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松田 力也(埼玉ワイルドナイツ)
横浜キヤノンイーグルスの攻撃力はリーグ屈指だ。
第2節コベルコ神戸スティーラーズのクリーンブレイク数は14回。ディフェンス突破数は32回。高い攻撃力で8トライ55得点を奪い、開幕2連勝を遂げた。
しかし1月23日(日)、ビジターとして乗り込んだ埼玉・熊谷スポーツ文化公園(県営熊谷ラグビー場)で、武器の「矛」は封じられた。
ディフェンス突破数は約半数の17回。前節14回あったクリーンブレイク数に至っては3回に落ち込んだ。
昨季リーグ戦で最小失点(76失点)を誇った王者、“最強の盾”埼玉ワイルドナイツの面目躍如だった。
ジャパンラグビーリーグワンのカンファレンスA第3節、チーム内のコロナ陽性者により不戦敗が「2」となったワイルドナイツが、初のリーグ実戦に臨んだ。
昨年8月に埼玉・熊谷にチームが移転し、屋内練習場、4階建ての宿泊棟も隣接する「さくらオーバルフォート」も完成。。
チームは管轄保健所の指導の下、1月17日に活動を再開したばかりだったが、晴れがましいホスト初試合で、ワイルドナイツは堅守の文化、プライドを示した。
序盤のワイルドナイツは、バックス陣のキックが伸びなかったこともあって自陣脱出に手こずった。イーグルスはここぞとばかりに持ち前の運動量を活かし、NO8アマナキ・レレイ・マフィを中心に猛攻するが、青いジャージーはトライラインを明け渡さない。
マリカ・コロインベテ(埼玉ワイルドナイツ)
一方のワイルドナイツも前半10分から波状攻撃。12次攻撃目でイーグルスがインターセプトをするが、青いジャージーが混戦から日本代表SO松田力也、新加入のWTBマリカ・コロインベテと渡って左サイドから逆襲。
日本代表NO8ジャック・コーネルセンはタッチへ押し出されるが、ここでイーグルスは得意の体力勝負に引きずり込もうとFB小倉がクイック・スローイン。
しかしワイルドナイツはCTBハドレー・パークスがジャッカル成功。約2分20秒の長い攻防の末、前半14分、このペナルティでパナソニックがPG成功。同点(3-3)とした。
この日イーグルスは運動量をベースにラックを連取した。守備側のブレイクダウンでは、ゴール前で2度のトライセーブをされていたNO8アマナキがジャッカルを連発。ワイルドナイツのラック勝利は87.7%(イーグルスは93.9%)に落ち込んだ。
しかし先制トライはホストチーム、前半35分だった。
ワイルドナイツの2021年日本代表スコッド、FB野口竜司がスピードを活かして左隅で数的優位を作り出す。
ここからWTBコロインベテが左隅を突破し、タッチ寸前でピッチにリターンしたルーズボールを、ハードタックルで貢献したCTBディラン・ライリーが再獲得。そのまま独走し、この日両軍初トライを奪って10-3と勝ち越した。
前半終了間際、イーグルスはラックを連取して15フェーズの波状攻撃を仕掛けた。
しかしワイルドナイツは崩れない。CTBライリーのビッグタックルから攻守交代。蹴り返されたボールに反応して戻ったイーグルスCTB梶村祐介だが、WTBコロインベテなどワイルドナイツのチェイサーが迫っていた。
CTB梶村がやむなくボールを蹴り出して、3-10で前半が終了。体力勝負を得意とするイーグルスが根比べに負けた瞬間だった。
しかし2011年度まで下部リーグのトップ―ストAに所属し、これまでトップ4経験がないイーグルスが、2季目の沢木敬介監督の下で「強豪」に脱皮したことは疑う余地もないだろう。
王者との違いがあるとすれば、そのひとつは「選手層」と言えるかもしれない。
後半11分に投入されたワイルドナイツ5人のFWは、21年日本代表スコッド3人(PR坂手淳史、PR稲垣啓太、FL/NO8福井翔大)、スクラム猛者のPR平野翔平、そしてニュージーランド屈指のジャッカラーであるFLラクラン・ボーシェーだった。
ジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1
【第3節ハイライト】埼玉ワイルドナイツ vs. 横浜キヤノンイーグルス
するとその5分後の後半16分。
フォワード5人を入れ替えたスクラムから、ワイルドナイツのサインプレーが決まる。
敵陣左の自軍投入スクラムを「レディーゴー!」の掛け声で押し込み、オープン側の相手バックロー(7、8番)の出足を遅らせると、手薄になったスペースへWTBコロインベテが走り込んだ。
途中出場のボーシェー、そしてCTBパークスとつないで左中間に2トライ目。難易度の高いコンバージョンもSO松田が決めて、17-3とリードを広げた。
逆襲したいイーグルスだが、この日はFLコーバス・ファンダイクが前半早々(15分)、HO庭井祐輔が前半39分からHIA(脳震盪の疑い)で交代するなど不足の事態にも見舞われていた。
後半は勢いを取り戻せず、逆にワイルドナイツは1PGを加えていた後半35分、キックパスを受けたWTB竹山晃暉がタッチダウン。最後は途中出場のSH小山大輝が好タックル&ターンオーバーでボールを奪い、27-3でノーサイドを迎えた。
終わってみればイーグルスの得点は前半の1PGのみ。成功率64.3%(14回中9回成功)のラインアウトなどセットプレーの精度にも苦しんだ。
ワイルドナイツは本拠地初戦で、チームもファンも待望の初勝利。ノートライに押さえる快勝で1勝2敗とし、次戦の1月29日(土)、同じく1勝2敗のスティーラーズ戦で連勝を狙う。
今季初黒星を喫して2勝1敗となったイーグルスだが、昨季王者を相手に白熱した試合を展開した。3勝目をめざす第4節は1月30日(日)、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で、シャイニングアークス東京ベイ浦安を迎え撃つ。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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