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帝京大学、4年ぶり10度目の優勝
1月9日(日)、東京・国立競技場で今季の大学王者を決める、ラグビー全国大学選手権の決勝が行われた。4年ぶり10度目の優勝を狙う帝京大学(関東対抗戦1位)と、3年ぶり14度目の王者を目指す明治大学(関東対抗戦3位)の対戦となった。
今年は6月の練習試合と関東対抗戦で対戦。ともに帝京大学が32-28、14-7で接戦を制していた。ただ、ともにFW(フォワード)に強みを持ちつつ、総合力の高い両校だけに、決勝でも接戦が予想されていた。
帝京大学のこの試合のテーマは「覚悟を持つこと」で、準決勝の京都産業大学戦からの反省から岩出雅之監督から「タックルに尽きる試合をしよう」と選手たちは送りだされた。
一方の明治大学は、1年間やってきた自分たちのラグビーを貫こうということで、「MEIJI PRIDE」という今季のスローガンそのままを試合のテーマとした。
試合の主導権を握ったのは、スクラムと接点で優位に立った帝京大学だった。前半4分、相手ゴール前でラインアウトのチャンスを得ると、ボールが乱れたがそのボールに素早く反応した副キャプテンCTB(センター)押川敦治(4年)がボールを拾い上げて、そのまま左中間へ先制トライ(5-0)。
FW戦で優位に立った帝京大学
さらに帝京大学はファーストスクラムで反則を得た後、敵陣に入る。12分、ラインアウトを起点にボールを継続し、最後は右サイドでボールを受けたWTB(ウィング)白國亮大(4年)が内に切れ込みトライを挙げ、10点差にリードを広げた。
33分、再びスクラムで押し込み、反則を得てゴール前ラインアウトからチャンスを得た帝京大学は相手陣奥でボールを継続。最後はNO8(ナンバーエイト)奥井章仁(2年)が順目に走り込んで数的有利を作って、WTB白國(4年)が2つ目のトライを決めて15-0とした。
前半は無得点に終わった明治大学
明治大学も1本トライを返そうと攻め込むが、前半終了のホーンが鳴った後のロスタイム、WTB白國が明治大学のパスをインターセプトして、50mを走り切ってハットトリックとなるトライ。「相手が長くて速いパスを放ってくるということがわかっていたので、少し狙いながらディフェンスをしていましたが、そこにボールが入ってきたのでよかった」。
ゴールは決まらなかったが、4トライを挙げた帝京大学が20-0で前半を折り返した。
後半、「自分たちのラグビーをしよう」と明治大学も反撃。8分、相手陣奥のモールを押し込み、最後はHO(フッカー)田森海音(4年)がキャリーして右中間にトライ。ゴールも決まって7-20と追い上げる。
NO8奥井のトライ
ただ、帝京大学のディフェンスは集中しており、スクラムでも圧倒して、最後までペースを相手に渡すことはなかった。すると25分、帝京大学はラインアウトから連続攻撃を仕掛けて、トップスピードで入ってきた奥井が右中間にトライ。27-7と再び点差を20点差とした。
34分、明治大学も意地を見せてFL(フランカー)福田陸人(4年)がねじ込んでトライ。13点差に追い上げたが、結局、そのまま27-14でノーサイドを迎え、帝京大学が4大会ぶり10度目となる大学日本一に輝いた。
敗れた明治大学の神鳥裕之監督は、「完敗だったと思います。潔く負けを認めることも大事。ここまでチームを引っ張ってくれた4年生を誇りに思います。自分もこのチームを率いさせてもらって本当に感謝しかない。ここまでやってきた自信を持って、次のチームを作っていきたい」と話した。
明治大学SH飯沼主将
キャプテンSH(スクラムハーフ)飯沼蓮(4年)は「やり切ったが、相手が強くて完敗という感じです。ひたむきにシンプルなことをやり続けて、ここまでくることができました。新しい明治のひたむきさ、色を見せることができた。後輩たちにも引き継いでほしいですし、いいチームだったと思います」と振り返った。
岩出監督と細木キャプテン
帝京大学の岩出監督は「この1年間、また優勝できなかった期間の多くの選手たち、それからスタッフ、応援してくださった多くの方の思いを感じ、しっかり力を出し切ってくれと言うだけでした。スコア上は大きく開かなかったが、安定したゲーム運びをしてくれた。いいキャプテンに恵まれて選手たちが頑張った」と10度目の優勝を振り返った。
吠える帝京大学RP細木主将
また、嗚咽しながらインタビューに答えていたキャプテンPR(プロップ)細木康太郎(4年)は「すごくうれしい。これまで応援やサポートしてくれた人、一緒に戦ってきた部員のみんながいたから、ここまで来られた」。
試合の流れを決めたスクラムに関しては「僕たちがプライドを持っているスクラムで、試合を通して圧倒できたことは、これから僕の人生においてもこのチームの未来に大きくつながる」と胸を張った。
会見が終了した後、岩出監督が今季限りでの勇退を発表した。「今日の試合で、監督として最後にさせてもらおうと思っています。いろいろ考えを持って大学とも相談して、勝っても負けても今日で終わりにしようと思っていた」。
「学生たちの頑張りで、運良く勝たせてもらった。26年間、監督させてもらったが、帝京大学の監督はこの試合で引退させてもらう予定です。キャプテンには2、3日前に話をさせてもらった。学生たちのマインドを下げたくなかったので黙っていたが、一緒に卒業していく人間なので(キャプテンには話した)」。
「いろいろな経験と充実した時間いただいた。後任は決めていますので、次の監督がしっかり頑張ってくれると思います。一番、チームが充実して、一番いい時に渡せたと個人的に思っています」と話した。
今季、公式戦無敗で駆け抜けた
春から公式戦では無敗で走り続けた「深紅」の帝京大学が、決勝戦でも積み上げてきたスクラム、接点、ディフェンスで相手を上回り10度目の栄冠に輝き、今季の大学シーズンは幕を閉じた。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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