を分析してくれて、週の頭などにメンバーに伝えてくれるとことが大きい」とチーム一丸の準備が奏功していると明かした。
反撃したいレッドレグリオンズは前半33分、猛タックラーのFL森山皓太の好判断から相手モールを崩してターンオーバー。ここから敵陣で猛攻に侵入し、相手反則からのショットで3点を返した。
キューデンヴォルテクスの4点リード(7-3)で前半を折り返し、さらにPG(ペナルティゴール)を追加して7点リードに広げた後半14分。
複数人で鋭いキックチェイスをかけるキューデンヴォルテクスは後半14分、キックゲームからWTB磯田泰成、SO松下彰吾がチェイスして敵陣深くで相手をダウン。ラックとなり、ここから敵陣に居座った。
すると後半17分、キューデンヴォルテクスは効果的な武器となったラインアウトモールで前進。最後はウェールズ留学をコロナ禍で断念し、キューデンヴォルテクスの一員となったNO8ウォーカー・アレックス拓也がトライ奪取。15-3とした。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン3
【第5節ハイライト】中国電力レッドレグリオンズ vs. 九州電力キューデンヴォルテクス
さらに直後のキックオフから、佐賀工業-関東学院大出身のHO岡輝剛がジャッカル。ヒルトンHCが「アグレッシブな心が素晴らしく、タックルは誰にも引けを取らない」と評価する佐賀工業-関東学院大出身のHO岡は、モールからの猛攻で後半22分にトライも奪取。チームはゴール成功で22-3と突き放した。
レッドレグリオンズも後半28分、FL森山のノックオンを誘うタックルからターンオーバー。敵陣に入るが、集散で勝るキューデンヴォルテクスはラックで数的優位となり相手反則を誘発。
キューデンヴォルテクスは後半34分にもモールで前進後、途中出場の金山修真がFW勝負を制してチーム4トライ目。
レッドレグリオンズは自陣脱出に手こずり、敵陣では相手ディフェンスのプレッシャーによりフェーズが伸びず、最終スコアは27-3。キューデンヴォルテクスが2勝目を掴んだ。
プレイヤー・オブ・ザ・マッチは2トライに加えて献身的なキックチャージなど、随所で効果的な仕事をしたキューデンヴォルテクスのHO岡が輝いた。
1勝4敗となったレッドレグリオンズの脊川監督は「やりたいことができなかった試合でした。エリアの取り方や攻撃を継続する部分など細かい部分を修正したい」
「後半になりハーフからのハイパントを使ったが、キックの精度、プレッシャーをかけられませんでした。アタックにしても九州電力さんのジャッカルの反応が早かった」と語った。
2勝3敗となったキューデンヴォルテクス。ヒルトンHCは「ラインアウトを遂行でき、そこから敵陣に入ることが出来たことがポイントでした。またディフェンスではペナルティを許さず、ディフェンスをやりきることができました」と勝因を分析した。
雨のビジターゲームを制したキューデンヴォルテクスの次戦は2月27日(日)。鹿児島県は桜島に近い白波スタジアムに、1勝4敗のクリタウォーターガッシュ昭島を迎える。
一方のレッドレグリオンズは同27日、上京して東京・江東区夢の島競技場にて、3勝2敗の清水建設江東ブルーシャークスと対戦する。
文:直江 光信
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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