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夢の島で大熱戦が展開された。
ホストの清水建設江東ブルーシャークスが、元トップリーグチームの宗像サニックスブルースを破った。ホスト初実戦での快挙だった。
ブルーシャークスは着実に実力をつけてきた。
1976年創設。トップリーグ経験こそないが、18年度にトップイーストから国内2部のトップチャレンジリーグに昇格。
19年度は同リーグ最下位だったものの翌年度は4強に入り、トップリーグ2021のプレーオフ1回戦に進出した。
そしてジャパンラグビーリーグワンではディビジョン3に参戦。プレシーズンマッチ7試合はすべてディビジョン上位のチームで、ディビジョン1では4チームと手合わせ。躍進への準備は入念だった。
そして開幕したリーグワンで、2勝1敗で迎えた2月12日(土)、ホストスタジアムである東京・江東区夢の島競技場に、同じく2勝1敗のブルースを迎えた。
ブルーシャークスのテーマは「ハードワーク」だった。元近鉄の猛タックラーである大隈隆明監督が明かした。
「サニックスさんは昨シーズンまでトップチーム。チャレンジャーとしてハードワークするように言い続けてきました」
多くの選手、スタッフがサラリーマンとして働きながらラグビーに打ち込むブルーシャークスでは「ハードワーク」が文化と言えるだろう。
今季新加入ながらゲーム主将を任されているCTBシアレ・ピウタウは、「一日中働いた後に練習していてきつい状況」と社員選手のハードワークに驚く。外国人選手は社員選手の負担を軽減するサポートを心掛けているという。
ブルーシャークスは2001年からクラブチーム制度を導入しており、他企業の“サラリーマン・ラガー”も参加。ブルース戦の先発メンバーではキヤノンの会社員である30歳、WTB森谷直貴もその一人だ。
そんなブルーシャークスだが、序盤に優勢だったのはビジターのブルースだ。
まず大阪体育大卒のCTB森林啓斗のジャッカルから敵陣に入ったブルースは、相手反則からペナルティゴール(PG)で前半5分に3点先制。最初のチャンスを得点に変えた。
さらに前半5分、SOコビー・ミルンの新ルール「50:22」が決まるなど効率的に敵陣へ入り、前半10分、17分に連続PG成功。
結果としてPG3本で9-0とリードしたが、逆を言えばトライを狙うチャレンジはしなかったということ。試合後にダミアン・カラウナHC(ヘッドコーチ)が理由を語った。
「今回はこうした目的(PGで着実に加点する戦略)をもってゲームをやりました。過去何試合がボールを回しましたが、思うようなラグビーができなかった。そこでこうしたゲームプランにしました」
この後、ブルースのゲームプランを崩したのはブルーシャークスのブレイクダウンでのハードワークだ。
前半18分、立正大卒のLOナッシュ・タイのジャッカルからPG成功。さらに同31分にもショットを成功させ、同34分にはSOオルビン・レジャーがロングキックを披露した直後、自身でジャッカルを決める活躍。お返しの3PGで同点(9-9)に追いついた。
ブレイクダウンの劣勢について、ブルースのカラウナHCは「キャリーが浅すぎてモメンタム(勢い)が生まれなかったことが原因」。しかしブルースは前半にさらに1PGを返し、3点リード(12-9)として勝負の後半へ向かった。
この日最初のトライが生まれたのは、後半2分。
先発の海外出身選手6人がそれぞれの役割を果たしている印象のブルーシャークスだが、後半2分、まずは敵陣ラインアウトからNO8マーフィー・タラマイが右隅で突破。
最後はNZ出身の25歳、CTBディック・ウィルソンがステップを駆使して中央に逆転トライ。ゴール成功でこの日初めてリード(16-12)を奪った。
サニックスは攻勢に出たいが、その後2度の敵陣ラインアウトで2連続のミス。2度目は元専修大学主将のハードワーカー、FL松土治樹がイーブンボールに飛び込みターンオーバー。
さらにブルーシャークスは後半10分、フロントローに一部交替があった直後にこの日初めてのスクラム・ターンオーバー。セットピースで優位に立ち始める。
さらにブルーシャークスは新発田農業高-山梨学院大卒のPR間藤郁也の鋭いタックルからパスミスを誘い、ターンオーバーから敵陣へ。相手のハイタックルでPG成功となり、4点だったリードを7点(19-12)に広げた。
ブルースはここで途中出場のプレーメイカー、田代宙士が躍動。
新ルール「50:22」で敵陣右ゴール前のチャンスを創出すると、後半22分にはロングパスからWTB八文字雅和のトライを演出。ゴールキックも決めてみせ、19-19の同点に追いついた。
しかしブルーシャークスはスクラムでのPK奪取から嫌なムードを取り払うと、後半27分、途中出場のジョンベン・コッツェの突破からSOオルビン・レジャーが走りきり、値千金の勝ち越しトライ。
ふたたび7点リードを奪ったブルーシャークスだが、終盤にブルースが意地の猛攻。
試合時間残り3分、自陣ゴール前でキックチャージを受けて捕球したブルースがあわやトライ――と思いきや、ここは慶應義塾大卒の白子雄太郎、この日プレイヤー・オブ・ザ・マッチを受賞したCTBウィルソンの素早い反応でトライセーブ。
80分を知らせるホーンが鳴ってもブルースの猛攻は続いたが、自陣ラックでジャッカル成功。前半から光ったブレイクダウンワークで試合を決め、26-19で今季3勝目を手にした。
2敗目を喫したブルースのカラウナHCは、試合後に落胆の面持ちだった。
「最後の最後まで互角の戦いでした。プラン通りにプレーできなかったラインアウトは改善の余地があります。苦しいエリアでターンオーバーされました。レフリーの笛にも対応しないといけません。全体として苦しい時間帯が多かったです」
ブルースは新加入選手が「21人」(カラウナHC)もおり、連携の向上はこれからだ。さらに通常のコロナ禍による制限に加え、今季は開幕直前に新型コロナ陽性者が出たことによる活動自粛期間もあった。ただカラウナHCは「負けたことの言い訳にはならない」という姿勢だ。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン3
【第4節ハイライト】清水建設江東ブルーシャークス vs. 宗像サニックスブルース
ブルースはトップチームが集中する関東・関西から離れた福岡県宗像市がホストタウンであり、格上との練習試合が組みづらい。さまざまな壁はあるが、それでも1部返り咲きを目指している。新生ブルースの新章は始まったばかりだ。
そんなブルースの次節は2月20日(日)、初勝利を挙げたクリタウォーターガッシュ昭島を、福岡・北九州市立本城陸上競技場に迎える。
一方、勝利したブルーシャークスの大隈監督は「アタックではとにかくハードワークをし続ける。スペースにボールを運ぶ。ディフェンスでは幅をとって前に出るディフェンスを仕掛けました。それを80分間続けることができました」と勝因を語った。
ブルーシャークスの次戦は同じく2月20日だ。豊田自動織機シャトルズ愛知と、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場で激突する。
好勝負が連発しているディビジョン3。何が起こるか分からない。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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