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ノーサイド。天を仰ぐ廣田瞬(天理・4)共同主将
2022年を迎え、大学選手権は1月2日に準決勝が行われた。京都産業大学にとって8度目のベスト4。準決勝の壁は厚く、決勝は経験したことがない。歴史を変えるべく臨んだ京産大は帝京大学を相手に激しいコンタクトで接戦を演じた。
キックオフすると「前半から京産らしさを前面に出して戦えた」と平野叶翔(西陵・4)共同主将が語るように帝京相手にコンタクトで圧力をかける。アタックでは1人1人がゲインラインを切る強さがあり、ディフェンスでも早い出足と低いタックルを見せた。
しかし、帝京大の決定力は凄まじく、ゴール前まで運ばれるとトライを許してしまった。一方、京産大はPG(ペナルティゴール)を積み上げ、前半20分で6-10と離されなかった。
前半30分、接点で前に出る京産大はハーフウェイラインからアタック。平野共同主将などの突破もあり、ゴール前まで攻め込んだ。敵陣深くでスクラムを組むとジェイミー・ヴァカラヒ(日体大荏原・4)がボールを持つ。一旦タックルされるがボールを離して、もう一度持ち上げると突破し、中央へ逆転トライを決めた。
そこから流れに乗ったのか、ディフェンスでもノリに乗る。ゴール前で帝京大にモールを組まれるがストップ、展開されるとFL(フランカー)三木皓正(京都成章・2)のタックルでターンオーバーし、得点を許さなかった。
また、ハーフウェイライン付近でスクラムペナルティを獲得すると、約40mのロングキックを竹下拓己(東福岡・3)が決めて16-10。ディフェンスから流れを掴み、キックで得点と今季の戦いが帝京大にも通じることを証明した。
前半40分、ラストワンプレーを告げるホーンが鳴る中、敵陣でラインアウトのチャンス。伝統のモールで押し込むとサイドにアタック。最後は平野共同主将がねじ込みトライ。竹下がコンバージョンを決め、ここでホイッスル。帝京相手に真っ向から勝負を仕掛け、前に出続けた京産大が23-10とリードして前半を折り返した。
優勝候補であり、有利と見られていた帝京大がリードされる展開だったが、やはり対抗戦王者は後半修正してきた。ディフェンスで前に出ると強烈なタックル、ブレイクダウンでのジャッカルなどプレッシャーが増していた。ペナルティが増える京産大に対して帝京大は後半5分にPGを決めると、8分にはモールでトライ。23-20と差を縮めた。
平野叶翔共同主将、笑顔が印象的だがボールを持つと一変する
追加点が欲しい京産大は17分、中央でボールをもらった船曳涼太(神戸科学技術・2)が帝京の屈強なFW(フォワード)の中を突破、ゴール前まで迫ると平野共同主将がボールを持ち出しトライ。竹下が6本目のコンバージョンを決め、30-20と帝京大を突き放した。
帝京大のプレッシャーもありながら得点を重ねる京産大だったが20分、風向きが変わる。帝京大はケガから復帰した主将のPR(プロップ)細木康太郎(桐蔭学園・4)を投入。スクラムの要であり、精神的支柱がピッチに戻った。すると直後のスクラムで押し込みトライ、30-27と京産大を射程圏内に捕らえた。
残り10分、3点リードの京産大はディフェンスで粘るが押し込まれる。31分、スクラムで圧倒されるとペナルティを献上、30-30の同点に追いつかれた。トライ数で上回られている京産大、同点では敗退となってしまう。なんとか得点の欲しい京産大は交代選手を一気に投入、勝ち越しを狙う。
しかし、34分に反則の繰り返しとして京産大にシンビン、1人を欠いて残り5分を戦うことになった。そして37分、帝京がゴール前でボールを持つと外に展開しダメ押しのトライ。キックも決まり30-37と勝ち越しを許した。
初の新国立での大学選手権、躍進の京産大は帝京大に一歩届かず敗退となった。「80分間学生たちはひたむきに前に出続け、帝京大学に向かってくれたということが非常に見ていて頼もしく思いました」と廣瀬佳司監督、就任1年目にして15シーズンぶりのベスト4へ導いたが、歴史を塗り替えるには至らなかった。
終了後、やり切ったような笑顔で帝京大の細木と肩を組んだ平野共同主将は「後半に修正してきた帝京さんに対して、僕らの力が及ばなかった」と語る。「進化」を掲げた今季、伝統のセットプレーに加えディフェンスやキックなど確かな進歩を感じられるシーズンだった。
敗れはしたが京産魂を見せつけ肉薄した準決勝、ひたむきに前に進み続け身体を張る京産大の姿に心動かされた人は多いだろう。引き継がれる京産イズム、新たな京産大はまだ歩み始めたばかりだ。
文/写真:出口敬介(京産大アスレチック)
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